楽園王・谷崎潤一郎『白昼鬼語』公演に寄せて。
楽園王の公演が近づいていて、ご予約が少ないので、ぜひ色んな人が観に来たら良いのに、と思い、何か書こうと思います。でもlineやFacebookだけでですかね。個人情報? 昨年、谷崎潤一郎『お国と五平』を、リーディングという形ですが初演メンバーにて上演出来て大きな意義を感じました。久堂さん、塩山さん、三品ク君。ああ、こういうことが出来るんだな、と。10年以上前の、それぞれ演劇の戦線を離れて時間の経つ3人の手で、その後の長堀演出の、楽園王演劇の評価を変えることになった作品を再演出来て、カンパニーが長く続いているとこういう小さな奇跡みたいなことが起きるのだな、と思ったんです。その時に、舞台復帰し、今回も主演を務める久堂秀明君は、1992年から楽園王に出演してくれている、もっとも古い時代からの仲間です。数年前に音信不通になり、その後、彼と同じ職場だった人からの情報で、病院に行った、ICUに運ばれた、との話が耳に入り、それが最後で、1年以上は連絡が取れませんでした。その間に、すでに予定していた、彼が主役だった代表作のイヨネスコ『授業』を新しい仲間を多くして再演したりして、まあ、久堂君の復帰や再会は半分諦めてもいたくらいなのです。聞いた話から、脳の病気だとは類推出来たので。そして、しかし、しばらくして、どうも職場には復帰したらしい、と聞き、おっ、っと思ったのです。でも、まだすぐには、体調が万全ではなさそう。観劇に来てもらって最初に会った時には、ガリガリに瘦せ、片手片足や喋りにも後遺症が残り、すっかりお爺ちゃん化していて。でも、会うたびに、肉がつき、後遺症が治ることがなくっても、付き合い方を得た感じで、精神的にも元気を取り戻した印象で、僕の方では勝手に、舞台に立たせたいな、って思いが湧き上がってきたのです。そして、昨年の『お国と五平』公演に繋がった、という訳です。でも、まだ昨年は、お試しって意味合いもある、再演、リーディング表現で、次は新作だな、って計画は、すぐに思い浮かびました。どうしても障害はありますが、工夫次第で解決できそうだし、何より、障害を単なる個性と読み替える時に、そこに彼が存在する面白さや格好良さが際立つのを感じてもいたのでした。僕の長い間の仲間たちは、多くが久堂さん、クドヒデ、松の君を知っています。共演者も多い。楽園王に出て32年目だし、その前から一緒にやってきた仲間なので、しかも、多くで中心的な役を演じる役者だったので、なんか、皆知ってるし、観て欲しいんですよね、今の彼を、一種の力強さを。作品は、そんな事もあり、昨年と同じ谷崎潤一郎作品。運命的に選んだ小説。なんか、この期に及んで、難しい小説の舞台化に挑んじゃったみたいで、出演者みんな大変そうですが、今急ピッチで稽古中です。演劇というのは、他者を描く、という目的があります。登場人物の他者性、俳優の他者性、演出の他者性、が重なって、わっ、観たことない話、会ったことのない人物、に出会う場を作り上げることが、演劇の創作なんです。なんか、久堂君の身体が獲得した他者性が、そういった演劇の初歩に立ち返らせてくれたって考えていて、今、長堀演出の表現、楽園王演劇の表現、ってことを強く意識した舞台を目指しています。まあ、話が長くなりましたが、変なことやっていて、面白いよ。どうぞよろしくお願いいたします。
出演は、久堂秀明、大畑麻衣子、小林なほこ、イトウエリ、政井卓実 です。
楽園王『白昼鬼語』公演は2月1日から。https://rakuen0h.com/hakuchu.html
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