子どもを励ますことの難しさ
気づけばもう3月だ。
2月は娘にとってチャレンジの1ヶ月だった。
娘は3歳からピアノ教室に通っている。
すごく楽しそうに通っていて、ピアノの練習も、毎日ではないけれどがんばっていたと思う。
しかし!
昨年末くらいから、曲の難易度が顕著に上がり、それまでは少し練習すれば弾けたのに、なかなか弾けるようにならない。
目にも明らかに娘はスランプに突入した。
一度間違えただけで、すねる、泣くの癇癪を起こす。しまいには、弾く前から『きっとひけないからやりたくない』と言い出した。
『出来るまで根気よく練習する』
そうか、ついにその壁と立ち向かう時がきたのか。
わたしは娘に
『ママは娘ちゃんなら出来ると思うよ。だって今までだってそうやってたくさん練習して、弾けるようになったもん。』
『曲が難しくなってるから、今までみたいに簡単に弾けないのは、娘ちゃんだけじゃないよ。』
『最初から出来たら、誰も練習する必要ないんだから』
と、思いつく限り娘を励まそうとしたが、
『でもさ、できなくてイヤなんだもん!すぐにじょうずにひきたいの。できなくてくやしい。』
そう言って、娘はポロポロ泣いていた。
弾いてはすぐに癇癪を起こして練習ストップ、、、そんなことが何日も続いた。
『そんなに嫌ならもうピアノやめる?』と聞いたりもしたが、
『それはやだ!やめたくない!』とものすごい勢いで拒否していた。
しかし、『悔しいのは分かるけど、泣いてるだけじゃ弾けるようにならないんだから、練習するしかないじゃん』と言うわたしの理屈と娘の癇癪がぶつかり合い、
ピアノの時間がわたしと娘にとって憂鬱な時間になっていった。
そんなわたしと娘を見かねた夫がある日言った。
『楽しくないならやめてもいいと思う。でも、本当に好きで、弾けるようになりたいなら練習しないと弾けるようにならないよ。今日もこのまま練習しないなら、ピアノはやめなさい。パパ、明日先生にやめますって言ってくるから。どうする?』
えぇ!?それは強引じゃないか?!
とわたしは内心びっくりした。
娘は『やだ!やめたくない!』と泣いていた。
わたしはと言うと、夫の大胆な(強引な)発言により
娘の癇癪へのイライラがスーッと引いていくのを感じていた。
突如夫が「ムチ」の役割をかってでた形となったので、わたしは「アメ」となることになった。
さっきまでのイライラ声ではなく、優しい声で
『どうする?がんばる?』と聞きながら、しばらく娘の背中をさすっていた。
「今日、練習を再開しなければ、ピアノはやめる」とパパに突きつけられ、
泣く泣く娘は練習を再開した。
それからと言うもの、娘は本当によくがんばったと思う。
翌日も、うまく弾けずに投げ出したいのをグッとこらえているのが分かった。
でも、じょじょに弾けるようになるのが娘自身も嬉しいと感じているのか、
『ほら、昨日より弾けるようになったじゃん!』と言うと、
恥ずかしそうにはにかんでいた。
次第に自分でも、
『ねぇママ!ここまでできた!あしたもがんばる!』
と前向きに練習をするようになった。
そして、ついに両手で最後まで弾けた日、
『やった!やった!ねぇ、できたよ!』と娘は興奮してわたしに抱きついてきた。
その後トイレの中でも
『やった!できた!めっちゃうれしい!』とひとりガッツポーズをしているのが聞こえてきて、あぁ本当にうれしいんだなぁ、がんばれて良かったなぁと心から思った。
一時はどうなることかと思ったが、1つの壁を超えたのかな、と思う。
夫のあの発言には驚いたし、正しいのか間違っているのかもわからない。
「もっと違うかかわり方、声かけがあったのではないか」と今でも思う。
娘が本当にピアノが好きで頑張りたいのであれば、
あのような強引な言葉を言わずとも、もしくは違うコミュニケーションによって、娘が自ら奮起して練習するようになってほしかったとも思う。
だが、あの日まで、わたしはどうしたら娘の背中を押せるのか分からず、ただ毎日娘の癇癪に苛立つしかなかった。
結果的には夫の言葉により娘は奮起し、『やればできる』という自信を持つことができた。
娘に対して、日々今回のような「こういう時、どうしたら良いんだー!?」という壁にぶつかりまくっている。
正解なんてないのなもしれないし、何をもって正解というのかも難しい。ただ、今回のことを忘れずに振り返り続けていくために、ここに書き留めておきたいと思う。いつかまた、違った発見や気づきがあるかもしれないから。
※※※※※※※※
その後、娘とわたしは、練習がどうしたらもっと楽しくなるか話し合った。
そこで、100円ショップで娘の好きなカレンダーとシールを購入し、ピアノを練習した日にはシールを貼ることにした。
1月からスタートしたが、貼られたシールはまばらだっった。
それを見た娘が言った。
『ねぇ、2月はまいにちれんしゅうしたら、ぜんぶシールはれるよね!?がんばる!』
それから家族みんなが、『今日はシールはれるかな?』と、毎日楽しみにカレンダーを眺めていた。
ついに2月が終わった。 娘の2月のカレンダーはシールで埋めつくされている。
そして3月になった。娘のチャレンジはまだ続いている。
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