育休でリセットされるキャリアと、そこに意味をつくること。
異動というのはいつも突然で、台風みたいに今までそこに当たり前にあったものたちをぜーんぶ吹き飛ばしてリセットする。
よくも、わるくも。
6年前、1度目の育休をとったとき、わたしはコーポレートの人事にいた。
人事の仕事も、人事のチームのメンバーも大好きだった。
それまで産休に入る人、育休から復帰する人への対応をしてきたけれど、実際に自分が妊娠しながら働いてみて、育休をとってみて、不安になって分かったことがたくさんあった。
こういう施策があったらよいのではないか、こんな工夫ができるんじゃないか。復帰したらこんなことやろう、あんなことやろうと考えながら育休を過ごしていた。
そんな復帰1ヶ月前、異動の打診を受けた。
ショックすぎて退職が頭をよぎったけど、何日か考えてすこしづつ冷静になって、気持ちをきりかえた。
新しい仕事は未経験だったけど、会社の方向性の中で重要さが増すタイミングであることは理解できたし、これまでの経験を活かし広げる機会であることはたしかだった。
自分なりに、そこに意味をみつけたのだ。
その異動をきっかけに、その後わたしは新規事業部に異動し、キャリアの半分は新規事業にかかわることになり、インターネットメディア、編集と未経験な仕事が続いた。
こんなキャリアを歩むことになるなんて、まるで想像していなかった。
異動後は、目が回るような毎日だった。
新規事業は走りながら方向性もかわるし、担当ミッションもどんどんかわる。日々学びながら、考えながら、手も動かし続ける必要があった。
悩むことも多かったし、たいへんな日々だったけど、事業をつくる奥深さやコンテンツを届けるおもしろさ、仕事は楽しくて気づけばのめり込んでいた。
そして2回目の育休。
今回もまた復帰のタイミングで、未経験の新しい仕事に取り組むことになった。
その仕事は、人事をはなれて新規事業を経験してなかったらきっとわたしがやることにはならなかっただろうと思う仕事だ。
育休によってキャリアがリセットされる。
なぜ男性である夫は子どもが生まれてもなにも失わないのに、女性であるわたしばかりがキャリアを中断して、やりたい仕事から離れなくてはいけないのだろう。
1度目の育休のときにはそんなジレンマを感じたこともある。
だけど、そんな中で働くことをあきらめずやってきて、2度目の育休復帰を迎えて思うのは、リセットはいい機会なのかもしれない、ということだ。
リセットによって、新しい経験がうまれ、新しい学びがうまれる。
それによってこれまでの考え方ややり方を見直したりリデザインすることもできる。
短期的にみると、しんどい。変わることも、変えることもまぁまぁしんどい。
たけど、長期的にみると経験が広がったり、価値観がかわったり、それによって物の見え方がかわったりする。
それはキャリアとしても、人としても、人生でみても、きっとわるくない。
スティーブ・ジョブズの有名なスピーチにでてくる「コネクティングドッツ」の話のように、育休によるリセットで新しい「点」がうつ機会がうまれる。
その「点」は、いつか他の「点」とつながるのだ。
その「点」にどう意味付けをするかは自分次第だし、その意味付けすら時間がたつとそこに新しい意味がうまれたりする。
妊娠も出産も異動も、自分ですべてをコントロールできるものではないけれど、そこにどんな意味付けをするかは自分で選べる。
いま、そう思えるのは、リセットを経験したからだ。
新しい「点」に自分なりの意味をみつけて、その「点」がいつかまたなにかとつながるように、大切な「点」となるようにやっていけたらいいなぁと思う。
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