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山姥まだスなねぇよ

おらがスんだら(死んだら)よぅ
生けてある花みんな持ってけよ

村に帰って来た山姥
やっぱりここが大好きで
みるみるまなこに生気が戻って
おらいつ死んでもおかしくねぇって
人形よこしたり
花よこしたり

スなねぇよ(死なないよ)
こんなに準備するひとは
スなねぇ

それでもなにかっつうと
おらが死んだらって

そんで話もなげぇ

弁当持ってこられなかった
貧しい子どもらに配給されたベント箱さ
白飯いっそ(しろめしだけ)入ってるんだもの
おらそっつの方がうらやましくてなぁ
弁当組はひえだの大根だのって
白飯なんてほとんど入ってねぇんだよ
でもそいつら奉公出されたり売られちまったり
一緒に卒業なんてできなかったから
弁当組の方がなんぼかよかったんだべな

そんなたぐいのなげぇ話
同じ話を何十回聞かされて
んでも山姥のまなこさ
生気あふれてきたんだから
いいかんべ

まだスなねぇから
このサボテンみてろ
って今日は
真っ赤な花つけたサボテンの鉢
山姥のローズメェ(庭先)に置いてきた