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第1編-1. 初期研修医 参考書はじめの一歩(1)(OSCE対応)

第1編では、初期研修で最も優先される仕事についての参考書を列記します。

1. 初期臨床研修の最初の投資

できれば、この4冊は入職前に入手しておいてください。現場での即戦力となり、2年間の研修の基礎固めになります。内容を入職前に読んでおく必要はありません。

1-① 「型」が身につくカルテの書き方

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カルテ(診療録)記載は、診療科にかかわらず、初期研修医が最初から任される仕事です。慣れないうちは、どう書けばよいのか、記載のポイントとは何かがわからないものです。この一冊を片手に、型通りに書いていくうちに、カルテ記載の考え方がわかってきます。私もこの本に何度となく助けられました。
カルテは、初診/継続外来、病棟、救急、ICUで、それぞれの書き方(や、考え方)の特徴があります。この一冊ですべて網羅できるうえ、紹介状や病棟患者管理シートのテンプレートといったおまけもついています。
ところで、カルテは公文書としての性質ももつため、同じ内容でも書き方に配慮しなければならない場合があります。施設ごとの事情もあると思いますし、それらは現場で失敗しながら学んでいけばよいと思います。


1-② 「あの研修医はすごい!」と思わせる 症例プレゼン(OSCE対応)

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カルテ記載と同じく、プレゼンはどの科に行っても初期研修医にとって必須のタスクです。プレゼンの特質は「(基本的には)口頭のみで」「聞き手が求める形で」「情報の過不足なく」伝えることです。それらの特質をふまえて、この本では「他職種に対する伝え方」や、「学会発表の基本」まで網羅しています。単にプレゼンスキルだけでなく、相手にものを伝えるとはどういうことかを根本的に掘り下げてくれる一冊です。
なお、PCC-OSCEでは、外来模擬診察の後に簡単な所見のプレゼンを行います。プレゼン方法の基礎に触れるだけでも、試験の緊張感がほぐれ、パフォーマンスに違いが出ると思います。


1-③ 内科レジデントの鉄則 第3版

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研修医マニュアルの王道として人口に膾炙されています。内容は、病棟エマージェンシー(あるいは救急外来)、内科緊急入院、病棟管理の3つの章に分かれています。
初期研修医がコンスタントに救急外来をこなす病院や、病棟エマージェンシーが頻回に起こる診療科(消化器内科など)ならば必須といえる一冊。そうでない病院、診療科では使う頻度が減ります。診療科の特性に応じて、他の成書と使い分けてください。


1-④ ホスピタリストのための 内科診療フローチャート 第2版

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疾患ごとに、診断基準や検査の流れ、典型的な経過などを、豊富なエビデンスとともに紹介しています。記載されている疾患は、common diseases (あるいは頻度の高い病態)を網羅しているうえ、一部専門的な疾患も記載されています。診療科ごとの特殊性ある疾患(神経内科など)は、別の成書で補完してください。
このフローチャートを参照することにより、目の前の患者さんが、全体の流れのどこにいるのかを把握することができます。学生と研修医とを問わず使える一冊です。



2. 医療面接について

いざ患者(模擬患者)さんを目の前にした医療面接、何からきいたらよいかわからない! そんな時に作戦を立てるための右腕になってくれます。


2-① ジェネラリストのための 内科外来マニュアル 第2版(OSCE対応)

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主訴別に、問診のポイントや鑑別診断がフローチャートとして書いてあります。エビデンスこそ詳しく記載していないものの、忙しい外来で予診票や紹介状をもとに、ぱぱっと調べて医療面接をスタンバイするには最高の良書です。


私の知る限り、この本には少なくとも4つの使い方があります。
① 外来、特に総合診療内科の外来で使う。
この本は本来、総合診療内科の外来を意図してつくられています。臨床推論のフォーマットとして使えます。
② 学部 PCC-OSCE の予習として使う。
PCC-OSCEでは、33の症候のどれかを主訴として来院した患者に対する、医療面接をシミュレーションします。それらの症候の多くが、この本に記載されているので、この本を参照して問診や身体診察をシミュレーションすることにより、試験対策となります。
私は PCC-OSCE の勉強中、友人から紹介され、この本を知りました。
③ 研修医教育システム EPOC2 の「経験すべき症候・疾患」の臨床推論のフォーマットとして使う。
「経験すべき症候・疾患」は、研修医ライフ2年間のうちに教育システム「EPOC2」に記録する必要があり、一部は症例レポートとしてまとめる必要があります。レポート執筆時の鑑別診断フローチャートに使えます。
④ 救急外来 walk-in 患者に対する方針を考えるために使う。walk-in だったとしても重篤な鑑別疾患に関して記述があります。救急特有の臨床推論方法については、別の成書をご参照ください。

2-② 内科診断学 第3版(OSCE対応)

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上記の「ジェネラリストのための 内科外来マニュアル」と並行して、PCC-OSCEには必須の書籍です。主訴が「ジェネラリスト」以上に細分化されていて、疾患も網羅的に書いてあります。「ジェネラリスト」だけでは診断の方針が立たない主訴に対して、補助的・辞書的に使っています。

2-③ 不明熱を減らすための 外来発熱診療ガイド

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この書籍で学んだことは、Review of Systems の概念。Review of Systems とは、主訴と関係ない症状も含めて聴取する問診内容のことです。この本には、発熱を中心とした Review of Systems が書いてありますが、発熱以外の主訴でも十分に使えます(発熱は絞りこみ効果の低い症状の1つなため、あらかじめ広くきいてくれています)。
なお、Review of Systems は、① 発熱など疾患非特異的症状、② 複数の愁訴がある場合、③ 膠原病など症候ベースで診断する場合、に強い武器になります。①〜③すべてに当てはまるからこそ、不明熱で Review of Systems が強調されるわけですね。

2-④ この1冊で極める 不明熱の診断学

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上記「不明熱を減らすための 外来患者診療ガイド」とは異なり、診断のための考え方をじっくりと掘り下げていく感じです。読んだからといって、すぐに力がつくわけではありませんが、いざ不明熱の患者さんと接した場合に、見落としのない診察を助けてくれる一冊だと思います。


2-⑤ 誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 第2版

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「ジェネラリストのための 内科外来マニュアル」の執筆者のひとりである岸田直樹先生の単著です。原稿には、「ジェネラリスト」の発熱の項目が一部流用されています。というか、「風邪の診かた」というよりは、事実上「ジェネラリスト」の発熱の項目を掘り下げた内容となっています。
私たちの世代(2020年度 初期研修医1年目)は、COVID-19パンデミックにより、発熱患者・上気道感染症患者を直接診せていただくことが難しい世代でした。このため、本格的に上気道感染症を診るのは、救急外来やへき地勤務までお預けになりそうです。


2-⑥ ACP 内科医のための「こころの診かた」

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精神科領域の中で、内科医の特にプライマリ・ケアの領域で拾いあげていくとよいスクリーニングを紹介しています。うつ病、パーソナリティ障害などに重点をおき、簡単な問診で総合診療科の精神的な Review of Systems ができるような感じです。なお ACP は advance care planning ではなく、アメリカ内科学会 American College of Physicians です。

続きもお楽しみに。

リンク先
医療の谷間に灯をともす(ホーム)
プライマリ・ケアをめざす医学生・初期研修医におすすめの参考書
第1編-2. 初期研修医 参考書はじめの一歩(2)(OSCE対応)
第1編-3. 初期研修医 参考書はじめの一歩(3)(OSCE対応)



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