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未来のナンバー 2000

 テンテケテケテケテケテケテケテケ
 テンテケテケテケテケテケテケテケ

 テンテケテーンテンテケテーン
 テンテケテンテンテーン

 テッテン!

 陰謀と破壊の渦巻く現代によみがえる正義の騎士

 じゃーん。ナイトライダー。

 古いわ。

「おいK.I.T.T.(キット)」

「はい、マイケル」

 なんつって。知ってますかナイトライダー。

 キット(K.I.T.T.)と呼ばれる人工知能を搭載した黒のポンティアック・トランザム。K.I.T.T.はKnigyt Industries Two Thousand、つまりナイト・インダストリー2000、通称ナイト2000。テンテケテーン。

 このナイト2000に乗って悪と戦うのがデビッド・ハッセルホフの演じるマイケル・ナイト。デビッド多しと言えどハッセルホフのインパクトはデカい。独特の語感でどこの人かなと思ったけれど生粋のアメリカ人らしい。この人がものすごい長身で(調べたら193cm)、大味なトランザムを振り回すわけですね。かっこいいんだなこれがもう。ナイト2000は人工知能だけれど人間以上に人間味があって愛着がわく。わたしがナイトライダーを見ていたのは小学生の頃。ナイトライダーはメカニックが女性で、なぜか第二期だけ違う人になった。その第二期に出てきたエイプリル・カーチスが好きだったなあ。かわいいなあと思って見ていた覚えがありますね。どんだけマセた小学生だよ…。

 なんでナイトライダーを持ち出してきたかというと、2000について考えていたからだ。ナイト2000の2000はなんだろう…。

 ナイトライダーが作られたのは1980年代前半。当時の夢がぎっしりつまったドリームカーとして、ナイト2000は作られた。当時の常識からは文字通り桁外れのコンピュータとして設定されたK.I.T.T. 1000メガビットのメモリを搭載している!と自慢していたが、1000メガビットって125MBで、今考えると「何もできないじゃん…」というメモリ容量だ。K.I.T.T. のように完璧な自動運転を実装するだけでも125MBなどでは話にならないというか、そもそもK.I.T.T. それ自体をロードできないなどということは想像のかなたであったろう。

 そんな時代に夢を込められたナイト2000の2000。この2000は、2000年のことではないかと思うのだ。もちろん文字通りの2000年ということではなくて、1980年代から見た未来という意味を込めて。未来からやってきたテクノロジー。未来を象徴するナンバー2000。

 その2000年はあっけなく過ぎ、今や2020年。ナイト2000の100倍のメモリを積んだPCが一般家庭にもあり、それでもまだナイト2000のような自動運転も、人工知能も実現していない。ハードウェアは想像をはるかに超えて進化したけれど、夢のソフトウェアは意外と遠かったということがわかった40年であったと言えよう。特に人工知能は、当時考えられていたような形のものはそう簡単には作れないということがわかった。この「できないということがわかる」というのは巨大な進歩と言える。

 この投稿のヘッダに使った写真はトヨタ2000GTだ。北海道ではチョコレートで有名なロイズの社長が持っていることでも有名だが、写真は東京はお台場のメガウェブに展示されているもの。この車は日本が誇る歴史的スーパーカーで、ボンドカーになったことで世界的に有名になった名車である。

 ナイト2000からさかのぼることさらに20年。1960年代にトヨタ2000GTは生まれた。2000GTの2000は排気量が2000㏄であることを意味している(が、一部2300ccのものが存在している)。

 当時の常識をはるかに凌駕するトヨタの2000GT。その2000は排気量という具体的な値であると同時に、やはり未来を象徴するナンバーでもあったのではないかと思うのです。だから2300ccのモデルも2000GTとしたのではないか(これは2300GTと呼ぶべきだ、とする人もいる)。

 未来のナンバー2000。コンピュータの世界では2000年問題なんてこともありました。コンピュータ内部の時計が2000年に対応できず、おかしなことになるという問題。コンピュータアーキテクチャの世界では2000年ってそのぐらい遠い未来で、そんな未来にまで今作っているコンピュータが使われるなどとは誰も思わなかったのでしょう。

 そんな遠い未来だったはずの2000年さえ今や昔。感慨深いというよりも、なにかキツネにつままれたような気がする。

 時は21世紀。21世紀生まれの人が成人するような時代になり、わたしたちは未来に夢を持てているのだろうか。もうなんらかのナンバーで未来を象徴することはないけれど、2000に託された夢のようなものは持ち続けていたいとおもう。

※この上まででジャスト2000字!

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