[映画]ビューティフル・マインド

 今夜のU-NEXTは『ビューティフル・マインド』。2001年の作品。

 これは実話を元にしたお話ということで良いのだろう。実在の数学者を描いた伝記映画ではあるものの、どうやら完全に事実に沿っているわけではないらしい。

 描かれているのはノーベル経済学賞を受賞した天才的な数学者、ジョン・ナッシュ。彼の大学時代からノーベル賞受賞あたりまで、半世紀近い時間を描いている。大きな映像的仕掛けがあるため、ここに書けることはほとんどない。これもまた、あれこれ読む前に本編を見てほしい作品なのだ。

 主演のラッセル・クロウが実に良い芝居をしている。大変難しい役だと思うけれど、最初に登場するシーンから存在感が強烈だ。この人物は最初からかなり風変りな人物だったようで、最初のシーンからすでに浮いている。彼はその頭脳を買われ、ある特殊な仕事に巻き込まれることになる。

 どうやら『イミテーション・ゲーム』に描かれたアラン・チューリングの話に似ている。天才を呼び出して軍事的な作戦の手伝いをさせるのである。

 しかし。ジョン・ナッシュの物語はそこから思ってもみない方向へと転がり始める。

 この作品は映画ならではの演出で観客を幻惑する。映像の持つ力が遺憾なく発揮されている。悔しいほどに。

 これ以上何を書いてもまた映画の仕掛けを避けて通る煮え切らない文章にしかならない気がしてきた。これもとにかく見てくれと言いたい。

 描かれている物語は事実をトレースしたものではないけれど、それでもジョン・ナッシュは実在したし、この作品は完全なフィクションでもない。

 ジョン・ナッシュは後年いくつもの賞を受賞し、数学史に名を残すような天才であった。でも彼の人生はきっと苦悩に満ちていた。映画の彼にはいくばくかの救いがあった。現実の彼にもそういう幸せが訪れたことを願わずにいられない。

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