見出し画像

クリ金トワの舞台裏

 盛り上がりを見せているクリ金トワ。そんな風に略している人は見ないけれど。もちろんクリスマス金曜トワイライト。池松潤さんが企画された私設イベントであります。その総合大賞受賞作品の映像化というプロジェクトでナレーションを担当させていただくことになり、チームに参加することになったわけですが、いつの間にか映像もお手伝いすることになってました。

 この映像をバレンタインに合わせて公開しましょうというような話になったのがつい先日。絵を担当された猫野サラさんが前振りnoteを三本書きますよ、というような話になり、これが大いに盛り上がっているわけですね。わたしは当初、ナレーションの裏話と映像のメイキングみたいな話を、映像が公開された後で発表しようかな、と軽い感じで思っていたのでありました。

 そしたらどうですかこれ。

 これはサラさんが書かれた前振りの第二弾。

「女性だとばかり思っていた涼雨零音(すずさめれいん)さんが、実はイケボの男性だった!」という話でコメント欄が湧いたきのうのnoteは、もう読んでいただけたでしょうか?

 え? コメント欄?

 もちろん、ここでいう「きのうのnote」こと第一弾も読んでました。私が読んだ時点ではスキが10程度でコメント欄も特に賑わってはいなかったような気が。

  コメント欄コメント欄。

 ぎえぇぇぇ。大騒ぎになってるじゃないですかぁぁ。

(↑「涼雨零音ファンクラブ」ほいほい)

 ファンクラブ?いつの間にそのようなものが…。

 それにサラさんの前振りnote 自体がどう読んでもわたくし涼雨零音を推しまくるnote みたいになっている…。Twitter でもサラさんの前振り効果はありまくりで、映像作品への期待値爆上り中。同時に涼雨の知名度も爆上り中。

 うおぉ。全身から冷や汗が出て水芸みたいになってるぜ…。

 なんというか、プロジェクトそのものだけじゃなくてどうやらわたしの名前も盛り上がっているようなので、ここらでちょっとなにか書いたほうがいいんではないかと思った次第です。

わたしが吸い込まれた経緯

 サラさんがご紹介くださってますが、わたしはこのクリ金トワ(そろそろみんな慣れてきたはず)に、一応募者として参加したのでした。そして栄誉ある賞まで頂いたのです。そのため、総合大賞が映像化されるという話も読んでいました。作品募集時点のイベントの概要にはこんなことが書いてありました。

画像1

 動画編集者募集してます、と書いてあります。映画CM風の30秒のアニメーションを制作期間1か月で作る。しかもこの図、よく見てください。ピンクの部分は「やってもらう人を探している部分」となってますね。どれどれ。

仮編集
背景音楽選定
MA(音声編集)
本編集
動画データ完成(Youtube用に書き出す)

 …。ほとんど全部じゃん!!!

 要するにこれ、プランを考える池松さんと絵を描くサラさんしかいないということでは…。

 この時は、わたしはあくまでも作品を投稿する応募者としてこれを読んでいたので、この映像化大丈夫かなぁと、ちょっと他人事のように思っていました。以下わたしの心の声。

 もう11月だよ。年明けから映像制作をするなら年内にはスタッフをそろえる必要があるけれど、こんなに多くの工程のメンバーをあと1か月ちょっとで集められるんだろうか。でも池松さん顔広そうだし、声かける人はいるんだろうな。わたしが心配するようなことではないか。でもサラさんが絵を描くし、あんまりショボいことになってほしくないなぁ。
 30秒のアニメーションを一人で作画するとなるとそんなに動かせないだろう(ものすごい枚数を描く必要がある)から編集でなんとかするのだろうけれど、良くても紙芝居みたいになってしまうんではないか。サラさんの絵なら紙芝居でもステキかな。

 そして募集期間は終了し、受賞イベントにはわたしも出席して、前述のように賞まで頂いたのでした。

 イベントが終わり、参加したわたしたちはたぶん全員が、「あとは映像作品が出てくるのを待つだけ」という感覚だったでしょう。わたしもそうでした。

まだ巻き込まれない

 そんな具合にクリ金トワは一段落しました。一段落というか終わったような感覚でした。次の作品を書くぞ、という感じで、実際のところ、わたしはここから短編を一本書き始めました。

 動きがあったのは忘年会。皆さん参加されましたか? 仲さんの呼びかけで実施された、ものすごい人数が集まったオンラインの忘年会でした。話がそれますが、あのイベントをほとんどおひとりで切り回した仲さんには驚きました。わたしには完全に欠落しているスキルで、ほとんど魔法のようでした。

 そのイベントの中で、どういうタイミングだったかまったく覚えていませんが、池松さんに声をかけられました。酔っていたので正確な文言は覚えていませんが、「クリ金トワの映像化のやつ、サラさんと話していてナレーションなら涼雨さんでしょう、って話になったんで、年明けにDMします」といったようなことでした。たぶんクリ金トワとは言ってなかったと思います。

 そうなんですねエヘヘヘヘとか照れ笑いしつつその場は終わりまして、忘年会は夜も深まってお酒も深まって夢心地。

 翌朝起きたら全部夢みたいな気がしました。池松さんになんか言われたけど夢だった。うん。もう年末だあ。今年は自宅だあ。紅白だあ。聖子ちゃんだあ。

 そして年が明けました。

DMは本当に来た

 夢のような忘年会がどこまで夢だったのか現実の出来事だったのかよくわからない状態になってきたころ、池松さんからDMが届きました。

 ナレーションの話、本当だった。

 ナレーション担当として映像化チームに合流しました。今見返してみたところ、このDMは1月7日にもらっていますね。1月7日に映像化チームに合流し、状況の共有を受けました。メンバーは、池松さん、猫野サラさん、わたし。

 以上!

 以上? ほかには誰も…? いない? いない! いないじゃん!!!

 年明けから一か月で作るはずの映像作品。年が明けた時点で池松さん、サラさん、わたしの三名。

 おさらいしましょう。11月の時点で不足していたのは以下の部分でした。

仮編集
背景音楽選定
MA(音声編集)
本編集
動画データ完成(Youtube用に書き出す)

 年明けにわたしが入りました。ナレーション担当です。あれ、ナレーション担当ってそもそも募集されてないではないか。

画像2

 この図を見るとナレーション原稿とナレーション収録というのがあって、いずれも「相談して池松がやる+手配する部分」という識別になっています。あ、手配するということは確定ではないということだったのか。

 つまりわたしが埋めたのはこの青い部分で、ピンクのところは依然として未定のままであったのでした。これ完成しないのでは…。

 そう思ったわたしは控えめに立候補しました。ナレーションの収録は調整込みで自宅でできますし、映像の方もお手伝いできますよ、と。ピンクのところ、全部引き受けますよ、ということで。書いててどこが控えめなんだと自分で突っ込みを入れたくなりましたが、気分はけっこう控えめでした。

 取り急ぎ(という言葉がものすごくぴったりくる状況で)決まっていることが共有されました。池松さんがカフェで走り書きしたというアイデアコンテ。

 と、それをもとにサラさんが描かれたラフスケッチが二点。

思った以上にまずい

 アイデアコンテとは書きましたが、出てきたものはメモのようなもので、これを映像化するにはいったんコンテに起こす必要があります。しかしそのコンテが不在のまま、サラさんはもう絵を描き始めている。

 事故の予感しかしない…。

 さしあたりまず池松さんのメモを見てわたしが絵コンテに起こしました。絵コンテにすると画面のどこに何がどのぐらい映るのかがわかります。冒頭で紹介した池松さんのnoteで紹介されていますが、池松さんの書かれたメモでは絵のコマが正方形なんですね。これだと実際の画面でどのようなバランスで何が入るのかよくわからない。サラさんはそこからくみ取って16:9の画面サイズで絵を描き始めていましたが、映像がどういう流れになるのか見えないまま絵を描いてしまうと、例えば人物を左寄りに描くのか右寄りに描くのか、といったことの整合が取れなくなることがあります。それに、アニメーションとして動く部分がありますが、ガチで全部作画しなくてもうまく絵を描けば動かせる部分もたくさんありました。

 時間をかけて絵を描いてしまう前に、まずコンテを用意せねば。

 とりあえずメモに描いてあったタイム感と断片的な絵、それに口頭で伺ったアイデアを詰め込んで絵コンテを描きました。このコンテをチームに共有したのが1月10日。この時点でだいぶ映像としてどんなものになるか見えてきましたが、超慌ただしい映像でした。

 これ短すぎるのでは。

 絵コンテを見て完成の映像を想像するのは、特に時間の部分で慣れていないと難しいと思います。そこで、この絵コンテを使ってビデオコンテを作りました。Vコンテなどと呼ばれるものです。簡単に言うと、コンテの絵を使って実際の長さで編集したムービーのことです。この時点では仮のBGMとして用意されたものを使い、ナレーション原稿もいただいたのでナレーションも仮録りしてムービーにしました。

 ナレーションを入れてみると、さらに映像の長さが足りないことがわかりました。カット割りが目まぐるしくならないように伸ばし、ナレーションが全部入るように伸ばし、あれこれ調整して一分近い長さにまで伸びました。

みごとなチームワーク

 そこからの展開はすごかった。ものすごい勢いでした。コンテを詰めてタイミングをつかみ、カットのつながりなども映像として確認できるようになりました。そこから三人でアイデアを出し合って、カットの順番を入れ替えたり、絵の構図を変えたり、演出を考えたり。

 すべてのカットの絵が想像できたところで、サラさんに描いてもらう絵に関する指定をまとめました。カットごとに、どんな絵をどんなサイズで描いてほしいかをまとめて、Googleのスプレッドシートにしました。これを共有したのが1月11日。

 振り返ってみて驚いたのですが、コンテ書いて翌日にはここまで決まっていたんですね。要は、たった一回のミーティングで全カットの様子が一気に決まったのです。打ち合わせはDiscord でのテキストでのやりとりと、Zoom での音声通話で主に進めました。とにかく話が早い。わずかな言葉で多くの要素が伝わり、あっという間に形になる。打てば響くの連鎖。「こんな風に描いてください」と言うと、翌日には「描きました」と上がってきます。

 はえぇ。なんという早さなんだ。

 こちらの言っていることが120%伝わるので意図通りの絵が上がってきて、組み上げるだけでしっかり映像になるのです。話も早いし作業も早い。すごすぎるぅ。

こだわるところにこだわる

 なんでもそうだと思いますが、モノづくりに試行錯誤はつきものです。でも時間や予算は限られている。だいたい、できる試行錯誤の量には制限があります。でもこだわりたいところにこだわれないと不満が残ってしまう。

 そこで、わたしは今回これに参加するにあたって、試行錯誤しながら調整する余地をなるべく残す方法を考えました。今回の作業で一番重いのは絵を描くところです。なので映像ができた後、絵を描きなおすことだけは最小限にしたい。だからなるべくラフの状態でどんどん映像としてつながった状態を確認し、問題があれば清書する前にああでもないこうでもないとやりあって、「こうしよう」と決定してから時間をかけてもらうようにしました。

 これが映像の難しいところで、一枚絵で良さそうな絵でも、映像としてつないでみたら「もっとこういう方がよかった」とかいうことは発生しがちです。でも映像に慣れた人でないと、絵が映像の中でどんな風に見えるのかを想像するのは難しい。描いているサラさんにも、監督する池松さんにも、映像として音楽やナレーションがついて動いているものを見ながら完成を想像してもらうのが最適だろうと思ったわけです。そこで最初にコンテの絵で映像として編集したものを作り、あとはラフが上がってきたらラフをその映像に差し込み、線画が来ればそれを差し込み、完成が来ればそれを差し込みました。常に最新の状態で映像として確認できるようにして、なるべく早い段階で試行錯誤することにしたのです。

 そうこうしているうちにBGMの楽曲が決まり、ナレーションも何度か録りなおしました。映像は随時アップデートして常に最新で確認できるように。

 結局1分をちょっと超えるぐらいの長さに落ち着き、オリジナル版とアナザースカイ版という2バージョンが完成しました。映像が完成したのは2月7日。奇しくも、わたしがDMを受け取ってからちょうど一か月でありました。

 その後、公開に向けた展開について打ち合わせを行い、サラさんが前振りnote三部作を投稿しながら今日に至っているというわけでありました。映像は13日に公開される予定です。

 映像が公開された後で、サラさんが公開している原画がどのようにして映像になったのかのメイキングnote を書こうと思ってます。お楽しみに!!

画像3


いただいたサポートはお茶代にしたり、他の人のサポートに回したりします。