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『ソラナム~オルピと紫夢の召喚士~』第五話

1.

●アゴナス試合場周辺 昼
  
マリゴアは首の向きを変えジャールを睨むが、かまわずジャールも向かっていく。そんな中オルピの頭の中で声が響く。
 
    *「オルピ様」
 
 オルピ「、、、誰!?」
 
 
*「オルピ様、、、私はあなたです。」
 
  オルピ「、、ヘーゼル、、、ヘーゼルなの?」
 
 オルピは聞き覚えのある声に問いかける。
 
  オルピ「ヘーゼル、、僕は本当に何の力もなく友達が死ぬかもしれないのに見てることしができない。僕には“戦う”ことがわからないし出来ないんだ」
  
     *  「オルピ様、、、“戦う”ことは誰かを傷つけることだけではありません。」
  
   オルピ「、、、?」
  
     *  「大切な友達の盾となる事、愛する人を守ること、迫りくる敵に立ち向かうこと、全て“戦う”ことなのです。」
  
  オルピ「たたか、、、う」
  
    *「そして今あなたに必要な“戦い”は、勇気を出して“今と向き合う”ことです!」
   
  オルピ「、、、今と向き合う?」
     
   *「はい、そのために私たちはあなたと共にいる。あなたが勇気を持って挑む“戦い”には、必ず私たちがあなたの力になります。」
   
   オルピ「、、、、」
 
 *「オルピ様、、選ばれし我が主、、 今こそ“闘う”のです!」

   オルピ「、、、、ぅおおおおおお!」
 
オルピは何かを吹っ切ったように大きな声をあげ、続けて召喚詞を唱える。
 
 オルピ「グノーテ・サウト・カリル!!キュルム・ディクトス!ヘーゼル!!僕に力を!!」
 
オルピが召喚詞を唱えると同時に、ヘーゼルが現れる。ヘーゼルの身体は数回見たことがある姿のなかで一番まばゆい光を放っている。
 
 ヘーゼル「オルピ様、私はあなたの勇気と共に」
 
ヘーゼルと同化し、光を纏う様子は今まで誰も見たことの無い姿をしている。オルピはもの凄いスピードで、ジャールを追い抜き、大きな口を開けジャールに襲い掛かるマリゴアを止める。そしてその勢いでマリゴアを後ろに押し戻し弱るジェダとレイスからも遠ざける。
 
 オルピ「ジャール!ジェダとレイスを頼む!!」
 
    ジャール「お、、、お前、その姿、、、」
 
    オルピ「ここは僕が!!」
 
 マリゴアが止められるという予想外の動きに再度、ボダラーンが肩口から出てくる。
 
 ボダラーン「ぬぅ、、なんだこのガキは、、さっきまでメソメソしてたひ弱なやつじゃないか」
 
 オルピ「お前たち、絶対に許さない!」
 
 ボダラーン「許さないだと?笑わせるなクソガキが!マリゴア!!灰にしてやれ!」
 
 ボダラーンは怒りに満ちた表情で、マリゴアに指示する。同時にマリゴアも大きく息を吸い込み、オルピに向けて攻撃の準備をする。
 
 オルピ「ヘーゼル、僕は君を信じている!  君も僕を信じてくれ!」
 
 ヘーゼル「オルピ様、もちろんです。あなたの“勇気”に限りはありません!今こそその力を発揮する時です!」
 
ボダラーン「ブツブツとうるさい!消え去れ!」
 
 

2.

⚫同 昼 

ボダラーンの言葉と同時に、マリゴアから恐ろしい量の炎がオルピに向けて放たれる。オルピは真正面で炎を見据えている。
 
  オルピ「お母さん、お父さん、、、みんな、僕に力を貸してください!うぉおおお!“ミラーオブブレイブリー”(勇気の鏡)」
  
 ボダラーン「ふはははは!!跡形もなく燃え尽きるがいい!」
 
オルピの前に、大きな金色に輝く鏡が出現し、マリゴアの炎を吸い込んでいく。
 
 ボダラーン「な、、、、なにぃ、、!?」
 
ボダラーンは予想外の事態にうろたえる。マリゴアも、炎が出し尽くした様子。オルピはそのまま、鏡からマリゴアに向けて跳ね返していく。
 
 オルピ「いけぇーーーー!!」
 
オルピが跳ね返すと同時に赤黒かった炎は青白く燃える炎に形を変え、マリゴアとボダラーンのほうに向かっていく。
     
   ボダラーン「ばかな!!こんなことがあってたまるか!」
 
ボダラーンは回避しようとするが、間に合わずマリゴアと共に炎に包まれる。
   
    ボダラーン「うぉぉぉぉぉぉ」
 
 マリゴア「グギャァ――――――」
 
マリゴアの周囲は青白い炎につつまれ、のたうちまわるが、体に吸い付くような炎を消すことができない。
オルピはまだマリゴア達を見据えているが、横目にレイス達の様子を確認する。振り向いたオルピの額には、紫色に光り輝く紋章がはっきりと浮き出ている。その表情はもう怖がっている様子は微塵もなく、決意に満ち溢れた表情。
 
   レイス「あれ、、がオルピなの?」
   
   ジェダ「ああ、、、どうやら俺たちが知るアイツではないようだ」
 
  ジャール「あいつ、、、、すげぇ、、」
 
オルピが視線をマリゴアに戻すと、大きな身体を反り返らせ後ろに倒れて動かなくなる。そして、しばらくして砂煙の奥から、ダメージを負ったボダラーンがフラフラとした足取りで歩いてくる。
 
 オルピ「なんてやつだ、、助かってたのか、、、」
 
    ボダラーン「くそ、、、くそ、くそ、くそぉ!!たかがヒヨッコが、なぜ金色のマナを使いこなすのだ!!」
 
オルピは何のことか理解できないが、目の前の敵への警戒を続けている。ボダラーンは怒りの表情で、自身のサモンを召喚する。
 
 ボダラーン「許さん、絶対にお前はここで始末す
る!  マリゴアを失ったこの恥、、絶対に許さんぞー!我がサモンの力見せつけてやる!」
  
ボダラーンのサモン[ Vortex Malumdark (ボルテックス・マルムダーク)]
 


3.

 ⚫同 夕

ボダラーンは激高しながら、戦闘態勢に入る。オルピはさらに身構えるが、次の瞬間その場にスコーリア教官のベルダスとシルヴァが空から降りてくる。ベルダスは倒れているレイス達のもとへ行き、シルヴァはオルピの傍に近づいていく。
 
   ベルダス「お前たち大丈夫か!!」
   
   ジャール「先生!!生きてたんだ!」
 
    ベルダス「あぁ、、まさかマリゴアをお前たちが倒してくれるとは思わなかったが、お陰で俺の呪いが解けたんだ。」 
 
   レイス「本当に良かった、、先生、マリゴアはオルピが一人で倒したんです、、」
 
   ベルダス「ああ、どうやらそうみたいだな。だがお前たちも必死になっていたことが良くわかるぞ。本当に頑張ったんだな。すまなかった。」
 
ベルダスの言葉に必死に気を張っていたレイスの感情が緩み、涙が溢れてくる。キッパも目を覚まし、ジャールと共に安堵感から涙する。ジェダだけが、戦いの様子を注視している。
 
   ベルダス「さあ、後は先生たちに任せて、お前たちは自分の身の安全を最優先しろ。」
 
ベルダスが全員の様子を確認し安全を促す一方、シルヴァが陽気な様子でオルピに話かける。
 
   シルヴァ「いやー!オルピ君!!せんせーぶったま   げダヨ! あんなヤバいデカブツ君一人で退治しちゃったなんて、まだ、あんびりーばぼーダヨ!」
 
   オルピ「シルヴァ先生、、、でもまだあいつが、、」
   
   シルヴァ「ノンノンノン♪ キミ達の出番はここまで!ここから先は大人の戦いダヨ!手出し無用デス!!」
 
シルヴァはポンポンとオルピの頭を撫でながら、変わらず陽気な様子で語りかけたあと、ボダラーンに目を向ける。ボダラーンもシルヴァをにらみつける。
 
   シルヴァ「さて、、と。いこうか、ノヴァ!」
 
シルヴァの声と共に、シルヴァのサモンが召喚される。
 
  シルヴァのサモン[Nova Solanstrike(ノヴァ・ソランストライク)]
 
   ボダラーン「こしゃくな!誰が来ても一緒だ! いくぞボルテックス!」
 
   シルヴァ「フフン、試してみてはいかがでしょうか!」
 
二人の激突が幕を開ける。
 
 
 ~第五話 終~


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