「日本人は僕の人生に影響を与えてくれた」Williamと歩んだ2年間の真実
こんにちは、 RAHA KENYA代表のリエです。
「僕と仕事していることを後悔させない」
「夢はスラムの雇用をつくることなんだ」
「RAHA KENYAが僕の人生を変えてくれた」
数々の熱い言葉を残してくれるRAHA KENYAの職人、Wlliam。
なんと!
2020年12月11日、パパになりました!
しかも、2人の!!
そしてお子が私の誕生日と一緒というスーパーミラクル。
そんなhappyなニュースを聞いたらWilliamとの思い出が走馬灯のように浮かんできました。
本noteでは、新しい生命の誕生を祝うとともに、Williamと歩んできた道を振り返ります。
生まれた場所も、育ってきた環境も全く違う私たち。うまくいくことばかりではなく、距離をおいた時期もありました。
そんな彼と歩んだ、2年間の真実を記していきます。
マサイマーケットでの出会い
ブランドを立ち上げて1ヶ月。
Williamとは、職人さん探しのために行ったマサイマーケットで出会いました。
※マサイマーケット...ケニアの民芸品などが並ぶハンドメイドマーケット
100人近くの職人さんが集まるその場所で、1つのお店が目に止まりました。
民芸品が多くあるマーケット内では珍しく、若者が好むデザインの商品を並べているお店。
「お、イケてる!」
心が踊り、覗いてみることに。そこででてきたのがWilliamでした。
「・・・チャラそうだな!」
これが彼の第一印象でした。笑
マーケット内にはおじさま、おばさまが多かったので、当時21歳で若者ファッションをしている彼はどうしてもチャラついて見えてしまい、不安に思いました。
でも職人探しの件を説明をすると、とっっても真剣に聞いてくれて。耳を傾け、理解しようとする気持ちが伝わってきました。
乏しすぎる、私の英語力。
「あなたは何を言ってるかわからないわ」と会話を諦められることもある中、決してばかにすることなく懸命に聞こうとするWilliamに、好感をもちました。
結局その日は3人と連絡先を交換するも、「いつ作る?明日でもいいよ!」と前のめりの連絡をくれたのはWilliamだけ。
他の方は連絡がこない、リスケする、という残念な結果に。
RAHA KENYAは一歩踏み出すきっかけをつくりたいという想いをもって立ち上げたブランド。
一つ一つ、誇れる商品をつくってお客様へ届けていきたい。
そのためは、作り手のプロ意識や人柄がすごく大事です。
あれこれ注文をつけるであろう私についてきてくれ、一緒にブランドを作り上げてくれる人、一緒に成長してくれる人に依頼したいと思ってました。
Williamはすぐに連絡をくれるほどの意欲があるだけではなく、センスや傾聴力、思いやりがある。
だから、迷うことなく彼に「製作をお願いしよう!」と決めました。
(余談)
聞けば彼、普段はマサイマーケットへの出店はしてないとことのこと。この日はたまたま、友人に声をかけられて出店していたらしい。思えばこの時から、奇跡は始まっていたんだなぁ、と。
彼との初めての製作記録はコチラ▼( 詳しく書いてます )
Williamから教わった3つのこと
RAHA KENYAの職人さんとして大活躍のWilliam。
彼との思い出はたっっっくさんあるけれど、中でも特に印象的な言葉や出来事を3つ、紹介します。
それがプロフェッショナルってことだよ
だんだんと製作の要領もわかってきた頃。
「お客様にいいものを届けたい!」という思いに比例して、検品も厳しくなっていきました。
「この1cm、縫製が曲がってるよ」
「このサイズ、1mm違うよ」
次々と指摘する私に、文句を言わず全て「OK」と受け止め、なおしてくれるWilliam。
流石に申し訳なくなって「ごめん、とても厳しくて...」と謝りました。
そしたら、
「リエ、それがプロフェッショナルってことだよ。だから問題ない」と答えてくれました。
RAHA KENYAが求めることは本当に細かくて。
今でも職人さんから「厳しすぎるよ...」と嘆かれることもしばしば。あまりの細かさにうちと取引するのをやめてしまう職人さんもいます。
それでも基準を甘くすることなく、職人さんに理解してもらえるように努められるのは、Williamの言葉があったからです。
私たちも職人さんも、良いモノをつくることに真っ直ぐ向かっていれば、それは厳しさではなくプロフェッショナルである証なのだと、そう思いました。
やりたいことを口に出す大切さ
彼とモノづくりするようになって3ヶ月ほどたった頃。
撮影用ボードが欲しいなぁと思い、「いつか...RAHA KENYAボード作りたいんだよね」とWilliamにボソッと話しました。
そしたら、「すぐにできるよ!」と予想していなかった返答が!
聞いてみたら彼の周りにはモノづくりできる人たちがたくさんいて。ボードをつくれる人を紹介してくれる、とのこと。
まさか。
いつか、と思っていたことが、わずか1週間で叶うとは!
やりたいことは言ってみるものだな、と!
口にだすことの大切さを教えてもらいました。
「お金が回る」ということ
WilliamはMukuruというスラムに住んでいます。
「ミシンを増やして、地元のスラムにいる若者たちを雇いたい」
一緒に仕事をし始めた時、彼はそんな夢を話してくれました。
そしてそれが叶っていく様子を、私に見せてくれました。
Williamと出会ったのは2019年2月。
当時、彼はセンターと呼ばれる施設の一角を借り、ミシン1台で活動していました。
それから4ヶ月後の6月。
彼はRAHA KENYAで貯めた製作費で、オフィスを立ち上げたのです。
そして、今度はミシンを揃えるようになって。
さらに半年後には人を雇うほどに成長していきました。
まだ日雇いで、忙しい時にだけお願いしているとのことだけど、着実に思い描いた将来へとつなげています。
お客様からいただいたお金のおかげで、ブランドの商品製作ができている。その製作費は、Williamの手に渡る。そして彼はそれを使い、新たな雇用を生み出している。
私は「お金が回る」ことの大切さを、彼に教えてもらいました。
今でも彼は、ミシンを購入したら教えてくれます。
彼のおかげで、製作費を渡した先のことも気にかけられるブランドになろう、と思えました。
壊れた信頼関係
実は、2019年11月頃から3ヶ月ほど、Williamとは距離を置いてました。
理由は、馴れ合いを感じたからです。
根は真面目なWilliamだけど、次第に理由なく納期に遅れることや、ミスが増えていきました。
かたや私は、「彼を失ったらモノづくりができなくなる」
そんな不安から、なかなか強く言うことができなかったのです。
(今思い返せば、情けないですね...)
「RAHA KENYAがもっと成長するためには、新しい職人さんを入れることが必要だ」
頭でわかっていながら、本気で探そうとしていなかった。
気づけばWilliamしか頼れない依存状態に陥ってたのです。
でも、さすがにそれが続きすぎて「あぁ、ダメだ。このままだと馴れ合いでしかない。ブランドのため、お互いの成長のために、変わらなくては」と強く思いました。
お客様の中にはWilliamの人柄に惹かれ、彼を応援する気持ちでご購入くださる方もいらっしゃいます。
だからといって、取り繕った関係でうわべだけの発信をすること、そして彼をつなぎ止めようとすることは、お客様を裏切る行為です。
RAHA KENYAを、そんなブランドにしてはいけない。
心から応援してくださっているお客様のために、私は正直でなくてはいけないと思ったのです。
Williamと距離を置く決断をしました。
そして意を決し、彼にも伝えました。
私たちはビジネスをしていてただの友達ではないこと、今の関係はよくないからこれから変えていくこと、そしてRAHA KENYAの成長のために新しい職人を探します、と長文で綴った文章を送りました。
彼からは一言だけ、こうきました。
「True i understand」
感のいいWilliamです。きっと彼も、そう感じていたのだと思います。
その後たまに連絡してみるものの、ずっと素っ気ない返信で距離を感じました。あぁ、私は信頼関係を壊してしまったんだ...と悲しくなりました。
でも、そのようにさせてしまったのは自分です。
自身の行動を反省するとともに、それでも前を向いていかなきゃいけない、と気持ちを奮い立たせました。
私にできることは、今後取引する職人さんたちと同じ過ちを繰り返さないこと。失ったものは大きいけど、その経験を糧にしていこう、と学びに変えるよう努めました。
それから、コロナ襲来。
彼との関係も気まずいままに、日本へ戻ることになりました。
コロナ禍でとりもどした絆
日本に帰国し、ケニアでの製作は完全にストップ。
いまこそ、日本でできることを!と毎日めまぐるしく動いてました。
そんな時、「家賃が払えない」と困っている職人さんがいることを知りました。
そこで始動したのがNAIROBIラインプロジェクト。
売り上げの10%を職人さんに寄付するというものです。
今まで見返りなしに助けてくれた職人さんたちへの恩返し。
その対象職人の中にはWilliamも入れてました。
そして、社員のAkiさん(当時)からプロジェクト内容を聞いた彼から、メッセージが届いたのです。
「僕たちのことを考えてくれてありがとう」
彼の心が和らいだことが伝わりました。
私たちの感謝の気持ちが伝わり、彼も感謝をしてくれて。このプロジェクトができたことを嬉しく思いました。
それから彼からは定期的に連絡がくるようになったし、近状報告をしあう仲に戻りました。
とってもありがたいことに、感謝の言葉も送ってくれます。
毎月の寄付が、少しずつ彼との絆を取り戻していったのだと感じました。
このプロジェクトが成立したのは、ご購入してくださったお客様があってこそです。参加してくださった皆様...本当に、本当に。ありがとうございます!!
ミラクルな誕生
そして、予想していない朗報が届きました。
それは昨年の12月11日、私の誕生日の翌日に舞い込んできました。
「あなたの誕生日に、私の2人の男の子が生まれました」
!!!!!????
え、William。年齢=彼女いないと思ってた!(失礼)
よくよく思い返してみれば、恋愛話はほとんどしてなかった。
んもうっ!驚き!
最高のサプライズでした!
本当は私に会うまでは内緒にするつもりだったけど、誕生日が一緒だと知って興奮して話してしまったとのこと。
ミラクルだ〜!!!と二人で大感動。
しかもよくよく聞けば。
2人の赤ちゃんの母親は違う、とのこと。(衝撃)
流石に笑ちゃった。
ケニアでは一夫多妻が認めらるとはいえ、首都のナイロビでは暗黙の了解で「お一人様につき一人」の法則になってると思うんだよね。
William...や、やりよるな。笑
でも彼はどちらの生命の誕生にもすっごく喜んでいたし、可愛いがっている。
このまま愛されながら、すくすくと育って欲しい。
私も2人の成長がとっても楽しみです。
日本人は僕の人生に影響を与えてくれたから
彼の子どもの名前はRenとKenji。
「日本人は僕の人生に影響を与えてくれたから」と。
え、泣ける。
普段自己主張をしない、クールでシャイな彼。仕事のときも必要以上の話はあまりせず、淡々と作業。一時期は離れたことがあっただけに、そんな風に思ってくれてることに、感激した。
実は私も昨年9月に娘が生まれ、スワヒリ語(ケニアの言語)の名前を付けてました。
日本で生まれた私の娘は、Juaというスワヒリ語の名前。
ケニアで生まれたWilliamの息子は、Ren、Kenjiという日本の名前。
名前を呼ぶ度に、国を超えた絆を感じます。
3人の成長が楽しみだし、早くも娘の遊び相手が見つかって、とても嬉しい限りです。
「William。私はRAHA KENYAをもっとももっと、成長させるね。そしたらあなたの仕事が続くだけでなく、人を雇い、成長することができる。私たちは、もっと努力する必要があるね。RAHA KENYAを通して、一緒に成長していこう。お互い、家族を幸せにしようね」
恥ずかしながらも、報告の電話で込み上がる涙を抑えることができず、泣きながら言った私に、「Yes,we will」とWilliamは力強く答えてくれました。
RAHA KENYAが2年間成長し続けることができたこと、そして職人さんとの関係を良好に築けるようになったのは、職人さんの原点である彼のおかげです。
私にとって彼は人生に影響を与えた大事な人だし、彼に感謝し続けることは間違いないです。
そして、改めて思う。
RAHA KENYAにとって職人さんは、想いをカタチに変えてくれる存在です。そして学びと刺激をくれ、心を動かしてくれる、パワーの源でもあります。
職人さんたちとの繋がり。
1つ1つを大事にしていきたいと思います。
RAHA KENYA代表
河野リエ
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