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人形浄瑠璃文楽

通訳ガイドのぶんちょうです。古典芸能の「文楽」初めてさん向けに書いていきます。文楽と人形浄瑠璃は歌舞伎よりもさらに馴染みがないと思っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。私もガイドになる前はそうでした。

歌舞伎の記事はこちらにあります。

さて、文楽の話に戻ります。文楽と人形浄瑠璃は違うもの?と思うかもしれませんが、同じものです。浄瑠璃とは、簡単に言うと音楽のことです。つまり人形浄瑠璃は「人形と音楽」ということになります。

文楽というのは元々劇場の名前で、人形浄瑠璃の代名詞になったことから今は文楽と言う名が定着しました。BUNRAKUとして歌舞伎同様に無形文化遺産に登録されている誇るべき日本の伝統芸能です。

文楽は三業と言って3つ部分で構成されています。人形・語り・三味線です。それについて説明していきます。

人形 puppets

人形の大きさは男140cm位、女120cm位で首(かしら)胴、手、脚に分かれています。重さは3kgから10kg位まであります。手足は胴とひもでつながっているのですが、このひもは鯨のひげが一番いいのだそうです。

首は300個以上の種類があり、役柄で使い分けます。芝居でも公演が決まると役者さんの配役が決まるように、文楽では人形の配役が決められます。そして役に合わせてお化粧をし、髪もプロの床山さんによって結われます。髪型も、なんと120種類もあるそうです。

人形遣い puppeteers

人形は3人で操られます。それぞれの担当箇所です。

主遣い   右手と首
左遣い   左手
足遣い   脚

3人の息をぴったり合わせて一つの人形に命を吹き込んでいくのですね。

まずは足遣いから入り、「足10年、左10年」という言葉があり、全部で30年をかけて芸を習得するそうです。

主遣いさんは人形の着物の中から首を左手で握り、手の操作で首を上下させます。

左遣いさんは「差し金」と呼ばれる棒を使います。「誰の差し金だ?」と言いますが、こっそりと見えないところで操るということから来ているそうです。

足遣いさんは「足金」と言う人形のかかと近くについているL字型の金具を握ります。面白いことに女の人形には脚がないのです。着物の裾に拳を当てて押し出すと、ちょうど着物のなかの膝のように見えて、歩いている様子を表現します。

文楽の楽屋には、下駄がずらーっと並んでいます。この下駄は主遣いさんが履くものです。というのも、主遣いさんと足遣いさんが同じ高さで人形を操るとなると、人形の下のほうを担当の足遣いさんはどうしても体勢の苦しい中腰になってしまいます。

そのために、主遣いさんは下駄を履いて、足遣いさんが楽に操れるようにしているわけです。演目によって高さの違う下駄を選びます。なかには、40cmの高さの下駄もあるそうです。

3人のうち主遣いさんだけは顔出しをしていて、残りのふたりは黒衣で顔を隠しています。人形が主役なのに、なぜ一人だけ人間が顔を出しているのかと言う質問があるそうです。これは江戸時代、人形の演技があまりに素晴らしく、一体どんな人が操っているのか顔が見たいというファンの声に応えたのが始まりのようです。

舞台の道具 stage props

背景の景色や屋敷などの大道具も、楽器や持ち物などの小道具も本物そっくりに、でも、人形の大きさに合わせて本物の2/3位の大きさに作られています。小さいだけでなく、大変美しく作られているのでそこにも注目です。

太夫 narrator

太夫というのは、語りです。情景や背景説明も太夫がします。太夫さんは着物の下、丹田のあたりに腹帯を何重にも巻いているそうです。また「落とし」と言う小豆の入った、小さな折りたたみ傘くらいの袋を着物の下に入れて大きな声を出す時に握るそうです。

太夫の前には見台という譜面のようなものが置いてありますが、特殊な字体なので素人には全く読めません。

三味線 musical instrument

文楽では太棹三味線を使います。太棹の重量感のある音が人間の感情を表現します。楽譜などはなく、物語全てを頭に入れて登場人物の心情を弾き方だけで表現します。「一音で悲しみを表す」と言われます。

演目 STORY

歌舞伎同様に時代物という貴族や武士を扱った歴史ものと、江戸時代の事件や恋愛を扱った世話物があります。これらの演目は仮名手本忠臣蔵や曾根崎心中など歌舞伎と同じものが多いのです。

この理由は、歌舞伎が江戸時代に一時、人気が下火になった時、当時人気だった人形浄瑠璃の演目と同じものを取り入れて、歌舞伎が人気を取り戻したと言う経緯があるためです。さしずめ実写版とアニメと言ったところでしょうか。

日本伝統文化のひとつ、文楽の紹介でした。こんなプチ知識を入れてから実際の文楽を見に行くと、とても楽しめると思います。





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