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[小説]月見そば #呑みながら書きました

 部屋に戻るとおれが酒を呑んでいた。
「お。帰ってきたのか」
 おれが言った。
「何をしてるんだ」
 おれが聞くと、おれは酒を呑んでいるんだと答えた。
「ところで例のあれはどうなった?」
「あれというのはどのあれだ?」
「あれはほらそのこれのあれだ」
「ああ。照れメンスがネコタングしたやつか」
「そうそう。インジョアしたドミニクスがめたらしたあれだよ」
「あれなら立花がたばらしたはずだ」
「そうか。それなら安心だ」
 酒を呑んでいるおれがもう一口グビリとやって言った・

 おれはコンピュータを起動した。見覚えのないOSが起動して見覚えのない画面が表示された。なんだったかなこれはと思いながらログインIDを入力する。IDもよくわからないが指の動くままにタイプした。パスワードを求められたけれど知らないので適当に打ってみた。
 なにを入力したかはわからないが画面は転換して新たなものが表示された。おれは手慣れた様子でマウスを操作し、白い画面を開いて文字を入力し始めた。おれの手がキーをたたくと画面に文字が表示される。

てまねきのしわよせがあさってにおとずれる

「なんだいそれは」
 おれは聞いた。
「詩だ」
「詩か」
「詩だ」
「何を表してるんだ?」
 おれが聞くと、おれは嫌な顔をした。
「詩だぞ。そんなことは読むやつが決めたらいいんだ」
「そうか」
 おれは妙に納得した。
「その詩はチミリタブなのか」
「たぶんな。チミリタブでラミネティブだ」
 そうなのかとおれはわかったようなわからないような気がした。
 しからずんばよし。君が代は千代に八千代に千代田区の、向こう三軒両隣。魍魎をどうしようかな。もうどうしよう。

月見上げれば叢雲の ケツの穴にも福来る

 701号室のおとなりに702号室がある。世の常だ。

「そういえばむかし、おれの友達のバンドが歌っていたよ。

しあわせのしわよせはしあさって

って」

層かそれは天才だとおれは思った。指先がおぼつかない。目が閉じてきた。My love forever。こめかみが脈打っている。俺は天才だとそれは思った。

明日見た空があさってを繰り返した。そこはおれのあしたが昨日を呼び覚ましたおとといで、みたらしの三行半が降り注いだ向こう側だった。ソリッドステートなめさぶぎーがドラマチックに蘇る。見事だ。

トランジスタのレコンギスタがクルクルパーになったような気がする。それはこれだ。喪服に包まれた淑女のざわめき。挑む。サミングがアジャイルなミサイルだった。おれの粗相が明日に居残った。

とここまで書いて失敗に気づいた。仕切りなおすには遅すぎるのだが仕切りなおす。

 朦朧としてる。もうどうしよう。

ホームポジションに立ち返ってみたときに、あさってのあしたが昨日を連れてくるのだ。見境のない境目が見える。瀬戸際だ。

おれとおれの会話が続いているのか終わったのか始まっていなかったのかわからない。わからないということだけがわかる。酒ってこわいね。つもりつもって悪しからず。明日は我が身とすべからく。いろはにおえどちりぬるを。


ある。ある晴れた日に。おれもおれとて俺頼み。戻れた気がする。今おれは向こう側。いばらの道も一歩から。はじめの一歩がちりぬるを。いいのかなこれで。いいのだろうこれで。

あしたもミサイルが勃起すると思うのだ。ミサンガのトレンドが見誤った。あしたのおれもそびえたつ。そそり立ったが吉日。今それがしの礎に。ちょっと小癪な舌先三寸。得も言われぬは明日の風。

----ここから追記(6月20日朝)

《了》

 音声確認したら「了って書かないと終われない」とか言ってるのに書かれてなかったので書いておく。

 でもって、告知note貼り忘れてたのでここに。

 で、音声をスタエフに公開。映像はあとで編集してアップするかもしないかも。

後編の動画もアップしました。

※音声はキーボードの音を収録する効果音用のものとナレーションを録音する音声用のものを使ってますが、スタエフの方は効果音用のマイクに入った声を使っている(のと、スタエフ側で音声の自動処理が入る)のでYoutube のほうが音が良いです。

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