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チョキ男(2289文字)

その男はチョキで待っていた。

烏森方面改札の柱に凭れかかりながら、軍帽を目深に被り、酷く汚れた包帯で顔を隠し、丈の長すぎるカーキ色の外套を羽織っている。その袖口からにゅっと「チョキ」を出し続けていた。通勤ラッシュの人波に流されることなく、ただ杭のように、ひたすら。

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