MBAで人生は変わるのか?(2/2)

前回のNote(1/2)では、MBAの歴史、意義などの概要をお話してきました。今回(2/2)では、具体的にMBAってどうやって入学してどのような生活をするのかを詳しくご説明していきます。

少しでもMBAで学ぶことに興味のある方がいらっしゃれば、受験の参考に!

MBAの受験

MBAは、もちろん通常の大学院と同じように入試をクリアしなければなりません。しかし、受験の試験内容については、千差万別だろうと思います。

まず海外のMBAでは基本的に、筆記試験はありません。その代わり、出願時に提出する資料から総合的に評価し、合格者を足切りしていく方法がよく採られます。書類審査で提出が必要な書類は、願書、成績・卒業証明書に加えて、英語能力を推し量るための①英語のスコア、②志望動機書、③推薦状、④職務経歴書の提出が義務付けられています。

①英語のスコア
英語力を示す為の各種試験の結果を提出します。日本で有名なTOEICは世界ではほとんど相手にされませんので、TOEFLやGMATを受けましょう。
受験するMBAによって合格ラインが異なりますので、必要な点数の基準をあらかじめ確認しておくことが重要です。
また通常 願書は入学予定日の1年以上前から受付が開始されますので、早めに英語スコアへの対策をしておかなければいけません。

②志望動機書
なぜMBAを選んだか、そして、なぜこの大学のMBAコースでなければならないかを英語で記述します。日本の大学や企業就職のときみたいな紋切り型の文言だと確実に落とされますので、自分のキャリア、ビジョン、人生におけるミッションを紐づけながら熱く語りましょう。

③推薦状
多くの場合は同僚や上司に書いてもらうものです(新卒だと担当教授などに書いてもらいます。)。基本的にはリファレンスとして複数名の方からの推薦状を課すところも多いですね。信頼している上司などに、いかに自分がタフで優秀かを書いてもらいたいところでです。

④職務経歴書
これまでどのようなキャリアを歩んできたかを詳しく書いていきます。受験者は何ができて、何が強みか、そして大学や同級生に対して与えられる何かを持っているか、を推し量るための指標となります。

これらの書類によって一次選考が行われ、その大学のMBAコースにふさわしい人物かが判断されます。そして、一次試験を通過すると、その後は対面での面接が待ち構えています。
海外の大学ではMBAに限らず、複数回の面接または海外渡航者で何度も面接ができない人には一日中朝から夜まで面接したり大学内を連れまわされて複数人と話をします。強いストレスをかけることで、本当のことを言っているのか?思考の柔軟性はあるか?ハードな状況でも考え抜く力があるのか?ということを複数人で多面的に判断するためです。

MBAの受験で最も重視されるのが、この面接です。ビジネスマンとしての優秀さ、真摯さ、MBAに対するモチベーションを徹底的に吟味します。

海外のMBAに行かれる方は、ビジネスレベル以上の英語ができることが前提で、その上に強力なキャリアや自頭の良さで勝負をしなければならないので、受験の前から海外へ移り住みトレーニングをする人も少なくありません。

では、日本のMBAはどうかというと、(大学によって差はあるものの)海外MBAと同じく、面接を最重要視します。

一方で、足切りは、書類選考と筆記試験で行うところが多いです。
書類選考は、海外MBAと同じような提出物が求められますが、その判断基準は海外に比べるとゆるやかです。人物として問題がないか、入学しても途中で脱落しない学力があるかなど減点方式となっているので、特に問題なければ書類選考は通過しやすいです。

やはり日本は、筆記試験がなぜかあるところが多いですね。大学によって受験科目は大きく異なりますが、どこも共通しているのは英語と小論文です。入学しても英語は対して使わないのですが、ビジネスマンとして必須要件ということなのでしょう。

小論文は、面接と同じく重視される試験科目です。
多くの場合は時事問題の概要や仮想の企業事例が記されている紙が配られて、その時事問題や事例に対する自分なりの考え・課題に対する提案などを行います。A4に1-2枚程度で言いたいことを簡潔にまとめる必要があります。
小論文は、社会環境に対する普段からのアンテナ、多様な話題に対する思考の瞬発力、必要なことを最低限の言葉で伝える論理力、を総合的に確認できる試験なので、筆記試験ではここで差がついているのではないかと推察しています。

他にも学問としての「経営学」を重視している国内MBAだと、総合学力試験として、学部生の大学受験のように数学、科学、国語、社会など基本的な学力をはかるためだけの試験を課していることも多いですが、このような科目の筆記試験が経営能力においてどれほど重要なのかは不明です。

入学後のスケジュール感

無事MBAに入学する事が認められると、同級生たちと大学に通うこととなります。

MBAコースは、約1.5~2年ほどで修了するようにカリキュラムが組まれていることが多く、これは国外/国内同様です。
そして、海外MBAのほぼすべてはフルタイムでの通学が基本ですが、国内MBAはキャリアの中断を嫌う企業や個人の嗜好を反映して、働きながら通える夜間や週末にキャリキャリキュラムを詰め込む社会人コースが設定されていることもあります。

海外MBAでフルタイムが前提であるのは、MBAを取得する事がビジネスエリートの証であり、MBA取得者と非取得者では企業の評価が段違いですあることから、MBA取得者は難易度の高い業界トップクラスの企業への転職やコンサルタント、証券、金融などの門戸の狭い業界、スタートアップの起業など、MBA取得前のキャリアからがらっと転向する事が基本的な動向です。

このような理由からMBAには、人生をリセット/リニューアルするという意味付けもあるからこそのフルタイムを課しているということもあります。

さて、フルタイムの場合は、平日に一日中授業を受けることとなります。また課題も毎日大量に出されるので、授業以外の時間も図書館にこもってひたすら勉強し続ける毎日が待っています。

国内MBAに多い夜間や週末コースでも、基本的に平日夜間や休日は時間が許す限り授業を詰め込みます。またフルタイムとほぼ同様の課題を出されるので、フルタイムは学生専業で課題をやりやすいのですが、夜間や週末MBAでは働きながら、なんとか時間をやりくりし、寝る間を惜しんで課題をこなしていく必要があります。

さてMBAの授業とはどのようなものか?というと、授業ときいて真っ先に頭に思い浮かぶ座学ではなく、どちらかというとグループディスカッションが中心となります。

これは、前回も述べたMBAは多様な業界の様々な人材・知識との交流により視野を広げ、新たな思考様式を獲得・人的ネットワークを構築する事を重視していることと、経営そのものは答えの無い問題である為に、座学のように問題と答えが一対一でないものに対して複数の答えの中から、その時々のシチュエーションに合わせてもっとも適切なものを選択する意思決定力を養うためではないかと推測しています。

あとは地方や海外で何かゼロ→イチで事業開発を実際に行ったり、企業を訪れて実際の業務における課題を洗い出したり、経営者と実際に議論を戦わせるフィールドワークなどもカリキュラムとして存在しています。むしろ座学などよりこちらの形態の授業が中心の大学も多くありますね。

MBA取得に向けた最大のタスク

先の項目でMBAのカリキュラムは多種多様と申し上げた通りに、卒業の要件も多様です。

ケースメソッドと呼ばれる過去の企業の事例や仮想の企業のロールプレイで、実際に意思決定を行う授業を中心にしており、規定単位を取得すれば終了可能なMBAも多く、海外MBAのほとんどがこの類型に属します。ただし、単位の取得は容易でなく、講師による厳格な評価が下されます。しかも、成績下位XX%は必ず不可となるルールが課されているため、MBAを修了できずに退学するひとも少なからず存在します。

一方で国内のMBAには、修士論文の作成と提出を修了の要件としているところもいくつかあります。ぼくの場合は、修士論文を課すタイプのコースに通っていましたので、修了半年~1年は課題と研究および修士論文の執筆に追われ、寝ずに頑張っていました。

修士論文の内容は人によってケースバイケースなのですが、例えば以下のようなテーマがあります。

・企業の事例研究
・業界やビジネスモデルの研究
・経済モデルの研究
・自社経営の研究と戦略提言

などなどです。僕の場合は本業がベンチャー企業経営ということもあり、イノベーションマネジメントとスタートアップの成長プロセス、エコシステムを主な研究テーマとしており、「スタートアップの成功における内部要因/外部要因」に関して論文を書きました。

自分でもなかなか面白い内容に仕上がったと感じており、近いうちに大学提出用でなく、きちんと整理して経済誌や専門誌へ投稿したいと思っています。もしPublishされたら何らかの形で、お知らせしたいと思いますが、気が向いたらNoteでもシリーズ化して論文の内容を書いていくかもしれません

MBAをとって何か変わったか?

これははっきり言います。ぼくの場合はMBA前後で人生や物事に対する見方はほとんど変わりませんでした!

というのも、もともとは経営コンサルで培った経営スキルが、(コンサルという第三者ではなく)本当に企業経営の実践で使えるのか?自分自身の経営知識やビジネススキルが十分備わったのか?ということを確認するために、MBAの門戸を叩いた前回のNoteで書きましたが、結局のところ、MBAで経営学を改めて学ぶことで真新しい知識は無いと感じました。

しかし、それまでコンサルタントとして、無意識・暗黙的に使っていた概念、思考の方法、フレームワークなどを、経営学として形式知化する事は出来ました。そのため以前よりは思考が整理され、ロジックの組み立てがやりやすくなったのと、人に説明したり、文章に書いたりする際にわかりやすい言葉を選べるようにはなったかなと思います。

また単純に研究・探求が好きなので、修論研究にはかなりのめりこみ、実際にベンチャー経営の成功に向けた実践的示唆を得ました。今の会社ではすぐに実践できる状況ではありませんが、中長期的にはなんらかの形で自分自身で見つけた理論を導入・実践していきたいと思います
(これは正直MBAに通わずとも研究する動機さえあれば一人で見つけられていたとも思いますが、きっかけとしてのMBAが無ければ研究に手を付けることもなかったでしょう。)。

あとは普段出会えないような業種の違う人たちと出会えたことは、MBAに通わなければ得られなかったので、MBAのメリットの一つである人的ネットワークはたしかに得られました。

しかし、結局は経営コンサルは外様な第三者で、経営のことを本質的にはわかっていないと考えていたのは幻想であり、数年の経験で十分、ビジネスの第一線、経営学という学問でも戦えるという結論を得ました。

しかし、ぼくの場合は海外MBAよりもゆるいと考えられている国内MBAでのことですので、海外MBAでは得られるものが圧倒的に違うと思いますし、どうせ年月をついやすなら海外MBAに挑戦してもよかったかも、とは思っていますし、いつか通いなおす可能性はゼロではないかもしれません。
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さて2つのNoteを費やして、MBAの実際についてお話させていただきました。ご理解の一助になればさいわいです。

またMBA取得を考えている方にも参考になればうれしいです。もしご質問などあればコメントなどいただければ、お答え可能なものにはお返事していきたいと思います。

こちらの記事は、Podcastでも配信しています。今回の話題をダイジェストで振り返りたい方はぜひ!
https://t.co/3g5U7ZxdFJ?amp=1


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