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寄席帰りの色節

「大きなうちわを担いでいる人がたくさんいるけど、あれは何?」

新宿三丁目の末廣亭で落語を聴いた帰り道。西新宿へと歩く道すがら、街行く人を眺めて不思議そうに君は言う。

「あぁ。あれはうちわじゃくて“熊手”だよ。縁起物なんだ。」

偶然にも今夜は、花園神社の“酉の市”のようだ。

華やかなネオンで彩られている靖国通り沿いに、昔懐かしい祭りの露店が列を成して、一層に夜の街を活気づける。

五穀豊穣・商売繁盛を祈願する、黄金に輝く大小の熊手が所狭しと東京の夜空を埋めている。

夜だか昼だかわからないほどの目映さと、それに乗じた人々の賑わいは、夢のなかにいるかのような、あまりにも非日常的な色節を醸し出す。

そう。この夜は、眠らない街の殿や姫たちにとって、ささやかな娯楽を享受できる束の間のひとときでもある。

そんなわずかな息抜きさえも知らないままにこの街の夜を走り抜いた君と出会えたのも、やっぱりいつかの11月のことだったね。


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