あのような足音の男にはまだ会ったことがない

暗い道を歩き、2度目の脇道に入る。そのように指示されたからだ。あとは、ただまっすぐ進めばいい。そのように聞かされている。後ろからついて来る人は気にしなくていいと言われた。

履き潰した靴の汚れが暗さにまぎれている。それで少し心が落ち着く。コートは新しく買ったものだ。髪は切らなかった。容姿については特に言及がなかった。髭が伸びているがそのままにしてある。

目印を見つけ、階段を上がり、ドアを開けた。中には誰もいない。机があり、その上に紙がある。文字が書かれているようなので、近づいてみる。ここから先のことは聞いていない。部屋のドアを開けて中に入ることまでは指示された。そのあとのことは、そのあとで、ということだった。

その紙に書かれていることが次の指示とは限らない。だが、その紙に書かれている文字を読むことは自然なことに思われた。しかし、紙に書かれた文字は私には読めなかった。

とりあえず、ここで待っていればいいのだろうか。椅子がある、しかし座るのはためらわれた。しばらくこのまま待っていようと思った。30分、いや1時間ほど何も起きなければここを立ち去ろう。

さっきまで後ろを歩いていた人は関係のない人だったのだろうか。足音からすると女のようだったが、後ろを振り返ったわけではないので確かではない。だが、あのような足音の男にはまだ会ったことがない。

私は、今すぐこの部屋を出て、そのおそらく女であろう人物を追いかけたいと思った。

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