マザー

私の母親は私が子供の頃からスポーツをやっていた。

とはいえ、学校にあるクラブチームに所属していた。、
言わばママさん〇〇というやつだ。
それでも私の母は本気で夕食後には筋トレを欠かさず行っていた。
実に健全である。
それもあってか本人は自分が家族で一番運動神経が良いと自負していた。

大学生の頃、いつものように自宅に帰ると夕飯を母親が作っていた。
私はリビングで母親としばし談笑した後、自分の部屋に戻った。

部屋でゲームをしていると突然
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
とリビングから叫び声が聞こえた。

何事かと思い、急いでリビングに行くと目の前で崩れ落ちた母親の姿が。
その姿の先に見えるのは画面の中央が真っ暗になった液晶テレビだった。
まるで野球選手が電光掲示板を壊したかのように。

私「なにやったの!?」
母「取り出した洗濯物のハンガーをテレビ横にあるハンガー入れに入れようと投げたら目測を誤って…」

テレビ横と言っても1m以上ハンガー入れは離れている。

かなり狂気を感じた。

テレビでは野球中継が流れていたが選手がアップになるたびに中央にできた真っ暗になった所と重なり全員写してはいけない放送禁止のような野球中継となっていた。

幸い、液晶テレビには2画面再生の機能がついていたため2画面にすることで左画面は壊れた部分とは重ならず見れたわけだがこのテレビは購入して1年も経っていないものだった。

当人はコントロールが自分はあるものだと思って投げたようだが大暴投であった。

父親が激怒していたのを今でも覚えている。
週末すぐにテレビを買いに行った。
しかし取り替え作業などもあるため1週間程は2画面モードで左側だけ見る生活をした。

そんな自称運動神経の良い母親は私の友人に会った際、
「〇〇の運転大丈夫だった?〇〇はウチでも運動神経が良い方じゃないから…」
と友人に話していた。

私は荷物を準備していたので聞き流していたが、家を後にした時友人から
「〇〇が家族の中で運動神経悪いってそんな感じしないのにね」
と言われた。

ウチは5人家族で私には姉が2人いる。私は小学校から高校を野球をやり続けた身だ。
大学だってソフトボールを齧っている。姉の1人はほとんど運動をしてこず、もう1人の姉も高校で止まっている。決してスポーツ一家という訳ではない。

それを込みで友人に話すと
「全然お母さんが言ってたのと違うじゃん!!なんかスポーツ一家なのかと思ったのに笑」と笑っていた。

母親は運動神経が私よりも良いと見栄を張りたかったのか。

そんな所も面白い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?