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ソ連軽戦車発達史・外伝・コムソモーレツ その2

◆「コムソモーレツ」の構造
 「ピオネール」「ピオネールB2」の開発を受けて開発された「コムソモーレツ」は(シュティコフ車はなかったものとして)、「ピオネールB2」に準じる構成となっていた。車体は前方から変速機区画、操縦区画、エンジン区画が前後に並び、エンジン区画上が兵員室となっていた。「コムソモーレツ」を半装甲牽引車というのは、変速機区画、操縦区画、エンジン区画が装甲板で覆われているからである。ただし、兵員室が無装甲だから「半」なのだ。
 装甲防御力は、対機関銃防護である。これは本車の性格からも十分なものだろう。戦車代わりに使用しようとすれば不十分なのは明らかだが、それは使用法を間違った方が悪い。車体は10mmないし7mmの圧延装甲板で構成されている。組み立ては鋲接ないし溶接接合で、これは生産時期によって異なる。これについては後述する。さすがクリスティ戦車の国(もともとはアメリカ製だが)、各装甲板は良好な傾斜面で構成されている。もっともこれだけ薄いと効果もたかがしれてるとは思うが。
 変速機区画は車体前方に突き出すようになっており、内部には変速操向機構が収容されている。車体外側には左右に起動輪が配置されている。そして左右履帯部を覆うように、フェンダーが取り付けられている。フェンダーは前端部が湾曲し、後述の装甲キャビン端までゆるやかに下がる(というかキャビンが後ろに行くに従い上下幅が拡大しているのだ)。車体前端左右には板に丸い穴を開けた、牽引具取り付け部がある。
 操縦区画は、車体上構部に立ち上がるように完全密閉式の装甲キャビンが設けられている。なんといっても、この装甲キャビンを持つということが、ただの牽引車ではない、「コムソモーレツ」の肝と言っていいだろう。キャビンは前後より左右が長い、フェンダー端いっぱいまでの幅を持つ箱型で、前左右は傾斜面で構成されている。兵員室の前壁ともなる後面は垂直である。 内部には操縦手と機関銃手の2名の乗員が収容される。操縦手は左側、機関銃手は右側である。キャビンの上面には、左右に並んで操縦手と機関銃手各々用の乗降用ハッチがある。ハッチは長方形をした一枚板で、蝶番によって後方に開く。ハッチは掛け金で内側から固定される。さらに鍵をかけることができ、ハッチ前寄りには各々鍵穴がある(操縦手用はやや左寄り、機関銃手用は中央)。
 車内から外部を視察するため、操縦手前面および、左右側面には開閉式の、長方形をした視察用フラップが装備されている。フラップには閉じたときに使用する、視察スリットが設けられている。スリットは、「コムソモーレツ」の第1シリーズでは、文字通り筒抜けのスリットだけだった。しかし、その後生産された第2、第3シリーズでは、トリプレックス三重防弾ガラスが追加されるようになった。
 両者の差は外側からでもわかる。第1シリーズでは、中央部が四角形に一段へこんだようになっているのだ。第1、第2シリーズともに、3つの視察フラップはすべて同じ物(第1、第2でものは違うが、各々の間では)だった。しかし、第3シリーズでは操縦手前面のフラップだけ、若干構造が変更されていた。これはさらなる防御力の強化のためで、スリット部分の内側に、トリプレックスの前にもう一枚スリットの開いた装甲板を挟んだような形式になっていた。

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