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【財務分析】はオーダーメイドで

税理士や銀行員が、
財務分析として、色々な指標を見せてくれることがあります。
これらの指標の計算式は非常に良くできたものですが、
我々、中小企業の決算では、ひと工夫必要な場面が多々生じてきます。

今回は、
財務分析にひと工夫を加えて実態を炙り出した事例をご紹介します。



財務分析とは

財務分析は主に4つの種類に分類できます。

①収益性分析
 売上に対してどのくらいの利益が獲得できているか見るもの。
②効率性分析
 資産を活用して、どのくらいの売上が獲得できているか見るもの。
③安全性分析
 資産と債務のバランスを見て、財務の安全性を見るもの。
④成長性分析
 売上高や利益や資本の伸び率を見るもの。


①収益性分析 A社の場合

売上高に対する経常利益の割合
売上高に対する人件費の割合

A社の収益性分析です。
売上高対経常利益率売上高対人件費率の推移を表にしてあります。
5年間通して、売上は減少傾向のようです。
A社の役員は創業者兼株主兼社長のみです。

X期には、人件費が大きく減少して、利益率が改善しているようです。


しかし、ひと手間加えると実態は真逆であることがわかります。

売上高に対する経常利益+役員報酬の割合
売上高に対する人件費(役員報酬除く)の割合

A社は、5年間続く減収を受け、X期に役員報酬の減額を決めました。
役員報酬について、売上高経常利益率、売上高人件費率に調整を加えます。

経常利益に役員報酬を加算してみると、
X-2期以降、利益率は下がり続けていることがわかりました

人件費から役員報酬を減算してみると、
X-1期以降、売上高に対する人件費は増加していることがわかりました。

教科書通りの計算式ですと、
X期に改善が見られたかのようでしたが、
企業の実態に合わせて、計算式を変えてあげることで、
より確かな数値を見ることができました

A社の収益性分析からは以下のことがわかります。
・売上減少傾向。
・物価高騰に伴い、一人あたりの人件費は増加傾向。
【対策】
今の人員で売上を伸ばす
人員配置を最適化する。
このような計画が必要になることがわかります。



③安全性分析 B社の場合

固定資産の購入資金を自己資本と長期借入金で賄えているか

B社の安全性分析です。

固定長期適合率と言う指標です。
固定資産を取得する資金を自己資本と長期借入金で賄えているか
検証する指標になります。

B社は、4期通して固定資産の残高が自己資本+長期借入金を超えています。

この状態では、
本来運転資金融資であるものを使って、あるいは仕入先への支払を遅らせて
固定資産を購入している懸念があります。

この状態では、必要な現預金の調達が思う様にできず、
資金繰りに窮する事態となることが予測できます。

流動負債を払えるだけの流動資産があるか

こちらは、流動比率と呼ばれる指標です。

流動負債とは、基本的に1年以内に支払が求められる債務を指します。
流動資産とは、現預金などすぐに支払に充当できる資産を指します。

流動資産に対して、流動負債が大きい状況になっており、
固定長期適合率の際に予測した通り、資金繰りが困窮気味です。
会社としては運転資金の融資を受けたい状況ですが、
金融機関としては、融資しづらい状況です。

実は、こちらも調整が必要になります。
この会社、多くの固定資産をファイナンスリースにて調達しています。
期間は5年や7年など様々ですが、それらのリース債務がすべて流動負債に計上されてしまっていました。
こちらを是正すると、

固定資産の購入資金を自己資本と長期借入金で賄えているか
流動負債を払えるだけの流動資産があるか

固定資産の調達は、
自己資本と長期借入金とリース債務にて賄えていることがわかりました。

流動負債を払えるだけの流動資産を有していることもわかりました。

但し、流動比率は減少傾向にあり、現預金を増やす計画が必要であることが見えてきます。


おまけ ②効率性分析 B社

総資本の何倍の売上を計上できているか

B社の効率性分析です。

総資本対売上高と呼ばれる指標です。
総資本を活用して総資本の何%の売上を生み出せているか見る指標です。

B社の事業は固定資産を稼働させるほど売上を伸ばせる事業なのですが、
X期には、固定資産の増加に比べて、
売上の伸び率が落ち込んでしまっています。

実は、X期には土地を購入しています
B社の事業では、土地は売上を生みません。
地代家賃が減り、経費は改善されるものの
資産の多くが土地に固定されてしまうことになります。
土地を買った分だけ、
売上を生む固定資産が買えませんし、
手元現預金は少なくなります。
資金調達余力も減少します。

利益率の改善ももちろん大切ですが、
固定資産の投資には、
自己資本(これまでの利益の合計)に見合った投資か、
資金調達余力に見合った投資か、
こちらを事前に検討していく必要があることがわかります。


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