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足元を掬われて倒れた人へ

人生は不思議なものだ
ある時、思わぬことから
足を掬われることがある
倒れて泥だらけになって
初めは何が起こったか
さっぱりわからない

赤ん坊だったら
すぐに笑って起きるだろう
けれど、
生まれた時よりもおそらく
死ぬ時のほうが近いくらい
人生を旅してきた
わたしは
そうすることを
思いつけなかった

起き上がって
ひどいじゃないか
というと
再び、どつかれて
倒れる

何が起きたのだろう?
まだそのことが理解できずに
ひどいじゃないか
と、また立ち上がる
同じことがなんども繰り返されて

いつか、立ち上がることすらしなくなる
地面に転がったまま
ひどいじゃないか
ひどいじゃないか
それしかいえないロボットのようになる
ロボットには心がないかもしれない
けれど、
人には心がある

転がっているロボットを見るような視線
哀れだけれどこれはそういうものなのだと
認識されたような気がする
日常は過ぎ去っていく

立ち上がって
どうして?
と問う
するとまた
同じように衝撃を感じて倒れる
地面に向かって
涙をぽとぽと落とすことになる

どうして????

ひどいじゃないか
どうして?

その答えは全くどこからも
聞こえてこない

いつまでも
答えを待ち続けていたら

自分の体を起こす力も
なくなっていた

ひどいじゃないか
どうして?

それでも
虚しくつぶやくことしか
できない

わたしはそこにいて
いないものになる
わたしはそこにいて
不穏なものになる

かつてはそこにいて
楽しいものであった
かつてはそこにいて
役に立つものであった

ひどいじゃないか
どうして?

だれもそのことを理解できない
だれもそのことを知らない
だれも私の心が傷だらけであることを
知らない
知りたくない

そんなふうに傷ついた人が
もしこの文を読んだら
私は言いたいことがある

あなたがそうして
打ちのめされて
倒れている原因を
さがさなくていいよ、と

相手にそれを
やめさせようとか
あやまらせようとか
自分が何か悪いことをしたのだろうとか
考えなくていいんだよ、と

あなたがするべきことは
まず
頭をからっぽにして
呼吸を思い出すことだ

カラ元気を出さなくていい
相手の機嫌をとろうとしなくていい
気分をよくする努力をしなくていい
改善しようとしなくていい

自分のほうだけ見つめる
エネルギーを確保する
今、泣いて動けなくても
心配しなくていい

頭の中から
他人を追い出して
あなたが考えるべきことは
一つだけ

自分で立ち上がって
自分の行きたい方向へ
一歩踏み出す
というイメージ

すぐ、でなくていい
ただそれが実現できる
未来のために
自分のすべてを集中する

倒れたら、
立ち上がって
一歩踏み出す

踏み出せば
立ち塞がるのは
闇ばかりだろう

目の前に並んだ
全てのドアの後ろに
闇がある

あなたが進むべき方向は、
嘆きでも
怒りでも
恨みでも
憤りでも
復讐でも
死でも
祟りでもない方向

どこにそんなものがあるのかと
何度も逡巡したはずの
あなたにはわかっている
そんな道はないと
一つを除いて、、、

つまり、「許し」以外に道はないと
どんなにか許せなかったとしても
それ以外に進む方向はないと

だから「許す」と言おう
そして
脇目も振らずに
走り出せ

走って走って走って
そのうちに

あなたは
背中の翼を思い出す
飛べることを
思い出す

羽を広げて感じてごらん
空気の抵抗を感じてごらん
足の下に小さくなる現実を見てごらん








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