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金利上昇がもたらす企業利益へのインパクトは?

2022年、突如マーケットを襲った高いインフレ率

2022年のアメリカは、コロナ禍からの脱却後に発生した年率8%もの急激なインフレーションに悩まされました。米国中央銀行FRBは、近年ほぼ0%で推移してきた政策金利をインフレ退治のために急ピッチで上げていきました。
それを受けて米国株式も急落。S&P500は年初来19%の下落となっています。
一部の人気銘柄は更に大きな下落を見せるものもあり、2021年までの最大の勝者であったTeslaは72%もの下落に見舞われています。

FRB interest rate (Macrotrends)

金利の上昇が企業に与えるダメージは?

金利が上がれば支払利息が増えるので企業利益を圧迫することになる、従って株価に下落圧力がかかるというのが一般常識です。
しかし実際のところ、例えば金利が1%増えた場合どれだけ企業利益は減少するのでしょうか?

古い資料ですが、第一生命経済研究所が2006年に示したレポートでは1%の金利上昇によって日本の全産業の平均企業利益が3.7%押し下げられるとの予測が出ています。

単純な計算モデルの提案

上記のレポートでは、中央銀行の長期金利1%上昇に対し、全産業の企業の平均支払利息が0.83%、受取利息が0.92%上昇するとの研究結果が出ており、金利と利息にある程度の相関性が認められます。これら数字の違いは、借入金や社債など取引の形態が金利上昇に対してどれだけ素早く反応する性質を持つかで異なるようです。
そして、先の数字を全企業の資産と負債に掛算した後に差引することで、長期金利と企業利益の関係性が導き出せたということです。

これを株式投資を検討する際に役立つように考えてみましょう。
個々の企業で資産と負債は異なるので、検討している企業ごとに計算してみることをお勧めします。

物理学では何かしらの試算をする際、正解の数字と桁数さえ合っていれば上々という大雑把な考え方をします。モデルを作る際は、様々な小さい要因をできるだけ排除することが重要です。
よって簡単のため、支払・受取利息が金利の上昇に完全相関するとして計算します。つまり、金利が1%上昇するなら支払利息も受取利息も1%上昇するということです。

すると、ある企業が金利上昇によって受ける利益の減少幅は、

長期金利の上昇率×(企業の有利子負債-企業の有利子資産)

という式で簡単に計算できます。
導かれた数字を金利上昇前の利益から差し引けば、そのPERから買われすぎ、売られすぎを判断する材料になるでしょう。


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