マズローの欲求5段階説にもとづく1on1の話題づくり

この記事は1on1ミーティング Advent Calendar 2020の第1日目の投稿です。僭越ながら先鋒をつとめさせて頂きます。

マズローの欲求5段階説とは

アメリカの心理学者マズローが提唱する理論で、「自己実現理論」とも言われています。

「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものである。

5つの欲求段階はそれぞれ以下の通りです。

生理的欲求
3大欲求などの生きるために必要な基本的欲求です。

安全欲求
健康や経済的安定などの欲求です。生きるための最低限の欲求が満たされたうえで、より安心で安定した生活を送りたいという欲求を持ちます。

社会的欲求
家族や組織などに所属し、社会的役割を持つことに対する欲求です。生きるための安定した生活を得るだけでなく、孤立なく自分の役割がある環境に属して社会的に必要とされていると感じたいものです。

承認欲求
集団の中でも価値ある存在であると認められたい欲求です。社会的役割の中でも地位や役職などを得て人から認められたい、尊敬を得たいと感じるようになります。

自己実現欲求
自分の能力や可能性を最大限に発揮したい欲求です。社会的役割があり、他者から認められても、もっと自分らしく生きたい、理想の自分に近づきたいという欲求を持ちます。

低位の基本的な欲求ほど優先順位が高い欲求です。例えば、生活が危機的な状況であれば自己実現よりもまず生理的欲求や安全欲求を満たそうとします。一方で、低位の欲求が満たされた状態になると、より上位の欲求を満たしたくなります。

欲求段階に応じた話題づくり

1on1の中でもこの欲求段階を意識しておくことは大切です。例えば、健康状態が不安なメンバーにいくら自己実現のことを話しても集中して聞いてもらうのは難しいです。相手の欲求段階を感じ取りながら話題づくりをすると良いでしょう。例えば次のような話題です。

生理的欲求
・夜はよく眠れている?
・食事はちゃんと取れてる?

安全欲求
・最近体調はどう?
・仕事が進めづらかったり、仕事に集中できないことはある?

社会的欲求
・チームにはもう慣れたかな?
・教育係の◯◯さんはよく面倒みてくれてる?
・困ったことがあったら相談できる人がいる?

承認欲求
・xxさんが得意な◯◯をチームに広められないかな?
・xxさんの強みである◯◯を活かしてチームをリードしてもらえないかな?

自己実現欲求
・気になっている技術は?どうやったらチームに取り入れていける?
・3年後にはどんなポジションで活躍したい?

下の段階を無視して上の段階にいかない

前述のとおり下位の欲求段階が満たされていないのに上位の欲求段階の話をしても質の高い1on1にはつながりにくいです。

上司の立場からすると高い期待を伝えたい思いもあるかもしれませんが、相手の心の準備ができていなければその期待は正しく伝わりません。下位の欲求段階が満たされているかをしっかり見てあげてから上位の欲求段階に向かいましょう。

反対に部下の立場の人であれば、下位の欲求段階を疎かにして上司に話を合わせようとしていないか?自分の胸の内を確かめてみてください。下位の欲求段階に不安があれば、上司の期待に応えたい気持ちはいったん留め置いて、生活や職場環境の不安や相談事について話を聞いてほしいことを伝えましょう。

上の段階にいても下の段階のケアを忘れない

いったん下位の欲求段階が満たされたからといって、上位の欲求段階だけに目を向ければ良いとは限りません。プライベートの問題を抱えてしまったり、仕事が思うように進まなくて周囲の人とギクシャクしてしまうなどで、下位の欲求段階が揺らいでしまうことは誰しも起こりえます。

「◯◯さんはいつも明るいし、チームに溶け込んでうまくやれている」と決めつけずに、生活面やチーム内の人間関係については常に気にかけて、「最近どう?」と聞いてあげると良いでしょう。

部下の人も、「多少無理しても大丈夫」などと下位の欲求段階を疎かにせず、1on1の時ぐらいは冷静に現状を捉えて気持ちを伝えてみてください。

話題づくりは決め打ちでやることではない

いずれにしても1on1の話題づくりというのは、「この人はこの欲求段階だけ気にしておけば良い」というものではありません。あらかじめ話題を決めておくのは悪いことではありませんが、相手の状況や反応に応じて話を進めながら重点ポイントを探って組み立てていくのが1on1の話題づくりだと私は考えています。

上司の人も部下の人も、5つの欲求段階をふまえて話題づくりをすることで1on1をより有意義な時間にできるでしょう。


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