MBAで人生は変わるのか?(1/2)
こんにちは、イトーです。
ぼくは人生の最初のキャリア選択において生物学で博士号、いわゆるPh.D.を取得して研究者になりました。その後、経営コンサルタントに転向してビジネス系の経験を積み、バイオベンチャー企業を創業しました。
実はバイオベンチャーを経営しながら、経営学修士(MBA)コースに週末のみ通い、経営を学問として学びました。なので、今はPh.D., MBAという二つのタイトルを持っています。
MBAについてお聞きになった方もいらっしゃるかもしれませんが、あまり一般的に浸透しているものではないように思います。そこで今回のNoteでは、MBAとは何か?どうしてMBAに通うこととしたのか?実際MBAは何をして、通うことでどんな効果があるのかを簡単にご説明していきたいと思います。
こちらのNote (1/2) では、MBAの概要と現状をお話し、後半(2/2)では、MBA取得を目指されている方もいるかもしれないので、受験やワークスタイルなど詳しい話をしていきたいと思います。
MBAとは何か?
MBAとは経営学という学問の大学院のうち、修士課程のことを呼びます。なので、もちろん経営学博士も存在しており、こちらを修了するとPh.D.(博士)のタイトルを取得する事ができます。なので、本来的にMBAとは学部生の延長線上として、経営学という学問を学ぶ場となっています。
しかし、現実的なMBAの役割はビジネスエリートの証あるいはそれを育てるための実務を意識した教育機関の位置づけとなっています。MBAのビジネスエリート排出の文化は、米国からはじまりました。
1980年代より前は純粋な学問追及機関としてごく一部の人々がMBAで勉強していましたが、1980年代以降ビジネスモデル(およびそれにかかわる技術など)が多様化/深化した結果、市場の不確実性が増し、効率的な経営が困難となってきました。
そこで、経営を学問として理解し、実践に落とし込んでいくことを志向してビジネスマンがMBAの門戸をたたきます。それにより、1980-1990年代にMBAが一代ブームとなり、ビジネス領域における超優秀層が世界中から米国のMBAコースへ集まり、MBAに集まった優秀層同士での人的ネットワークが形成されることで、優秀層の中でノウハウが共有、さらに経営の成功者が量産される好循環を生み出しました。
かつてほどの熱気はありませんが、現在も海外でのMBAの評価は高く、米国だけで年間10万人のMBAが排出されているといわれます。一方で、日本ではMBAの役割や有効性が十分に理解されていないため、企業によるMBAの評価やビジネスマンの中での知名度は高くなく、日本国内で年間約2500名程度のMBAが誕生しています。ちなみに、この数字には海外MBAへ留学した日本人の数は含まれておらず、あくまで国内大学のMBAを修了した人の数を表しています。
あと整理しておいた方が良いのは、似て非なる学問である「経済学」と「経営学」の違いで、これらの違いは学問の対象としている主体に依存しているといえます。
つまり、「経済学」はわたしたちが営む社会を対象としており、「経営学」は企業を対象としています。「経済学」は、社会における財貨・サービスの生産・交換・消費の法則について理論立てて解明/定義しよとする学問のことであり、一方で「経営学」は、企業活動の原理や効率的な運用・管理の方法を理解しようとする学問です。
このような理由から、「経営学」では過去や現在存在している企業の活動や周辺環境等の事例分析を重視しています。それゆえに、学問よりも実務に違い領域であるからこそ、ビジネスエキスパートを育てる素地があるのです。
なぜMBAをとろうと思ったか?
これは、「経営」とは何か?答えがあるのか?ということに自分一人の力では答えを見いだせないから、学問として学び、経営とはなにかという答えを出すことに誰かの力を借りたい、という ”探求心” と、単純にビジネス業界でまことしやかにそのすごさを語られるMBAとはいったいどのようなものなのかを体験してみようという "好奇心” に基づいています。
僕は科学者から転向した経営コンサルタントで、経営という "答えの無い" 課題に対して向き合ってきたわけですが、そもそも科学者が数年間の経営コンサルタント経験で、経営という魔物を理解できたのか、自分自身ではよくわかりませんでした。
だから、曖昧模糊とした経営や戦略といったものの理解に経営コンサルタントの経験が本当に役立っているのか、そしてその経験だけで経営の理解が不十分なのであれば、MBAを通してより理解を深め、自分の会社経営へフィードバックできるのではないか、と考えました。あとは単純にコンサルの現場でたたき挙げてきた自分自身の能力が、MBAというビジネスにおける超優秀層のあつまる場で通用するのか、という力試しの意味もありました。
MBAの種類
MBAにはそこまでバリエーションは無いのですが、「無印MBA」と「Executive MBA」にざっくりと分けることができるかと思います。
・【無印MBA】:受験資格として、一定の実務経験を求められることはありますが、Exectiveに比べるとそこまで高いハードルではありません。基本的には社会人経験のある人が通う事が前提ではありますが、一部のMBAでは学部制から直接入学したような新卒の方も受け入れているところもあります
・【Executive MBA】Executiveとは管理職以上の、企業のお偉いさんなどを指しており、ビジネス経験が非常に豊富で素晴らしい成果を上げている人のみを集めたMBAです。受験資格として、長期の実務経験(10年以上など)と一定の成果・実績を課しています。米国から始まったMBAですが、その最大の強みは、学問としての経営学の知識でなく、ビジネスExecutive同士の人的ネットワークの形成にあります。この意味においては、極端に言えば、Executive MBAこそが本来の意味を満たしているともいえるかもしれません
MBAはおおまかに分けてこの2つくらいしか種類はありませんが、カリキュラム自体は各大学によって大きく異なっています。学問を学ぶ性格が強く、理論を学び、経営を研究して論文を書く事を重視しているところ、あるいは、実務を重んじ実際にゼロ→イチで事業を作る体験をする等フィールドワークを重視するMBAなど多種多様です。
そして、日本では米国のMBA制度と文化を輸入しようとしましたが、米国ほどの強力なビジネスエリート教育機関には、なれていないのが現状です。その為、国内だけで現在70以上のMBAコースが存在しているにもかかわらず、国際認証、つまり国際的な第三者機関によって設けられた評価基準を満たすと認められたMBAは、一握りです。
MBA国際認証は、AACSB、AMBA、EFMDの3つがありますが、日本国内での認証状況は以下の通りであり、複数の認証を取得している慶應と名商が国際的に質の高いMBAと認められていると、多くの人が認識しています。
・AACSB:慶應義塾大学大学院、名古屋商科大学、立命館アジア太平洋大学、国際大学大学院、早稲田大学大学院
・AMBA:名古屋商科大学大学院
・EFMD:慶應義塾大学大学院、早稲田大学大学院、明治大学専門職大学院
=============================
さてここまで、MBAの概要と日米における現状、ぼくがMBAに通おうと思った動機にお話してきました。
MBAの具体的な受験や授業、仕事との両立について書いていくとかなり長くなってしまうのと、MBAの概要と個別具体的な詳細では読まれる読者層も多少変わってくるように思うので、今回はここで一区切りにしたいと思います。次回もお読みいただけると嬉しいです!
MBAに関するお話は、明日11/30月にPodcastでも配信予定ですので、作業時のお耳のお供にでもしていただければと思います!!
https://t.co/3g5U7ZxdFJ?amp=1
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?