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キャプテン・アメリカ&ファルコン:シークレット・エンパイアを読んだ


前置き

 みなさんはマーベルシネマティックユニバース(以下MCU)でどのキャラクターが好きだろうか?
 数多くの魅力的なヒーロー並びにヴィランが登場するので選択に悩むところではあるが、私はキャプテンアメリカが好きだ。
 超人血清による肉体強化こそあれど、それ以外では特殊な能力を持たない彼だが、その気高い精神性でアメリカの理想を体現しようとする姿がとても好きなのだ。だが、その鋼とも称される精神性ゆえに、彼は仲間と、周囲と、そして自身が背負っているアメリカとも衝突する。折りたくとも折れない自身の信念に苦しみながらも、平和と理想を守るために戦うその姿は、特殊な力を持たないながらもアベンジャーズの精神的支柱としてあり続けている。その姿が大変すばらしい。
 そんな彼がサノスとの戦いを経て、ライバルであり親友であるアイアンマンの最後を見届けた後、最後の最後に現代の親友であるサムに理想を渡し、自身の幸せを選択した終わり方が美しい、と思うのだ。
 と、また前置きが長くなったが、今回はそんな私の好きなキャップのエピソードである。

あらすじみたいなもの

 シークレット・エンパイアというタイトルは2017年にも展開されていたクロスオーバーシナリオにも付けられていたが今回は古い方、1974年のエピソードだ。72年にアメリカで起きた政治スキャンダル『ウォーターゲート事件』とベトナム戦争が背景にあり、アメリカ政府の信用低下があった。キャプテンアメリカはその設定からその社会問題の影響をモロに受けてしまう。まぁ、アメリカの歴史はそこまで詳しくないのでここら辺の言及はあまりしないほうがいいだろう。
 今回のエピソードのメインは、謎の組織『シークレット・エンパイア』の罠にはまり、情報操作により云われなき汚名を負わされたキャプテンアメリカが、行動を制限されながらも偶然出会ったX-MENやワカンダで新しい装備を手に入れたファルコンと協力しながら戦っていく。だが、シークレット・エンパイアの黒幕の衝撃的な正体を知った彼は、事件の解決後に一つの決断を下す……と言った感じ。

70年代の空気感

 この手の古い作品を読んでて面白いのは当時の空気感のようなものに触れられることだ。作品が発表された74年は前大戦から20年以上も経ち、冷戦の真っ只中、ベトナム戦争での厭戦ムードもあっただろう。そんな中で引き起こされたウォーターゲート事件でアメリカ政府の信頼は失墜していた。何せ、史上初の大統領の辞職まで起こったのだ。当時の人が如何に政府に失望していたのかわかる。
 登場するキャップもウォーターゲート事件を口にしており、当時の人たちにとっても如何に問題視されていたのかわかる。だが、その一方でキャップ自身も政府と同じように市民からの不信感を持たれることになる。それはもちろん、今回のシークレット・エンパイアの手によるものだが、『アメリカ』という名前を背負うことの難しさにも感じる。子供たちが無邪気にサインをねだる中、それから一歩離れた大人たちが『でも、キャプテン・アメリカも実は……』と考えているという生々しいシーンが特に印象的だ。何を信じればいいのかわからない、そんな当時の人々の気持ちが伝わってくる。

キャクターデザイン

 70年代空気感と同じくらい見どころなのが当時のキャラクターデザインである。何せもう半世紀前も前の作品、今と比べれば好まれるデザインも大きく違うだろう。よくよく、こういったデザインの違いを今の感覚で安易に「ダサい」と表現しがちだが、その手の意見には閉口してしまう。
 MCUのキャップもサムもスリムな細マッチョという感じだが、この時代の二人はまさに筋肉ムキムキである、腕の太さなんか顔と同じくらいありそうだ。そして彫りの深い顔をしており、当時に好まれていたデザインがよくわかる。途中でX-MENのサイクロプスが協力者として合流するのだが、とてもスリムなデザインで”優男”っぽさが逆に異質に見えるほどだ。持ち前の身体能力で戦うキャップとサム、ミュータント由来の特殊能力で戦うサイクロプスの違いがキャラデザからよくわかる。
 ……まぁ、サイクロプスも後々にはムキムキになるんだけど、やっぱ向こうではそっちのほうが好まれるのかな。

ファルコン

 今回のエピソードはファルコンことサムが暴漢に襲われることから始まる。キャップが駆け付けたことで難を逃れるものの、同時に相棒であるキャップとの実力差を痛感した彼は、新しい力を得るためにブラックパンサーに助力を得ることに……そこでMCUでもおなじみの飛行ユニット、というよりもこの時期は飛行ができるスーツ、と言ったほうが正しい、を得ることに。
 MCUでの陽気で明るいアメリカ人、というよりはむしろ野性味の強いネイティブアメリカンみたいな性格をしており、とても時代を感じる。今の時代にこのキャラクターで作ってたら普通にいろんなところで文句を言われそうである。まぁ、MCUのほうも黒人のステレオタイプではないか、と言われると怪しいところもあるが、本記事の主題ではないので言及はしない。

キャプテン・アメリカ

 今作の主役だが本編ではほぼ苦戦しっぱなし。頼りになる相棒も上記の理由で前半はいないために一人で孤軍奮闘する羽目に。しかも相手は謀略を駆使するタイプの敵なのでとことん相性が悪い。
 落ち着いた性格のMCUとは違って、こちらは精神が若いのか直情的で(作中で本人もそう自己分析している)、テレビCMで自分を非難する映像が流れたのを見たからと言ってその足で本人に会いに行って問い質すという行動派。そういったところが余計に市民に不信感を与えてしまい、余計に袋小路に追い詰められていく。
 ウォーターゲート事件もあって自分の戦う理由について終始悩みっぱなしな上に、市民からも不信感を抱かれてしまい、それが結果的にラストの決断につながってしまう。こういった面も当時の人たちが抱えていた漠然とした不安や悩みをキャップ自身を通して表現しているのかもなぁ、と感じてしまう。
 それはそうとこの時期のキャップのデザインは非常にシンプルなものだが、このデザインは個人的にかなり好きな部類。MCUのこのデザインを基に解像度を上げたのももちろん好きなのだが、やはり飾り気のないのはそれはそれですっきりしてていいな、と感じる。

終わりに

 前回の『ウェポンX』が初心者が最初に読むにしてはあまりにも間違ったチョイスだっただけに、今回はすんなり読めたかも。好きなキャラクターだから、というのもあるんだろうけど。なのでしばらくはキャップ関連の巻を中心に読もうかな……
 もし何かおすすめある人いたら教えてもらえるとありがたいです。

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