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実写ムーラン公開合わせ企画:今こそ見てほしい武侠映画

アメリカ本国では3月、日本では4月に公開予定(4月現在は公開無期延期状態)の実写ムーラン。古株の武侠ファンからは不安の声も出てるようだけど、個人的には、かつて『グリーンデスティニー』が果たしたような、広いライト層に対する「武侠・中華時代劇」というジャンルを知る切っ掛けとなるんじゃないかと期待してる。とくれば、色々な作品を紹介したくなるのが人情ってもの。

というわけで、本格的なてんぐのnote記事第一弾として、実写ムーラン公開の今だからこそオススメ、手軽に見れる武侠映画を4作品ほどセレクトしてご紹介します。


武侠要素とりあえず全部盛り~ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝(原題:龍門飛甲)~

まずはこちら、『ドラゴンゲート』。同じ名前のプロレス団体とは関係ありませんし、読者の皆様には「ドラゴンゲート」または「ドラゲー」、できれば原題の「龍門飛甲」でご記憶ください。体裁上日本版サブタイトルも付けましたがこちらは無視してください。正直こっぱずかしいんで。

舞台は明代。強大な権勢を誇る宦官が国政を牛耳る時代。新興の宦官派閥・西廠を率いるユー督主は、「皇帝のご落胤を宿して出奔した宮女」を捜索するという名目で官兵を動員していく。その宮女は、偶然出会った旅の女剣客に助けられるが、彼女は追っ手に対して別人の名前を名乗る。その名前は、宦官勢力と戦いを長らく繰り広げてきた義士、そして彼女自身と深い因縁ある男のものだった。

女剣客と宮女。義士と西廠。それぞれの道は、やがて60年に一度の大嵐により姿を見せる“黄金の都”の財宝を狙う山賊どもが潜む砂漠の宿、「龍門客桟」に繋がっていた―――。

とまあ、ざっとこんな粗筋なわけですが、権力者に戦いを挑む義士に化け物みたいに強い宦官、訳ありな男女関係に生き馬の目を抜く策略とハッタリの応酬。万有引力の法則を嘲笑うがごとく使い手は軽業で空を飛び、なんだったら巨大な竜巻も発生。そして何より、キャラクターの個性を象徴するかのごとくバラエティ豊かな武器の数々。

要するに、武侠にあってほしい要素を贅沢に盛り込んだ一作。

これを見れば、武侠というジャンルがどういうものかだいたい分かるので、実写ムーラン公開前にまずはこちらを見てください。

能ある鷹は爪をどこまで隠すか~レイン・オブ・アサシン(原題:剣雨)

故人曰く、「能ある鷹は爪を隠す」。侠客・武芸者の世界、強者がすべてを掴む江湖においてもそれは例外ではない。

誰に顧みられることもなく、風景の一部として生きている者たちの中には、爪を隠した猛禽たちが潜んでいる。恐るべき猛禽は、自分が爪を持つ者だと想像すらさせぬ姿を選ぶ。そして、その猛禽たちがひとたび羽ばたきその爪を見せたとき、愚かな獲物から流れる血潮で大地を無情に潤す。

というのが『レイン・オブ・アサシン』の世界観。

アサシンというのは武侠世界においては正統派の剣客と並ぶ花形ヒーローで、本作の舞台は明代なんですが、唐代伝奇で語られる「市井に潜む異能者」としてのイメージでまとめられています。

自分の強さを誇示したいという欲を抑え込んで、市井の片隅で生きるアサシンたちが望むものは何なのか。その望みが、どのような力を彼らに与えるのか。その辺りもテーマのひとつです。

そして、剣を使った立ち回りの演出も実に良いんだ。個人的には、今まで見てきた古今東西のチャンバラ映画の中でも五指に入れたいくらい。

ちなみにこの映画、あの『男たちの挽歌』でおなじみのジョン・ウーが共同監督を務めてます。でも、鳩は飛んでなかったような気がする。多分だけど。

剣に生き、剣に死す~『修羅の剣士』(原題:三少爺的剣)

剣に生き、剣に死す。言葉にすれば容易いが、それを実践することは果てしない苦しみを伴い、しかも往々にして理不尽に報われないこともある。

流浪の刺客・燕十三。彼の手にかかった使い手は数多いが、彼自身は無名のままだった。なぜなら、彼の戦いを見たものは、まったく別人の名前を連想する。剣の名門・謝氏一族が生んだ最高の達人「三少爺」(邦訳:第三の師)。燕十三は、この男と対決し、己の名を世間に示すことを念願としていた。しかし、謝氏一門の本拠地に乗り込んだ燕十三は、「三少爺」は彼と対決する以前にこの世を去ったことを告げられる。そして、己自身も病み衰え余命いくばくもない事を悟った彼は、残った人生でせめて意義のある事をしようといつしか考えるようになる。

時を同じくして、「この世の快楽をすべて集めた」と呼ばれるほどの歓楽街に、ひとりの酒浸りの男が姿を現す。男は本名も素性も明かさず、「阿吉」と名付けられ遊郭の下男となった。己の生死にすら投げやりな、愚鈍とも英雄とも言える男には、大きな秘密を胸の内に隠していた。

燕十三と阿吉、両者の運命は奇妙な偶然と、当事者すら知りえぬ因縁で結ばれることになる。

とまあ、こんな感じ。

たびたびTwitterでも紹介してまいりましたがこの映画、サンダーボルトファンタジーの殺無生が好きだったという人と、月に咲く花の如くの呉聘さんが好きだったという人には間違いなく刺さる。というか、燕十三というキャラが果てしなく良いんだわ。上のテキスト読んでもらえれば分かると思うけど。個人的には、自分の墓石を買った後に、顔のデスメイクな入れ墨を露わにして野次馬にすごんだら逆に子供になつかれるシーンが好き。

ちなみに、この映画の原作は台湾武侠小説の第一人者・古龍先生。

その古龍先生の代表作のひとつ「絶代双驕」(英題:Handsome Siblings)が現在Netflixで配信中です。

以前に邦訳されていた際の邦題「マーベラス・ツインズ」の名前で馴染みのある人もいるかと思いますので、こちらも併せてご紹介します。こちらもマジで面白いよ!

人呼んでサイレントウルフ!~『ソード・オブ・デスティニー』

最後にご紹介するのは、序文で紹介した『グリーンデスティニー』の続編、『ソード・オブ・デスティニー』。

正直に言って、『グリーンデスティニー』は、武侠というジャンルの入門書としてはともかく、映画としてはあまりスカッとしないのが難点だと思ってる。その難点をこの続編は見事に克服してる。やっぱりチャンバラってやつは、最後はスカッとしてナンボだよ。

あらすじ自体は単純明快。天下取りの野望を露わにし手勢を集める反乱軍に立ち向かうべく、前作で恋人に先立たれた女剣客が、在野の武侠の士に檄文を飛ばす。その檄文に応じた一騎当千の義士たちや押しかけ弟子を糾合し、反乱軍の頭目と決戦に及ぶ。

で、この映画の何が強烈かって、キャラクターや門派の呼び方。

ミシェル・ヨー姐さん演じる女剣客が「ウェストロータスのヘイデス・ダイが~」って言いだして「いまなんつった?」って思ってるうちに義士の筆頭格を演じるドニーさんが高らかに「人呼んでサイレントウルフ!」と名乗って「アッハイ」と色んな何かをわからされた感じがした。その他のメンバーも「サンダーフィスト」とか「スノーヴァース」とかだし。これ、要は英語版の呼び名をそのままカタカナにしちゃったようだけど、逆にインパクトあるんだよね。なんつーか、MCUのヒーローとかヴィランみたいな感じがする。

とまあ、呼び名はこんなノリで、でも見せるアクションとシナリオは正統派の武侠・中華時代劇というわけで、多分実写ムーランに世界観が一番近いの、この作品なんじゃないかな。

Netflix限定配信なので、予告編を見て関心持った人は加入してほしい。さっき書いた「絶代双驕」と、あと霹靂布袋戯のWoDも配信されてることだし。

最後にひとこと

武侠・中華時代劇はストロングスタイルなカンフーからグッドルッキングなアイドル風、中華風異世界コースもファンタジーものから戦記ものまで幅広い作品があります。

実写ムーランをきっかけに、ぜひ自分のお気に入り作品を見つけてください。

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