見出し画像

奥行きを数百年で捨てていく

シリーズ・現代川柳と短文NEO/011

 押し入れは趣味の品でぎっしりだ。奥に行けば行くほど古く、手前は新しい。水平方向の地層である。だから、奥の奥にあるおもちゃを取り出したくなってもすぐには難しい。そこにあることはわかっているが取り出せない。もはや所有していないのと同じだ、と他人は言う。だが、わたしの押し入れの利用歴は五百年を超えているのだ。つまりそこには、五百年それじたいが入っている。

【本日の現代川柳】
奥行きを数百年で捨てていく
/今田健太郎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?