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文七元結、ふたたび。 一朝会 人形町スペシャル

「一朝懸命にやります」。

仲入りを挟んで2席聴かせてくれる一朝師匠の独演会。
一席目は「味噌蔵」。締まり屋の主人が出掛けている隙に
酒宴を開く番頭と店子。主人が思いがけず早く帰ってきて、
ひと騒動が持ち起こる。
今の世でも、仲間内の飲み代を「ドガチャカ」して会社の経費に
してしまう人も結構いるんじゃないかな。
番頭の気持がよくわかります。

仲入り後の二席目は「時期は少し早いのですが」と前置きをして始まった。
「本所の達磨横丁に左官の長兵衛という・・・」。
おっ!文七元結。
つい3日前、弟子の一之輔の文七元結を鈴本演芸場で聴いたばかり。
期せずして師弟同一のネタを間を置かずに聴くことになった。

三遊亭圓朝作と言われているが、中国で伝わった話が元になっているという説もある。事実はさておき、人情噺を代表する噺であることは間違いなく、笑いの要素も多い。落語ならではのエンターテイメントがあふれていて、大好きな噺のひとつだ。

志ん朝がかつてのこぶ平(現正蔵)に、佐野槌の女将さんの演じ方がこの噺の肝だ、と話したそうだが、登場人物も多く演者の力量が試される大ネタ。

この噺を生で、一朝さんから聴くことのできる幸せ。「幸せ」なんて大げさな言い方だけど、ふだんあまり考えたり感じたりしない「人情」とか「人の縁」の大切さに気付かさせてくれるのは貴重な体験だ。

落語なんて毒にも薬にもならないもの、落語家はあってもなくてもいい商売ではなく、なくてもなくてもいい商売、なんて自虐的に言ってるけど、江戸時代から令和の今日まで残っているんだから、それはそれで意味のあるものなんだ。

柄にもなくこんなことを考えた落語会だった。

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