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「リズムについて」~リック・マロッタ氏のドラムクリニック~


今回はリズムの事を書いてみたいと思います。
あくまで、僕が聞いたり、経験して感じた事柄ですので音楽理論的には違っている可能性大ですが、それはご勘弁ください。
昔、よく音楽仲間が集まっては「リズムについて」話をしました。
呑みながら演劇論を交わすようなもので、まじめな勉強会とは違います。
そんな時、やはり多く出てきたのは「円でリズムをとる」ことでした。
上記の動画は楽譜(音符)を円に捉えて、ひとつのリズム、スコア譜のようになっていき面白いです。

ただ、僕達が話していたのはリズムのとり方(タイム感)なので、この動画とは違いますが、円で考えるのは同じですね。
個人的に僕が心地いいと思うのは針はゆっくり円を廻りながら、2拍4拍でちょっと早く針がうごく感じでスネアを叩くというイメージでした。
音楽ジャンルによっても違うと思いますが…
あくまで僕が気持ちがいいと感じるスネアの位置です。

それを裏付けるようなクリニックがありました。
1986年、合歓の郷で行われた「リック・マロッタ のドラムクリニック」です。
これは、ドラムとPAのクリニックとわかれていて、それぞれがクリニックをうけ、最終日に合同でうけるというものでした。
PAのクリニックをうけた友人は依然僕がFBに書いた投稿にコメントをくれました。
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これは… PAではなくて…レコーディング・セミナーと一緒だったんです… 私も支部録音スタジオのエンジニアとして参加しました。同じ音源を決められた時間内でMIX DOWNして… 2MIX音源をグレッグ・ラダニー氏に試聴してもらい… 御意見を伺う… そんな内容でしたね。最後のDr's Over Dubbing は一緒に受講してました… 一線級の人達の仕事には…本当に刺激されましたね… それまではデッドに録音するのが流行だったDrを…私もこの研修後、アンビエンスマイクを使用して…エアー感を出すようになりました。しかし… 同時に自分の未熟さも痛感して…かなり凹んだセミナーでした(^^ゞ
***
う~~ん、なかなかシビアですね。
僕は「合歓の郷」に行けて、昔の友達とも逢えるし…とお気楽的でいい加減な気持ちで参加してました。

とはいえ、講師はリック・マロッタ。ラス・カンケルと並び超有名なドラマーなのでとても楽しみでした。
そして、レコーディング・セミナーの講師はグレッグ・ラダニー氏。
僕は名前も知らず、「ToTo」のエンジニアという認識でした。
今、思うとすごい企画です。さすがはヤマハ様です。

で、その時、オーラバンバンのリック様は「ジャストの位置から少し後ろにずらしてスネアを叩く。逆にバスドラは少し前」ということをボードに書きながら説明してくれました。
「僕の友達はみんなそう、ラリーカールトンとかね」と。
おおっ!それでは僕と同じではないかっ!と有頂天になりましたが、もっと深いところでの話に違いありません。

「ジャストとは」をちょっと書きます。

当時、僕がよくしていたのは 写真にある「Dr Beet」というメトロノームを使っての練習でした。


右のダイヤルでテンポが変ります。
左にかいてある音符にあわせたテンポで音が鳴ります。例えば左端の4部音符で、ダイヤルを100に合わせるとテンポ100の4分音符が鳴るのです。
勿論音を出さないようにもできます。真ん中の赤い丸いやつが点灯するのでそれを見てカウントとったりするのです。いろいろな使い方がありますが割愛します。
で、まずこれ鳴る音と何かを同時に叩くと無音状態になるのです。ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、と聞こえてたのが何も聞こえなくなります。
これができた時は嬉しかったです。
この無音の時がジャスト、テンポとぴったりってことですね。たぶん。
これにあわせてドラムを叩いたり、足やパットを叩いてました。

次にこのDr Beatを使って教えてもらったのは、ピッ、ピッ、ピッ、ピッと鳴っているのをアタマとして、ウラをとることでした。ウラを「と」とすると1と2と3と4と、という感じです。
「と」のところを叩きます。
で、次に「と」をアタマにしてドラムを叩き始めるのです。
そうするとピッ、ピッ、ピッがウラとなって聞こえるわけですが、これが
ウラを感じながら叩くということになります。なるそうです。

「それがどうしたん?」と言われたらうまく説明できませんが、「ウラを感じるのは重要な事」ですし「これをしていたらはしれない(早くならない)」などと教えてもらいました。

ある先輩は、 「首をにわとりみたいに前後に動かしてリズムをとる」
もうひとつは「首を左右に(肩のほうに)動かしてとってみろ」と。そうすると肩に動かしたときは戻るのに「にわとりさん」よりちょっと時間がかかるのです。
この時間が「タメ」というものだと教えて頂きました。
そのタメがあるほうを「横ノリ」、ない方を「縦ノリ」とか・・・
やっぱり音楽のジャンルにもよるのでしょうが、この「ノリ」も重要になりますね。
話がそれました…

クリニックでリックマロッタさんが話したことも音楽のジャンルによると思います。
ただ、僕にとっては、今まで意識していたことが世界のトップドラマーによって「それでいいんだよ」と認められたようで嬉しかったのです。

他、「バスドラはヘッドを突き破るようにジャストの前で踏み込め」なんてのもありましたが、バスドラの踏み込み方はいろいろあります。
それこそ、かかとをつけたままの方もいますし、バスドラで連打を打つときはかかとを 上げて痙攣するようにうつ人もいますし、S・ガッドのように足の1回の上げ下げで連打する人もいます。
言い切るリックさんには感心しました(笑)
他はパラディドルとアクセント、その組み合わせ等のクリニックでした。

そして、最終日、いよいよPA班との合同クリニック。
ここで、行われたことで感じた事が、それからの自分のドラムの大きな指針となっていくのです。
おおげさですが・・・・(笑)

合歓の郷のスタジオにクリニック受講者が全員集まりました。
まずそこで・・・

「POPCON」のグランプリ(?)受賞曲をレコーディングした音源を聞きまし
た。
曲名は忘れましたが、ミュージシャンもそうそうたるメンバーだったのは
覚えています。
8beatのさわやかなPOPSでヒットの気配がありました。
それはそうです。グランプリ曲なのですから(たぶん)
勿論、演奏も素晴らしいものでした。
「さすがプロは上手だなー」と感心したのを覚えています。

そして、次の説明にびっくり仰天!
スタジオ内がざわつきました。
「では、このドラムをリックマロッタ氏に叩いて頂き、それをグレッグ・ラダニー氏に録音して頂きます」
いわゆるドラムの差し替えです。
よく、〇〇氏がサザンの曲のドラムを差し替えたとか、「あんたのバラード」のドラムはふとがね金太さんじゃないとか噂は聞きましたが・・・

しかも一緒に他のメンバーと演奏するのではなく、他のパートの
演奏を聴きながらドラムだけ演奏するという形です。
これはスゴイ! 正直、前の2日間のクリニックは知識としては持っていたし
物足りないなぁと思ってましたが最後にやってくれました!

まず、ドラムの音作りから。これはドラマーは勿論、レコーディングクリニック受講者はたまらなかったでしょう。
リックマロッタさんの目も心なし鋭くなった感がありました。
そして、いよいよ録音が始まりました。
何度も録り直すことはなかったと思います。
で、出来上がったものを聞いてみてびっくり仰天(また出ましたね)
もうスケールが違うというか、大らかというか、青空が広がっていくような
そんなサウンドになっていたのです。
先の音源もすごく良かったんです。でも違うんです。
それとドラム以外のフェーダーを下げてドラムだけになっても他のパートが聴こえてくるようでした。

これが「楽器も唄う」ということなんだと感じました。
「日本人は緻密すぎる。もっと大らかな気持ちで演奏した方がいい」みたいなことを最後に話されてクリニックは終了しました。

それから僕はスネアの位置を異常に意識するようになりました。
スタジオに入り、クリックやテープ音源をかけながら叩いたりしました。
気持ちよくできたと思って録音したのを聞くともたってたり・・・(笑)
録音するということは大切ですね。
そして僕はクリックなしで、ちょっとでもあの感じに近づきたいと思って今もドラムを叩いています。