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姥捨て山

車いすはいらない
歩行器や杖もいらない
這う
這っていれば草取りもできる
転倒することはない
鼻歌が聞こえてくる
農協や郵便局で見かけると
人々はギョッとする
まるで動物みたいだから
でも自由で安全で痛みもない

古い日本家屋の庭で野菜を作って
みんなでワイワイ言いながら
よぼよぼ助け合って
救急車は呼ばないで
みんなそこで一生を全うする
うばすて山をつくりたいな
老人施設で
生気を失って孤独に終わってゆく
山姥たちを救うため

生きるために生きたい
予防じゃなくて保険じゃなくて
貯蓄じゃなくて
いま動いている細胞が要求している
エネルギーのままに
山姥は命を全うしたいのだ