2022年09月北海道録音取材記 ~Day5 鳴かない羊を鳴かせるために。キーワードはベエベエベエベエ!
みなさんこんばんわ。レヱル・ロマネスクシリーズの原案、シリーズ構成を勤めます、進行豹です。
取材4日夕方までに重要録音のほぼすべてをクリアできたわたくしと町田さん。
しかし、最後に残されたひとつ。
「羊の鳴き声」ばかりは、どう工夫しても録音することが叶いません。
しかし、幸いにして今夜のお宿、ファームイントント様の
そしてその母体である松山農場様の
オーナーさんからは
「録音に関してできることがあれば協力します」
との旨のお言葉を、取材許可申請のときに頂戴しておりましたので――
空前絶後、非常に美味しい、今まで食べてきたジンギスカンの概念を変える、まったく臭みなんてもののない羊肉――
『ホゲット肉』の、一人あたり300グラムもあるジンギスカン中心のお夕食をいただきながら
わたくしたちは、オーナーさんに
「羊をなんとか鳴かせていただけないでしょうか?」
とお願いしました。
「生き物なので鳴くかどうかの保証はできませんが、やってみましょう」
との旨のお返事を頂戴し。
安心して眠りに落ちて迎えた朝。
取材最終日=5日目の朝は、生まれてはじめて聞く呼びかけに、起こされる朝となりました。
「ベエベエベエベエ!」
早く、低く、勢いのよいその呼びかけ――
かなり独特のその呼びかけは、『羊たちを呼びよせるためのもの』
らしいのです。
……羊といえば、めー、めー、と、むしろ甲高い声で鳴く印象がございます。
(なのにその呼び声?)
と、わたくしの脳裏に浮かんだクエスチョンマークはしかし、一瞬にしてエクスクラメーションマークへと変貌を遂げます。
実際に羊が集まっている! のです。
そして集まった羊たちを前に、オーナーさんが餌のバケツを掲げると――
「メーーーー」
「メエエエーーーーー」
と、羊たちが大声で鳴き始めるではありませんか。
――聞いた瞬間、ベエベエベエベエがベエベエベエベエである理由をわたくし、理解しました。
ここにいる羊たちの声は非常に野太い――中年男性そっくりのものであるのだ、と。
「中年男性声優さん30人を集めたら、羊の群れの鳴き声を完全再現できますね」
思わず浮かんだアホな空想を町田さんに伝えたところ、それきっかけでございましょうか?
特別に、羊小屋も見学させていただけることとなりました。
「めーー」
「めえーーーーー」
「めいっ」
……にぎやかで、野太い。
なかなかレアな音環境にレコーダーをまわしっぱなしにしながら、羊の育成について、オーナーさんにお話をお伺いいたします。
・日本の羊の毛は、刈っても商売にならない。ニュージーランドウールとかが量・質・価格で圧倒している
・ので、うちで育てている羊は食肉用
・その辺の大きな羊が、もうすぐ食肉用として出荷されるこたち
――とのことです。
昨日の素晴らしく美味しいジンギスカンは、この子たちの一個前の先輩たちのお肉だったのだな……
そう思うと、あらためて食への感謝が湧いてきます。
ちなみに、松山農場さんで食肉にされる羊の肉は「ホゲット肉」と呼ばれる、生後12~24ヶ月のものだそうです。
12ヶ月未満がラム。
24ヶ月以上がマトン。
その中間となるホゲット肉は、ラムの柔らかさ、マトンの深みの両方の長所をバランスよく備えたお肉だそうです。
実際現地でいただいたホゲット肉は素晴らしく美味しかったので、もしもご興味ある方は、ぜひ!
松山農場さんのオンラインショップ
で、そのお味を確かめてみてください。
わたくしもつい先日オンラインショップがあることに気づき購入したので、
通販肉も実食したら、ツイッターかなにかでリポートさせていただきます。
さてさて。
羊たちの鳴き声という、最終重要録音物の録音を終え。
たっぷりとお話をお伺いすると、帰りの飛行機までにはあまり時間が残されていません。
空港前の帰り道にあった、当麻鍾乳洞は残念ながら洞内放送が流れっぱなしで録音不適。
空港付近の公園も、航空機や自動車の音が入り込んでしまって録音不適で――。
最後のボーナストラックを録音することこそ残念でしたが、
同行くださった町田勇哉さん
のおかげで、必要十分な録れ高を確保することもできる録音取材となったことは、本当に幸いだったと感じております。
町田さんが、そしてわたくしがどのような音を録ったものか。
その一番美味しいところは、
『蓄音レヱルシリーズ』
のような、バイノーラル/ASMRコンテンツとして、みなさまのお耳にお届けできるときがやってくることかと存じますので、
どうぞのんびりめにご期待、お待ちいただけますと幸いです。
と、いったところで、2022/09月に実施いたしました、北海道録音取材の取材リポートを終わります。
最後までお読みくださり、まことにありがとうございました!
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『羊飼いすずしろ』
(あらすじ)
羊飼いの少女を演じることになったすずしろ。
純朴で穏やかなイメージに浸り、軽快な演技を重ねていたところ、
思わぬところで音響監督からのリテイクがかかるのでした。
(登場レイルロオド紹介)
「すずしろ」(万岡鉄道C12 67専用レイルロオド)
<出身> 旧帝鉄出身 製造は陽立製作所傘戸
<所属路線> 万岡鉄道 万岡線 (霜館駅~持木駅)
<能力・性格> ごくごく平凡なC12レイルロオドとして製造され、ごくごく平凡だが堅実な乗務を重ねていた。
九洲で4年ほど走った後、鎌石を経て蒼森に転属したが、ここで一大転機が訪れる。
THK(帝政放送協会)の朝の連続ドラマ小説の主役機に、すずしろのC12 67が抜擢され、
蒼森を北開道に見立てたドラマ、『すずしろ』の放送が開始されたのである。
主人公である機関士に忠実につかえる健気なレイルロオド『すずしろ』は当初、人間の女優が演じていたのだが、その女優の急病により、急遽本物のレイルロオド、すずしろ本人が代役を務めることになった。
女優の演技の鉄道監修を務めていたすずしろの様子をみていた監督が「演れる」と判断しての大抜擢に、すずしろの秘められていた才能が開花。見事に最終回までの代役を務めきる。
それにより、南のハチロク、東のラン、北のすずしろ――と評されるほどの大人気レイルロオドの座へとまつりあげられる。
本人はスター気質では全くないのだが、とにかく演技力が素晴らしいので、もとめられるまま、ドラマの中の『すずしろ』像をファンの前では演じつづけている。
本質的には水回りのお掃除が大好きなあまり、給水装置工事主任技術者ならびに下水道排水設備工事責任技術者を独学で取得してしまうような、ややマニアックを性格そしているのだが、同時に、見かけによらず恐ろしく肝が座っていて、逆境に強い。
ので、レイルロオドたちが集まるような場では(その人気もあいまって)リーダー役を期待されることも多く。そしてすずしろは、役ならばどんなものでも、見事に演じきってみせる。
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