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Rain
2024年4月19日 22:39
「史緖里!」病室の扉を開くと同時に名前を叫ぶ。そこにはベッドの上に座り、何かを編んでいる史緖里がいた。「〇〇…ここ病院だよ、静かに」口に手をやる史緖里。声は震えていたがいつもの史緖里だった。「でも、どうして?」不思議そうな顔をする。遅れて来た美月が訳を話した。「ごめん、私が〇〇に伝えた」俯く美月に史緖里は優しく答える。「そっか。今まで隠してくれてありがとね、やま」
2024年4月19日 22:38
東東京大会準決勝。相手は3年連続代表校の初森第二商業高校。1点差で迎えた9回裏2アウト1、3塁に俺に代打が告げられる。いつものように打席に入る。1塁ベンチは全員が俺のヒットを祈っていた。相手のピッチャーが大きく腕を振る。タイミング良くバットでボールをとらえた。カキーンボールは高々と空に上がる。球場が一気に沸いた。パシッボールが辿り着いたのはレフトスタンドではなくレフトの
カキーン雲ひとつない青空に白球は勢いよく吸い込まれていく。ランナーが1人帰り、2人帰る。当のバッターは意気揚々と2塁ベースを蹴っていた。俺はベンチの中からそれを見ていた。悔しくて仕方なかった。幼かった記憶に強く刻まれたホームラン。それが俺が野球を続ける原動力でもあった。その試合は圧勝だった。俺のライバルは最終回のマウンドにも立っている。「ストラーイク!バッターアウト!」