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喫茶店の占い師、再び


こんにちは、らふこです。

noteを始めたての頃、『休職中にカフェで過ごしていると、占い師たちとの遭遇率が高い』という記事を書きました。


あれから占い師を見かける頻度は減り、一時的な流行だったのかなと思っていたのですが、先日強烈な占い師を目の当たりにしました。

目撃現場はたまに行くカフェなのですが、その店の前には占いの無人自販機が置いてあります。
買う人がいたらちょっと見てみたいなと思いながら、あまり気にとめず通りすぎていました。

そして先日、久しぶりに私がそのカフェに入った時のことです。
私は日中の外出で少し疲労感があって、軽食と読書の目的でカフェに入りました。
カフェの入り口に足を踏み入れると、ど紫のカッターシャツを着た、ふくよかな体型の40代後半くらいの男性が、テーブルクロスを手に持って何やら忙しく準備しています。

男性はせわしなく動きながら、「どうぞ〜」と言って私を彼の動線上の席に案内すると、女性店員さんに「行ける?」と指示を出しました。
彼は小柄な女性が座っていたテーブルに、対面で相席しました。
そして手に持っていた、確かイチゴ柄のようなテーブルクロスを広げ、厚みのない白っぽい冊子をその上に置きます。

なぜ私がここまで彼らの動きを見ているかというと、彼らのテーブルの真正面に私が案内されてしまったからです。
私は(他にも席がたくさん空いてるのに、なぜここなんだろうな)と思いながらも、大人しく案内された席に座りました。

位置関係だけで見るとこんな感じ

もはやアリーナ席のようなVIP待遇です(本人の希望は関係なく)。
実はこの男性オーナーを見かけるのはこれが初めてではありませんでした。
以前パートナーと一緒にこのカフェに入った時、彼の勢いある接客ぶりに「前職はラーメン屋の店長だったに違いない」とコソコソ話し合っていたものです。

でもようやく以前からの謎が解けました。
なんでこのカフェがボーリング玉くらいの水晶を持った怪しげな占い師を黙認してるんだろうな、と常々思っていたのです。
店主も占い師ということが発覚し、納得しました。

あの可愛らしいテーブルクロスは占い師の形式的なものなんだな、と見れば見るほど何故か可笑しくなってきて、何も気にしていない風を装うのに苦労しました。
本当に嫌な客ですが、私も積極的にそこに座っていたいわけじゃないんです。不可抗力です。

気にしないようにしたいのですが、顔をあげると正面が彼らのテーブルなので、嫌でも見えるし聞こえてきます。

お店の中は2つくらいの大きな空間に区切られていて、もう1つの空間には何組かお客さんがいたのですが、なぜかこちらの空間には私以外、他のお客さんがいないのです。
私は必死で本を読もうとしましたが、どうしても2人のやり取りを頭から排除することができず、読書を断念しました。
観劇環境が整いすぎていたのです。


占い師が、白い薄っぺらい冊子をペラペラめくりながら、女性の年齢や職業、占いたい内容などを聴取します。

女性は医療関係の仕事をして、性格は真面目できちんとしたい方、パートで働いていて自分がいなければ周りが困るほどには長い等、お話されていました。
相談内容としては、このまま今の仕事を続けていればいいのか、他の仕事をした方がいいのかということのようでした。

占い師はそれを聞いて、冊子を見ながら、
「今年は動かない方がいいね」
「来年はお誘いがあれば動いてみるといい、
再来年はやりたいことが増えるはず。そうしたら自分から動いてもいいね。」
などと答えていました。

占い師に「あなた〇〇でしょ?」と言い当てられると、
女性も「そうそうそう!それでこういうことがあって、〜」
みたいなやり取りが続きます。

私は紅茶を飲みながら、ただただ『2人ともすごい喋るな〜』と思っていました。

占い師が、「持病を持っている人に、亡くなる時期をお伝えすると意欲がなくなっちゃうから伝えないようにしてるんですよね〜こちらは分かってはいるんですけどね。」
などという発言をしていたこともありました。

内心かなりツッコミたくなる発言ですが、私に口出しすることなど出来ません。

以下、たくさんあったツッコミポイントの中で覚えているものを少し挙げてみます。


占い師
「大きな組織の方が休みが取りやすいよね。仕事ができない若い子も、あなたが休みを取りやすいという面では助かりますよね。」

女性
「そっか〜、確かにそうですよねえ。今日もそれで休み取ってきて、〜」


『もうそれ占いじゃないのでは』


占い師
「今は昔みたいにズバズバ言わず、摩擦を避けたい若い子が多いんですよね」

女性
「え〜!?そうなんですか?私納得できないと正論を言っちゃう方で、〜」


『今昔とかじゃなく、メンタルヘルスに情弱な国が当然迎えた結果よ』


占い師
「あなた、旦那さんに優しいけどデレないでしょ。『ゴロニャン』みたいなさ」

女性
「そうなんですよ笑、こういうことはあるけど、〜」


『上司ならセクハラですね』




私はツッコミ疲れてきて、サンドイッチを食べたら早々に席を立ちました。
しかし私が帰る時も、2人は楽しそうに話を続けていました。

占いを生業にしていたり、心の支えにしている方がいたら申し訳ないです。
苦しんでる人を助けたい一心で占いをしている方が大半だろうし、店長を馬鹿にしてるわけじゃないんです。
きっとどちらも清い心を持ってるんだと思う。

ただ本厄で厄払いに行こうとしてる私が言うのもなんですが、占いは根拠がどうしても弱い感が否めないのです。
反論は認めます。私が知らないだけで、真実を言い当てていることもたくさんあるのかもしれない。
良い結果が出たら、それに望みを託したくなる気持ちも分かります。
だから占いを否定するつもりはない。
100%信じるつもりもないですけど…。


占い内容うんぬんよりも、今回見ていて思ったのは、人に言えない悩みを聞いてもらうっていう点からみると、良い効果があるだろうなということです。

依存は悪いとか言われるけど、依存がないと自立は成立しないし、安全地帯をたくさん作れるといいですよね。

大通りから外れた人が行き場をなくすような世の中で、大切な生存戦略は、どんなに無様な自分でも大丈夫と思える、緩い依存先、安全地帯、居場所を作っておくことだと思います。

その1つに占い師がいるのも、ありだと思う。
ただ、そういう人の弱さにつけ込む輩も少なくないわけだから、
もしどなたかが占い師に執心されているのであれば、その占い師が本当に心ある人であることを願います。


私も、あの元ラーメン屋の店長に占ってもらおうかな。


やっぱり、会話の前から笑い出す未来しか想像できない。

こんなだから、私には依存先が少ないんでしょうね。