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憧れに寄り添う

あなたを初めて見たのは、今から7年くらい前だっただろうか。まだ高校生だった私。真夜中。夢と現の狭間で見たあなたは、一人、電車に乗っていた。ここは6畳の私の部屋。電車なんて走るわけないから、きっとあれは夢だったのだろう。それでも、私の目には、何よりもリアルに、あなたの姿が映った。その姿はどこか儚く、切なげで、近くにいるようなそれでいて遠くにいるような、昔から知っているような、今初めて出会ったような、不思議な感覚を私に残した。

忘れられない夜の話だ。暗闇よりも深いところで見た。あなたに会えて、あなたに触れて、物語は始まった。誰も知らない夜の片隅に、それはそれは小さい世界に、夢が生まれて、光が生まれた。あなたに出会わなければ、この光を見ることはなかった。それはそれは、まぶしかった。あなたのせいで。夢を見てしまった。あなたのせいで。諦めることを知った。あなたのせいで。私は今日まで歩いた。そして、また。あなたのせいで。私は夢を見続けることしかできない。あなたのせいだ。全部全部。あなたが夢を見させたせいだ。

そして今日も私は眠る。

あの夜のような光を、今度は私が誰かに見せる番だ。

#ショートショート #物語  

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