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見つけられなかった彼女へ

ふいに母親からきた連絡。同級生の名前を聞かれた。
彼女の名前を答えると「亡くなったみたいよ」とひとことだけ返ってきた。

私はまだ20で、大学生で。
あまりにも唐突な訃報にこころがしんとした。

母は医療法人で働いていて、たまたま日報に出てたのを見た。病院に運ばれてきた時はすでに心肺停止だったらしいと。

慌てて訃報を調べた。なにも出てこなかった。
どうして、どのように死んでしまったのかなんにも分からなかった。


彼女の事を思い出そうとした。

小中の同級生。転校生。大人しい子。メガネを掛けてて、くせ毛。たしか合唱部。クラスが同じだった事もあった。気がする。
それだけ。

高校はどこに行ってたのか。今なにをしていたのか。どんな話をしていたのか。どんな事が好きだったのか。中学校で仲良かった子さえも。


なにも、なんにも出てこなかった。

ただ、ただしんとしたこころのまま。


死を知ってから、存在さえ忘れてしまっていた彼女に思いを馳せる。悼んでるように振る舞う。そんな私を、彼女はどう感じるのだろう。


中学校の学年グループは今も動かないまま。ネットの海にも現実世界にも彼女を見つけられなかった。

私は彼女の事を知らなかった。

それでも彼女は確実に居た。どこかで生きて、そして死んでしまった。

瞬間だったけれど、言葉足らずだけれど私はそれを知っていた。

それだけは、ずっと覚えている。

#エッセイ #コラム #生と死
#ぽつらぽつら