『ソラナム~オルピと紫夢の召喚士~』第四話
こちらのお話は、創作大賞2024に応募させて頂いた原作の続きとなります。
第四話
シーン 1
●アゴナス試合場周辺・昼
マリゴアの肩から出てきたのは黒褐色に光る鎧をまとったエルフで、5人は初めて見る異形な種族に驚きと戸惑いを隠せない。そしてそのエルフは大きな声で5人に語りかける。
ボダラーン「ふはははははっ!か弱き者どもよ!我が名はスキア族の戦士ボダラーン!この地に眠るエギビーをもらい受けに来たぞ」
5人は目の前で起きていることが理解できない様子で、どうしていいかわからない。
ボダラーン「恐怖で動くことさえできぬだろう。無力なチビどもめ。ここでマリゴアの餌食になるがいい」
ボダラーンが再度、背に移ると同時にマリゴアが大きな鳴き声で威嚇してくる。5人は苦悶の表情を浮かべる。
ジェダ「くそっ、、、何でこんなことが、、」
ジャール「俺たちだけでどーしたらいいんだよ!」
レイス「とにかく、なんとか今できることを考えるのよ!!」
キッパはあまりの恐怖にジェダに担がれたままでいる。オルピもジャールとレイスの肩を借りてやっと立てているが、事態についていけていない様子。
オルピ「何なんだよ、、もう昨日から何なんだよ!!」
レイス「ちょっと落ち着いて!あなた、とにかく今は下がってなさい!」
ジェダ「今、まともに動けるのは俺とレイスだけだ!ジャール、キッパとオルピを連れて逃げろ!」
ジャール「お前ら!あんなのに敵うわけないだろ!ベルダス先生でも一瞬だったんだぞ」
レイス「わかってるわよ!!!わかってるけど、、、今はそうするしかないの!」
ジェダ「ほらはやく動け!」
5人がやり取りをする中、マリゴアが走って迫ってくる。と同時に、ジェダとレイスは召喚詞を唱え、臨戦態勢に入る。
ジェダ&レイス「グノーテ・サウト・カリル!キュルム・ディクトス!」
ジェダ「Axel Auberguard【アクセル・オーバーガード】」
レイス「Vivian the Vibrant【ヴィヴィアン・ザ・ヴァイブラント】」
ジェダ「おそらく、あの龍は実体なので“エノシ”でないと戦えない!レイスいけるか?」
レイス「了解!」
二人は同時にサモンと同化する。マリゴアはなおも迫ってくる。オルピは泣きそうになりながら、二人の様子を見ている。
オルピ「ジェダ、、レイス、、、」
ジャール「いいから!俺たちは今逃げるしかねーんだよ!」
ジャールはキッパを抱え、オルピの手を引いて後ろに逃げようと走る。
ボダラーン「フフフ、無意味な友情だな、、遅かれ早かれ餌食になるだけだというのに」
冷たく不敵に笑いながら、マリゴアと共に二人を襲ってくる。ジェダとレイスは何とか応戦しようとするが、ぎりぎりでかわすことしかできない。
レイス「あんなに大きいのに動きが早すぎて、、」
ジェダ「くそっ、なんとか足止めしなくては!頼む!!効いてくれ! “ハードニング ウェイブ”(硬化する波)」
ジェダから、波のような光線がマリゴアに向け放たれる。光線はマリゴアの足元付近に命中して砂煙が上がる。
ジェダ「よしっ、まともに当たった!!」
レイス「あれなら動きを止められるはずよね!」
二人は注意深く様子を見る。やがて砂煙の奥にシルエットが見えてくる。
ボダラーン「ほう。マリゴアに向けて攻撃するとはひよっこ達のくせに度胸だけは褒めてやる」
マリゴアの足元には、波のような物体がまとわりついている様子。が次の瞬間マリゴアの動きが2人の望みを砕く。
マリゴア「グギャァアアアア」
大きな雄たけびをあげ、マリゴアが両足を上げ羽ばたく。波はゴムのように少し伸びるが、あえなく千切れてしまう。
ジェダ「ばかな、、、引きちぎるなんて、、、」
レイス「ジェダ!!危ない!!」
ジェダが茫然としているところ、マリゴアは大きな尾っぽを振り、二人を吹き飛ばそうとする。レイスはジェダの横にまわり衝撃を抑えようとするが、二人一緒に吹き飛ばされてしまう。
レイス「きゃぁああああ」
ジェダ「うぐあっ、、、!」
二人は吹き飛ばされ倒れるが、よろよろになりながらもゆっくりと再び立とうとする。
ジェダ「レイス、すまない。まだ立てるか?」
レイス「なんとか、、回復したいけど、そちらに回すマナの余裕が無くて」
ジェダ「レイス、もし可能なら隙を見て君だけ逃げるんだ!一瞬だけでも俺が足止めをする!」
レイス「何言ってんのよ!あなたももう限界じゃない!私だけ逃げられるわけないでしょ!」
そんな二人のやりとりも虚しく、マリゴアは次の攻撃を繰り出そうとして、前脚の爪で地面を引っ掻いている。その様子を見ていたジャールが抑えきれず二人のもとへ走っていく。
ジャール「くそぉーーー!お前ら、俺らの大事なダチに何しやんがだーー!」
ジェダ「ジャール!!ダメだ!来るな!!そのまま逃げるんだーー!!」
レイス「バカっ!!やめなさい!!」
ジャールは、二人の制止も聞かず、感情のままに突進していく。オルピは怒りとも悲しみともとれる表情で、誰に言うでもなく、自身の思いを叫ぶ。
オルピ「もう、、やめてくれよ、お願いだから。誰かを傷つけたり、襲ったり、、、“戦う”って何なんだよ!!」
~第四話 終~
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