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てんぐのスターウォーズ語り:止まった時計を抱えた人々の針が動き出す

前説はサビーヌから

 アソーカ6話はサビーヌがメイン。
 エズラ会いたさにスローン大提督の帰還に繋がると承知で未知領域への地図をベイランに渡しちゃったサビーヌですが、「マンダロア大粛清で実の家族すべてを失ってしまった」「最後に残った家族エズラまで失いたくない!」と思い詰めていた彼女の心理って、実はEP3で「シスの力ならパドメを死の運命から救える」と吹き込んだパルパティーン議長を助けるためにメイス・ウィンドウの腕を斬っちゃったときのアナキンと重なります。そう見ると、彼女のやらかしは責めにくいんですよ。
 というか、前回に引き続き、ここでもアナキンがキーワードになってくるわけか。存在感凄いな、あの人。
 それに、昨日の彼女の行動がエズラと再会したいあまりに銀河すべてを危険にさらしたとするなら、明日は銀河のすべてを救う道筋を開くことになるのかもしれない
 何か確証があって言ってるわけじゃないんですが、人の行動の善悪正否なんて、その瞬間ではわからないもんです。禍福は糾える縄の如し、って言葉もありますしね。
 (追記)
 サビーヌが自ら望んで地図をベイランに渡したとアソーカから聞かされて、「それがあのときの彼女の唯一の選択肢だったんだよ」と諭すヒュイヤン教授って、本当にドロイドなんでしょうか。実はあの機械のボディの頭部にどこぞの長命種族の脳みそでも入ってたりしません? SW世界の完全義体もグリーバス将軍って例があるわけですし。

 さて、今日のメインテーマは「時計の針が止まった人々」、サビーヌとスローン大提督についてです。

時計の針が止まった人々:サビーヌ・レンの場合

 1話のサビーヌを見たときに感じた違和感というか、反乱者たち時代には見られなかった停滞感を感じてました。具体的には、あのバサバサの髪。かつては年に一回くらいのペースでヘアスタイルや髪の色が変えてた頃と比較すると、あの頃のエキセントリックなまでの活力がなくなっているのがわかります。
 また、「中佐」って呼ばれてたと言う事は、彼女も新共和国軍かロザルの惑星防衛軍の軍籍はあるはずです。

 でも彼女って、ゼブやヘラのように現役軍人としての仕事してたのかな?
 エズラとスペクターズ、あるいは故郷マンダロアの家族の思い出に捕らわれて精神的にどこにも行けなくなってしまった彼女を見かねて、せめて生活費だけでも与えられるように退役中佐の格で年金を支給し続けられるようにライダー・アザディ総督たちが手配してくれてたんじゃないでしょうか。

 また、1話の除幕式で披露されたあの壁画にしても、描かれた題材はスペクターズの6人。ロザル解放革命から10年が経っていれば、その間に出会った人々もいれば経験もあるはず。でも、それら全てはあのエズラの電波塔に籠っていた彼女にとっては感性を刺激するものではなくなっていたのでしょうか。
 まだ30歳とはいえ、彼女の精神は、銀英伝外伝「螺旋迷宮」で登場したローザス大将のように、「現在よりも回想の方が楽しくなってしまった」という状態に陥っていたようにさえ見えます。同じスペクターズのゼブとヘラは、それぞれ自分の新しい人生を見出していたのに。
 サビーヌ自身も、自分の時計の針が止まっていることは理解していたでしょう。そして、その時計の針を動かす唯一の手段がエズラとの再会である。そんな彼女の思い詰め方を見て取ったベイラン。三国機密の郭嘉もそうですが、人の心を理解できる謀士策士ほど怖いものはないんです。

 そんな彼女も、ついにエズラとの10年越しの再会を果たしました。

 そのエズラの姿は、あの10年前の最終決戦と比較して、未知領域の荒野暮らしで随分とワイルドになりつつ、(でも反乱者たち後半戦のあのヘルメットみたいなオールバックのままじゃなかったのは銀河的幸いでした)現地住民と仲良く暮らし彼らの言語も習得していたりと、彼の10年間は静止でも停滞でもなかったのが伝わっています。それでも仕草は、あの頃のエズラでしたけどね。
 そんなエズラと再会して、自分のエゴの充足を銀河の安全と引き換えにしてしまったことを、サビーヌはどう向き合うか。そして、そんな彼女にエズラはどう接するか。
 このドラマシリーズ最終盤の要のひとつは、それになるでしょう。

時計の針が止まったままの人:スローン大提督とキメラ号クルー

 ついにお出ましのキメラ号と実写スローン大提督。

 未知領域なんて宙域に単艦で吹き飛ばされ、帰還の目途なんか立つはずがない絶望的な漂流生活の中で、キメラ号クルーは規律を完璧に維持してました。
 まるでつい昨日までロザル鎮圧をしていたかのわうなあの姿もまた、時計の針が止まった人々のそれでした。ただ、彼らはサビーヌと異なり、自らの意思によって時計の針を止めていたわけですが。

 いつ来るかわからぬ帰還の機会到来の日まで、自分ひとりだけでなく、数千人のクルーの時計の針を止められる人心掌握力。
 しかも、到来した機会は古代魔女王国の末裔の夢のお告げなんてとんでもなく非合理的なはずのものなのに、それを前提として行動を起こせる判断力。
 
 スローン大提督の将器は、軍団丸ごとの時間を支配できるという域に達しています。これはもはや超人的とすら言えます。

 こんな真似ができる人物に対する感情は、もはや「畏怖」しかないですな。

なぜスローン大提督はエズラ・ブリッジャーを殺さなかったのか

 なんかどこぞのドキュメンタリー本か、それを元にしたネットミームみたいな小見出しになっちゃいました。

 まあ他意はありません。そして答えも見出せません。
 まあ想像で語るなら、「契約内容にないことへの義理は果たさないが、明確に契約した内容は順守する」というのが大提督の信条のようですし、あの星域に<キメラ>が漂着した時に、「本艦と部下全員の安全が確認できる状況になるまで協力すれば、君の身柄を解放する」とスローンがエズラと契約した、というところでしょうか。
 エズラにしても、ロザル解放の確信が持てれば、スローンたちを、自分の命と引き換えにしてでも皆殺しにする気にはなれなかったでしょう。ジェダイの道にもスペクターズの流儀にも反しますし、何より仲間がいつか迎えにきてくれると信じてるなら、自分が生きてないと話にならないですからね。

 この辺りの経緯も、コミックか小説、またはテイルズ・オブ・ジェダイのようなアニメで明かされてほしいものです。
 というか、テイルズ・オブ・ジェダイ第二弾をやるなら、今度は「アソーカとサビーヌの一度目の師弟関係の崩壊」「エズラとスローン大提督の漂流記」の二本立てでできそうなんですよね。

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