ただのK-POP好きで終わらせるな

いよいよ身近にもK-POPやそのアイドルを推す人間が現れ始めたことで、最近は専ら韓国の地理的観点からの理解に取り組み始めている。
日々ニュースを目にする中で、やはり地理が蔑ろにされ、人々の間でも地理的理解が浸透していないなということを痛感した。
近年、K-POPやアイドルをきっかけに韓国という国や文化に関心を持ち、旅行しようという人も増えているだろう。私はそんな人々の間でも地理への関心が薄いことに警鐘を鳴らしたい。

人々が地理に興味がない根本的問題

そもそも、どうして我が国の人々は地理への関心や知識が薄いのか。それには一市民の力ではどうしようもない理由がある。
そもそも、昨年度まで地理は高校カリキュラムにおいて選択履修科目であった。つまり、「学ばなくても卒業できます」というものであった。高校3年間の間に地理を一度も学ばずに卒業していく人が多いことは、センター試験・共通テストの地歴科目で日本史を選ぶ人が1番多いことからも推察できる。
中には選択の余地なく日本史を履修させたり、職業科高校においては地歴をほぼやらないようなところもある。
つまり、多くの人は織豊時代や徳川15代将軍などは知っていても、歴史に地理が絡んでいることまでは頭が回っていないのだ。
また、受験戦略的にも地理は得意でもない限り高得点を比較的取りにくく、単純暗記で大方カバー可能な日本史が好まれる。(共通テストになってからはこの限りではない)
これらの理由から、地理について馴染みがないまま社会に出る人が大半であり、当然社会人になってから地理に関心が湧く…なんて人は少ない。
結局、これらにより方向音痴、地図が読めない、地図の向きの原則(上が北)すらも他人に指摘されて初めて気づくような人間が生まれてしまう。いつかなんとかしたいと思うもどかしい問題だ。

旅先の地理的概要を把握せよ

とはいえ、韓国のみならず、異国の地に飛び込む前にはあらかじめ旅程計画と現地の地理情報をさらっと把握することが欠かせないと私は考える。それを知らずに行くことで、命を落とすこともありうるからだ。
例えば、ある人が「イスラエル・パレスチナ」に行きたいなぁと考えたとする。この人はガザ地区についてあまり興味がなく、普段からニュースや難しい社会科知識を嫌う傾向にあると仮定する。
そんな人がイスラエルやパレスチナに飛び込むとどうなるか。
爆撃に驚き、イスラム国に謎の言語で罵られたり、最悪の場合巻き込まれて命を落としうる。
こうはなりたくないだろう。そのために最低限のニュースに触れたり、地理情報をしっかり入れることをお勧めする。

韓国地理を叩き込もう

では、K-POP好きで韓国旅行願望がある人々にもそんな人がいるのではないだろうか。
決して恥じることではない。命は終わらない。また初めから学び直せばいいんだ。

まず、セルフチェック項目を示す。

  • 韓国の位置を地図で確認

  • 韓国の首都名と位置を同様に確認

  • 韓国の大統領名を暗記

  • 韓国が実効支配する竹島問題をさらっと把握

  • 韓国の主な気候区分を押さえる

  • 韓国の人口ランキングベスト3の都市名を暗記

  • 北緯38度の意味

関係ないことがいつか身を結ぶ。基本を押さえておこう。

旅することは、地理を学ぶこと。何よりのフィールドワークである。ただテーマパークを巡ることを良しとしないが、そこから得られる何かがあるならば許容範囲だと考えている。
アイドルの聖地巡礼一つとっても、その光景から何かを感じ取ってほしい。行って撮って終わりでは金を費やした労力と成果が釣り合わない。

韓国の地理的事象から読み解く梨泰院雑踏事故

では、本題に入る。
2022/10/29、ハロウィンパーティーが行われていた梨泰院で残念な事故が起きてしまった。つい先日一年を迎え、日本人犠牲者の遺族の悲痛な訴えがテレビでも流れていた。それを受けて、渋谷など全国各地の繁華街では「ハロウィンに街に集まるな」を一層強く叫んでいた。

では、梨泰院雑踏事故に潜む地理的な根本問題に触れたい。
そもそも、梨泰院がどこら辺にあるかご存知のK-POPおよび韓国好きはどれくらいいるのだろうか。「梨泰院クラス」で聞いただけでとどまる人々は、残念ながらそのままでは私に対するあらゆる誹謗中傷の効力を成さない。
梨泰院はソウル特別市の中にある地区で、細小路が多いのが特徴だ。米軍基地もあり、多国籍なカラーが強いことでも有名だ。要はソウルの中にある一地区と考えてほしい。

そもそも、韓国の人口構造として、狭い国土に4000万人以上の人口がおり、人口密度がめちゃくちゃ高いことと、人口や都市機能がソウルへ一極集中していることを知識として入れておきたい。
人口密度は1㎢あたりの人口を示し、これが多いほど密度が高いとなり、反対だと低いと言う。高いほど狭い空間に人がギチギチだと考えてほしい。低いほどゆとりがありスカスカである。
梨泰院雑踏事故は、普段よりも人が集まることで人口密度が爆上がりして起こったが、そもそも普段の人口密度がやばいのだ。これは今後確かめたいことだが、街を普通に歩いていても人が多いなと感じるのではないかと考える。

また、韓国全体として、首都ソウルに人口のみならず経済・文化・教育などの中枢も一極集中してしまっている。この集中度合いが日本よりも酷いのだ。事実、日本の首都圏人口は日本全体人口の3割ほどを占めているが、韓国ではこれが全体の半分以上なのだ。つまり、ここからも普段からソウルの人の多さが尋常でなく、慢性的な過密が起きているのではと推察される。

これらを把握できていれば、「この日は混むな」という推測が即座にできるので、理由なく街に繰り出す人々が減るだろう。これを知らぬまま、好奇心と欲望だけで判断するから、結果として自分から人生を終わらせに行ったことになってしまうのだ。

まとめ

どうだろう。無知は恐怖であること、死は常に隣り合わせであることがわかっただろうか。韓国と日本の事情は大きく異なる。この前提を知らぬまま、「グクー」とか「チェウォンー」「イソー」とかうちわを振るだけのファンが韓国へ乗り込むと、悲惨な結末になりかねないのだ。つまり、推すだけならそれでもいいが、韓国に行きたいと思うなら、アイドルを好きな気持ちだけではどうにもならないことがあることを知った方がいい。今後また同じことが起こりうることを頭に入れるべきだ。
そこで、重要なのが地理的な知識だ。こういう前提を入れておくだけで梨泰院雑踏事故のカラクリがわかるだけでなく、こうだからこうなるかという推測・判断を自らで行い、適宜命を守る行動を取ることができるのだ。
しかし、現実はこれを蔑ろにし、これらに詳しい人物を「堅苦しく、つまらなくキモい人間」とみなしてスルーしてしまう人がいる。嫌なことから目を逸らしてしまうのだ。それだけならいいが、そのくせに私が逃げると「甘えー」「逃げー」と叫ぶからもう手に負えない。
これまで学んでこなかった人も、いつ興味を持っても罪ではない。ぜひ、文化や食の背景と結びつく意味でも地理的な視点から韓国を学び、将来の旅行に生かしてほしいと切に願う。

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