世界の武勲艦 3 軽巡洋艦「シェフィールド」と極北の海戦

◆軽巡洋艦「シェフィールド」
 1935年1月31日、軽巡洋艦「シェフィールド」はヴィッカース・アームストロング社ニューキャッスル造船所で起工された。イギリス海軍が1930年代半ばから終わりにかけて建造した、タウン級軽巡洋艦の中でも最初のグループ、「サウザンプトン」級の1艦である。「サウザンプトン」級は5隻が建造され、さらにその改正型として「グロスター」級が3隻、そして「エジンバラ」級が2隻建造された。すべて町の名が付けられているので、タウン級と称される。
 イギリス海軍は海軍軍縮条約の締結後も、日米とは少し異なる巡洋艦、とくに軽巡洋艦の整備を行って来た。それは、植民地警備の必要から、比較的小型の巡洋艦を多数建造したのである。しかし、日米が条約制限いっぱいの大型で強力な軽巡洋艦を建造したことで、さすがに方針転換を迫られた。こうして建造されたのが、タウン級であった。
 その前に「アリシューザ」級は、5インチ砲連装砲塔3基6門(「パース」級でも4基8門)という軽武装であったが、「サウザンプトン」級では初めて5インチ3連装砲塔が採用され、それを4基12門装備することになった(「エジンバラ」級ではさらに4連装砲塔にするつもりだったという)。防御力も強化され、排水量はこれまでのイギリス軽巡より一回り大きな9000トンになった。
 5隻はほとんど並行して建造され、すべて1937年中に就役した。「シェフィールド」の進水は1936年7月23日、1937年8月25日に就役した。船体形そのものはこれまでのイギリス巡洋艦と同じく長船主楼形で、全長、全幅、深さともに一回り大きくなっている。舷側装甲は114mmに強化され、機関区画の配置が分離される等、防御力に配慮されていた。ただし、砲塔は25mmの弾片防御のみだった。
 主砲は50口径152mm砲で、3連装砲塔4基12門を、前後に2基づつに背負い式に配置している。魚雷兵装は53.3cm3連装発射管2基を、艦中央部に装備する。航空兵装は艦中央部の2本の煙突間に置かれ、艦の左右90度方向に向けられたカタパルトが備えられ、水上偵察機は3機を搭載していた。高角砲として10.2Cm連装砲4基8門を装備、さらに2ポンド4連装ポンポン砲2基を装備していた。機関出力は75000馬力で、最大速力は32ノットであった。

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