国民歌謡と多様性の相反
阿久悠さんの『作詞入門』とフィリップ・コトラーの「コトラーのマーケティング5.0」は関連性が低そうに見えますが、2冊続けて読んだことで思ったことがあります。
阿久悠さんとマーケティング
阿久悠さんは市場を読むことで数多くのヒット曲を生みましたが、その多くは1980年代までに集中しています。
1980年代までと1990年代以降でなぜ変化が起きたのか。
マーケティング5.0を読むと、その要因に思い当たることがありました。
阿久悠さんは作詞家になる前は広告代理店で放送作家をされていました。広告代理店はマーケティング要素が大きい分野です。
作詞入門を読むと、阿久悠さんは作詞するにあたって、世の中に求められていそうなことを意識していたことがわかります。まさにマーケティングの分野ですね。
マーケティング5.0の二極化と国民歌謡
『コトラーのマーケティング5.0』では、自立心の高い世代の登場と世代により価値観の差異、思想やライフスタイルなどの二極化について述べています。
世の中が多様化する現代では、自社のターゲットを見極め、ターゲットに合わせて対応する重要性を説いています。
一方で、阿久悠さんが目指したのは国民歌謡。老若男女で共有できる歌でした。
市場を読む力に長けた阿久悠さんが多様化に気付いていなかったはずはありません。ウォークマンの登場に対して、音楽が点滴(一個人のみに向けられるもの)になったと表現するくらいです。
それでも国民歌謡の夢を抱き続けていたことやその背景が『作詞入門』を読んで少しだけわかった気がします。
作詞においてビジネス性を重視していた阿久悠さんの人間味あふれる一面が垣間見えて、ますます好きになりました。
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