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【アイデンティティー×デザイン】想いをカタチにするブランドストーリーとは の感想

今日はこのウェビナーに参加しました。ReDesignerのイベントSocial Impactシリーズ「コミュニティ」「働き方」「地方創生」「アイデンティティー」の4テーマのうちの「アイデンティティー」のお話です。

登壇者は kern のタカヤオオタさん・木村石鹸 代表取締役社長の木村 祥一郎さん

感想

ブランドづくりにおける葛藤について、タカヤオオタさんのお話が特に印象的でした。以下要約です。

例えばロゴが大きく主張する何かを自分自身生活する場に置きたいかというとそうではない。きっと実際に商品を使うお客さんも同じ。ただ、それを第一に考え生活に溶け込むデザインを作ったとしてクライアントが納得するとは限らない。売り場での訴求を考え「もっと目立つ色を使って欲しい」「ロゴを大きくしてほしい」などの意見が出るのは自然なこと。また提案においても説得力に欠けてしまう面があるかもしれない。

タカヤオオタさんのお話から

非常に難しい問題だと思いました。

木村さんはこれに関連して「自分が作っていると気がつかなくなってしまう」という課題にも言及されていました。作り手の思いや作ること自体に意識が向いてしまい、実際に使われるシーンまで考えられなくなる というような現象です。一つのブランド・商品に向き合い続けるほどに強い思いも生まれてくるわけですが、商品を実際に使うユーザーは当然そこまで考えておらず、またずらりと並んだ他の商品と比較しながら選びます。タカヤオオタさん曰く、ここには「非対称性がある」ようです。

それもあって、ミスターチーズケーキのアイスクリームはコンビニに並んだ時・本の装丁は本屋さんに並んだ時の見え方をよく考慮されたとのことでした。

お二人ともこのバランスへの葛藤はかなりあるようでした。
抑えすぎても伝わらず、主張しすぎても違和を生む。それを防ぐにはデザインが元来関与できる領域を拡大し、クリエイティブが可能性を引き出すポジションにある前提を作ることが重要だと話されていました。
装飾だけがデザインではなく、その思考や設計の段階でこそバリューが発揮できるのだ という認識を互いに持って進めることが必要ですね。

これはインハウスで働く上でも重要性を感じるポイントです。
そもそもデザイナーという職種において「言われただけのことをこなすだけではない(設計の見直しや提案など、それ以外の価値をもたらす)」というのは長所でもなんでもなく、デザインの定義を正しく考えると当然のことだと思います。しかし実際の限られたリソースではどうしても深く考えることなくこなすだけになってしまうタスクもあると思います。私もこれまで数年デザイナーとして働いた中で、それはすごく後悔している経験です。危機を感じたら時に手を止めて、自分から話を聞きに行ったり提案のできる姿勢でありたいと思いました。

話が逸れましたが、「会社と製品のブランド・世界観は全て統一されるべきですか?」という質問に対するお話も興味深かったです。
弊社も会社とプロダクトで世界観がやや異なる部分があると感じていたところでした。

木村さんはご自身の会社の商品には「強い世界観で統一させる手法はフィットしない」とおっしゃっていました。強い世界観をもって憧れを想起させるというよりは、バラバラな要素・ある意味でのカオスを許容するような方向性の方がぴったりだと考えられたそうです。

「ブランディング」を教科書的に考えると、パッケージとして主張する世界観はコミュニケーションから商品に至るまで統一して押し出しやすくする方が適切に思えます。しかし、事業としてはその「統一させる」「あえて外す」選択に意図があるかを認識している方が大事だとタカヤオオタさんも話されていました。

確かにすべからく統一を試みるのは最もらしく、ブランディング「してる感」は出ると思いますが、それ以前に事業の方針を踏まえた意思はどうか を考えることが必要ですね。勉強になりました…。

ブランディングを行う上でのヒアリングについても、お二人とも対話によることが大切と言われていました。一問一答を繰り返すような体制よりも、たくさん話をすることでクライアント自身も商品ストーリーの原点に立ち返って考えられたというフィードバックを受けた というエピソードもありました。

また木村さんの「話し合う中で、デザイナーと一緒に新しく発見してしまうことがある」という言葉がすごく心に残っています。12 / JU-NI という商品については議論を進めていくうちに「何も伝えることがないという正直さが逆説的にメッセージで木村石鹸らしさだ」という気づきを得たそうです。
このエピソードには「正直に(何もないと)伝える」ことの重要性も感じられます。

このような経験もあって、別の担当者にも自分たちだけで戦略を詰め切って相談に持っていくというよりは発案の段階でデザイナーと話すという姿勢を薦められているそうです。デザイナー側もこれは嬉しいですね。もちろん時間はかかりますが、精度も上がり良いアイデアの手がかりが増える期待があります。

またマーケター・事業責任者との関わり方について、使う言葉の違いはあるけれど「どういう風に売った方が良いか」などの観点は専門知識がなくても広げられるというお話もありました。デザイナーも完全にマーケターとしての専門知識をつけて挑む ということではなく正しく理解をすること・デザイナーはどのように働きかけられるかを考えることが新たな観点を持つことにも繋がりますね。
後半で木村さんも「自分の思いに自信が持てるかが重要」とおっしゃっていましたが、私のようなインハウスでかつ未熟なデザイナーであっても立場はデザイナーに変わりないので、デザイナーが担保するべき領域では対等で正直に、臆せず意見を発信していきたいです。

またアフタートークの「ブランド本というのはいわゆる基礎知識。それよりも抽象度を高めたインプットや自分の感受にまつわる振り返りを繰り返すことが重要」というお話も響きました。司会の方もおっしゃっていましたが、骨格の把握なり模写による考慮や分析のトレーニングはUIデザインの領域にも通じるものですね。

面白そう。読んでみます

厳密には異なる業種ですが、だからこそ非常に勉強になったように感じます。貴重なお話が聞けてとても楽しかったです。

それではここまでお読みいただいた方、ありがとうございました。


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