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D.I.Y. ~どれ、いっちょやってみんべ

 いくつになっても初めてのことというのはあるもので、ドキドキしたりドギマギしたりまどマギしたりしがちである。

 2023年11月25日。わたしは初めてD.I.Y. なるものに挑戦した。「どれ、いっちょやってみんべ」略してD.I.Y.。やって、みんべ。急に思い立ち、この日の朝起きるまでまったくそんなつもりはなかったのに、前の晩から荒れに荒れた荒天の結果一晩で大雪が積もり、べちょ雪が重すぎて雪かきを3分で諦めたわたしは、脈絡とか文脈とかコンテクストとかコンベックスなどを省略していきなり「どれ、いっちょやってみ」ることにした。

 このときコンベックスを省略した点については、あとで後悔することになるのだがこの時点のわたしはそんなことはつゆ知らず、ウキウキドキドキプリキュアのような心持ちでマイカーのハンドルを握ったのであった。


計画

 急に思い立っていきなりホームセンターへ行くという跳躍を見せたわたしであったが、実は何も計画が無かったわけではない。だいぶ誇張して構想3年(実際は3日)ぐらいの壮大な計画があった。

 殺風景な自室をなんとかすべく、と書いてみて「殺風景」という言葉はものすごいなと思うなどした。風景が殺されているのである。そこまでひどい事態なのかと自問しつつほかの言葉のほうが良いような気がしてきたけれどまぁ「さっぷーけい」とでもしておこう。そのさっぷーけいな自室をなんとかしたいという思いは常々あった。ついでに収納も欲しい。そこで、いま流行りの、もしかしたらもう流行ってないかもしれない「見せる収納」みたいなことを考えたのである。どうだ。我ながら思考の流れが正しすぎて不安になるほどだ。

 見せる収納ということでパンチングボードを設置しようと考えた。パンチングボードってぶん殴るための板かと思ったけれど穴が開いている板のことだった。

 で、我が家は持ち家であるからして、パンチングボードを壁に設置するにあたり、別に壁に直接穴をあけて設置しても構わない。構わないのだが、石膏ボードに直接打つのか、それとも裏に柱のある場所を探して打つのか、どちらかというと柱のほうがよさそうだと思いつつも壁裏の柱を探すには道具を用意しなければならず、面倒くさい。

 そこで賃貸でも使える2x4材(「ツーバイフォーざい」と読む。「にしがはちざい」ではない)を使う方法を調査した。

 まっさきに頭に浮かんだのはディアウォール。

 これだけは知っていた。賃貸でもこのやつを使えばアグレッシブな「いっちょやってみんべ」が実現するというアイテム。ディアウォールという名前がなかなか覚えられない。「なんか柱とか壁とかと仲が良い感じ」と覚えていて「柱、友達」などと検索して意味の分からない領域へ迷い込んだりした上でようやく発見した。

 他に類似のものとして「ラブリコ」と「ウォリスト」というのがある。基本的にはどれも似たような発想で、2x4材みたいな規定サイズの木材を床と天井の間に突っ張らせ、その柱に対してネジや釘を打っていろいろ作る、というDIYの強い味方なのである。

 ラブサイケデリコを略してラブリコかと思うがそうではない。いわゆる突っ張りポールのような仕組みで突っ張るタイプ。

 「グルミット」と続けたくなるような名前のウォリストは和気産業という会社の商品だがこのブランドの公式サイトが見つからない。和気産業のサイトにはウェブカタログとしてひたすら見づらいものがあるだけ。売る気あるのか!!

 どうやらこの会社はオンライン展開をアウトソースしたほうが良いのではないかと思う状況だが、ウォリストという商品はこの種のものの中で一番柔軟性が高く、かなりいろいろな応用ができる。

 で、ものすごく長くなったのだけれど、この手のやつをなんかしら使い、柱を立ててそこにパンチングボードを貼り付けよう、と考えたのであった。さらに、そのパンチングボードを挟んでガチャ棚をつければ、棚板もあり、パンチングボードもあるという夢のようなスペースが爆誕するのではないか、と思ったのであった。

一日目

買い物

 一日目。2023年11月25日(土)。午後からホームセンターへ出向いた。ホームセンターの2x4材のコーナーに行き、ラブリコとディアウォールを見比べる。なぜかウォリストだけ別の場所に置いてあり、資材コーナーで比較できるのはラブリコとディアウォールだけであった。現物を見ながら、見た目で今回はディアウォールのS(シンプルタイプ)というのを選んだ。

 これは必要な長さよりも45ミリ短い木材を用意しろ、と説明があったので、事前に計ってきたカウンターテーブルと天井の間の長さから45ミリ引いた長さを2本分、ホームセンターの工作室で切ってもらった。

 他に、この木材をペイントする塗料も併せて購入した。塗料は絵具でもお世話になっているターナー色彩のアイアンペイント。

https://www.turner.co.jp/brand/ironpaint/ironpaint/

 塗るだけで金属みたいになる塗料。すげぇ。ターナーの塗料は溶剤のにおいがあまりなく、乾くと濡れても大丈夫なのに水性という使いやすさである。ミルクペイントシリーズとアイアンペイントシリーズが超おススメ。この辺があれば仕上がりの満足度がとても上がると思う。

木材を買うときの注意

 木材はナマモノである。2x4などは規格材でサイズごとにごろごろ保管されているが、一本ずつ全部違う。当たり前なのだが、コンディションにかなりの差があるので、よく見て買う必要がある。ヒビが入っているもの、割れているもの、えぐれているもの、節目が多いもの、樹液がにじみ出ているもの…。完璧な一本などというものはほとんどない。許容できるレベルの傷を許容して買う必要がある。

下地処理

 買ってきた木材にサンドペーパーをかける。買ってきた状態の木材はあちこちささくれ立っていたり、表面が荒れていたりするので基本的にすべての面にサンドペーパーをかけたほうが良い。このとき、研磨ブロックみたいな道具を使うと削りムラを抑えることができる。

 サンディングガイドはいろんなタイプがあるのでホームセンターで見て選ぶと良い。今回わたしは硬めのスポンジのものを使用した。十分用が足りる。

塗装

 サンディングが終わったら塗装。ターナーのアイアンペイントを使って2x4材に色を塗っていく。たのしー。この色塗り作業が一番楽しかった。とにかくなんか塗りたい。柱は塗り終わったけどほかにも塗りたい。

 なお前述のようにターナーのDIYペイントは水性なので、使った直後に水で洗えば刷毛やヘラやその他の道具はきれいになる。なのに塗装面は乾くと耐水性になる。すごい。

設置…

 塗装を終えていざ、ディアウォールを装着し、目的の場所に持っていく。

…。…。

 短すぎる!!!

 ディアウォールは内蔵したバネで突っ張ることで柱を支える。なのにまったく長さが足りず、突っ張れないのである。

 なぜだ?

 ディアウォールの説明には、必要な長さより45ミリ短い木材を用意しろ、とある。45ミリの引き算は間違ってないはずなので「必要な長さ」が間違っている。

 あらためてコンベックスを取り出し、設置場所の、作り付けのテーブルから天井までの長さを計る。

 …。間違っていた。なんと25ミリも間違っており、わたしが買ってきた木材は目的の長さよりも70ミリも短い状態であった。どうしよう…。

 悩んでいても仕方がないのであれこれ放置してスマブラをやり、さっさと寝た。

二日目

リカバー案

 さて、全然長さが足りないという事態に至った初めてのDIY。すっきりと目覚めた脳みそで考えたら、いくつかの修正案が浮かんだ。

  1. ラブリコのアイアンというタイプだと-75ミリなのでこれを使う

  2. 買ったときに残った木材から25ミリを切り出し、柱を延長する

  3. 新たに木材を買う

 このような三択で考えたところ、なんと1よりも3のほうが安いという事態でまず1を却下。3は金額的には許容できるけれど今ある木材が完全にゴミと化すので却下。2で行くことに。

 ついでに、実際に設置する場所を改めて採寸し、パンチングボードやガチャ棚用の棚柱なども必要な長さを洗い出し、残りの部品を全部買いに行く。

買い物

 昨日と同じホームセンターへ出向き、まずパンチングボードを買う。この店のパンチングボードは半端な大きさはなく、910mm x 1820mm という巨大サイズ。1820mmってわたしの身長なんですけど…。この巨大なパンチングボードが3500円程度で、前の晩にネットで調べたところ、オンラインで買うものよりもはるかに割安であることが判明。なのでこの巨大なやつを買って切ってもらうことにした。

 必要なサイズは900x450ミリなので、誤差を許容して四等分してもらった。さしあたり使うのは1枚なんだがまぁあればあったでまた使えるでしょう。

 他、ガチャ棚用の柱と棚板を取り付ける部材を1枚分だけ買う。棚板は後で増やす想定で、ひとまず1つだけ作ってみることに。いきなり複数枚分を買ってサイズが気に入らなかったりしたらアウトなので1つ試してみるのである。常に「いっちょやってみんべ」の精神。後のことは後で考える。

支柱の延長

 あれこれ買ってきて帰宅。まず最初にやるべきは長さの足りない支柱をなんとかする件。

 25ミリに切ってもらった2x4材を接着剤で柱に接着する。

 この接着剤マジですごい。柱側、継ぎ足し部材側、両方にこのボンドを塗布し、「貼り合わせる前に乾かす」。ここがポイントで、このG10というボンドは「塗って貼って乾かす」のではなく、「塗って乾かして貼る」という順番。

 これを間違って、塗って貼ってしまってからしばらく様子を見ていたのだけれど、1時間ぐらい置いても全然乾かず、ねばねばした状態のままだった。箱を読み返して使い方を間違っていることに気づき、あらためてはがした状態で10分乾かす。10分後にくっつけ、上から木槌で軽くたたく。

 するとどうでしょう。フルパワーで引っ張ってもびくともしない。なにこれ、マジで? とんでもねぇ接着剤だなこれ。さすがボンド。

 貼り付けた状態で境界部分含め新たに継ぎ足した部分にサンドペーパーをかけ、表面を滑らかにしてから塗装する。この接合部分はディアウォールの足元側の部品の中に隠れる部分なので多少差があってもわからないし、なんなら色を塗ってなくても見えないのだが、単にこの色塗りをやりたいので塗っておく。

パンチングボードの塗装

 続いてパンチングボードにも塗装。こちらは同じアイアンペイントの別の色で塗る。楽しすぎる。ずっと色塗りしていたい。柱はアイアンブラウンという色で塗ったところあまり金属っぽく見えないのだけれど、パンチングボードはアンティークゴールドという色にしたので幾分金属感が得られた。これは楽しい塗料ですね。おススメです、アイアンペイント。ターナー色彩。

 なお、ターナーのU-35 というアクリル絵の具を普段愛用してます。こっちもおススメ。

設置

 エクステンドした柱は目的の場所にぴったりハマった。素晴らしい。一応水準器で垂直を出して二本とも設置。

 そこにパンチングボードをあてがい、ねじ止めする場所に下穴をあける。パンチングボードも水準器で垂直、水平を出し、仮穴を開けておく。

 パンチングボードを浮かせるためのスペーサーみたいな部品(専用のものが売られている)を使って2x4の柱にねじ止めする。パンチングボードをガイドにしてガチャ棚の棚柱もねじ止め。

完成

 かくして、2x4材とディアウォールを使用したパンチングボード+ガチャ棚の「見せる収納」コーナーが完成した。

とりあえず設置につかった電動工具をかけてみたりなんかした

 いろいろあったものの、なんとかこのような状態に。実は棚板を金具に固定するビスを買い忘れたので、今この棚板はのっかってるだけの状態。ビスを買ってきて固定せねばならん。あと2つぐらい棚板あってもいいかなと思うのでその辺は追々部品を買って来ようと思う。

感想とこれから

 いわゆるDIYからすれば今回作ったものは初歩中の初歩なんだけれど、これを作るだけでもいろいろと発見があり、そもそも部品の買い方や必要なものの洗い出しなどでもわかったことがたくさんあった。何事もやってみないとわからないことはたくさんあるのでやってみるのは大事だなと改めて思いますね。

 一番の発見は、DIYをするというのは決して安くはない、ということ。考えてみれば自作パソコンと同じような話なのだけれど、どうも市販品を買うよりも自分で作った方が安く上がるのではないかと思いがちなのよね。実際は、市販品は大量生産することで価格を抑えることができるため、部品を買ってきて自分で作るというのは決して量産品を買うよりも安くはならないことが多い。

 でも自作することによって、自分のニーズにピッタリ合致するものを作ることができる。この辺も自作パソコンとDIYは似ていると思う。自分に必要なものをカスタムメイドで作る。「買った方が安い」という言葉をシュレッダーにかけ、部品代も手間暇も盛大にかけて何かを作る。それはとても楽しいのだと再確認した。

 というわけで急に思い立って始めたDIY。今後も何かしら作っていこうと思う。さしあたり今回のと同じ大きさのパンチングボードがあと3枚あるんで、どっか別の場所にもこれを設置したい。

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