諸国民の富 1187p

|確実であること|

各個人が支払う義務を負う租税は,確実でなければならない.つまり恣意的であってはならない.支払時期,支払方法,支払金額のすべては,貢納者にも他のあらゆる人にも,明白で平易なものでなければならない.さもないばあいには,租税を課せられるあらゆる人は多かれすくなかれ徴税人の思いのままになる,すなわち,徴税人は,自分の気に食わぬ貢納者には租税を加重するか,またはこういう加重で脅かして贈物つまり役得を強要するか,そのいずれかするのである.課税が不確実だということは,本来人気のない階級の人々の尊大さをつのらせ,腐敗を推奨するものであって,こういう人々が尊大でもなく腐敗してもいないなあいでさえそうである.課税においては,各個人の支払うべき金額が確実に決まっているということはきわめて重要な問題であって,あらゆる国民の経験からわたしが信じるとことでは,よほど程度の不公平があっても,ごくわずかな程度の不確実さにくらべれば,ことによるとあまりたいした弊害ではないほどである.

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