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第119回「川柳を見つけて」

▼日曜日。丸1日無免許医療の予定なし。というか、きょうは「川柳を見つけて」というイベントに参加する日。仔細な説明を省くと、要は2冊の現代川柳句集の合評会。2冊とは、つまり、暮田真名『ふりょの星』と、ササキリユウイチ『馬場にオムライス』のことだが、昨夜イベントの予約をした際に気づいたのは、いまそれらの現物を持っていないことだ。じつはちゃんと通読して読んだこともない。理由はそれぞれにあるが、暮田さんやササキリさんご本人になんどもお会いするうち「てっきり読んだ気になってた」、という面もあるのかもしれない。危険なことだ。本人の印象を句集に重ね合わせている。決めつけや、わかった気になっているだけ、になりかねない。しかしそれでもわたしは会場に行った。読んでいない本の合評会の会場である。バレたらつまみ出される覚悟はしていたが、幸い、そうしたピンチは訪れなかった。▼パネラーのおひとりである穂村弘さんは、短詩型文芸界ではもちろんのこと、ジャンル外にもその名が轟く有名人だ。だから、とかんたんにつなぐのは説明不足だが、あえて続けて書くと、個人的にも共感できる内容のおしゃべりが多かった。川柳をその外側から俯瞰するような語り口(歌人だからあたりまえではある)に、川柳をはじめた去年、自分があれこれ考えていた記憶を思い起こしたし、川合大祐さんの語りをちゃんと「平岡正明のよう」と表現されていたのも印象的で、なるほど、この人は言葉で「わからせる」あるいは「わかった気にさせる」ことをくりかえしてきた人なんだなあ、と思った。それが穂村さんのセンスなのか、場馴れ感なのか、またはそもそも短歌がそういうものなのか、はわからない。たぶんぜんぶ気のせいだ。▼会場の物販ブースには川柳関係の書籍、フリーペーパーなどが。お名前や活動は知っているが、じっさいにお会いするのは初めて、という方々がたくさんいらっしゃっていた。そのことから匿名性と記名性について考えはじめるときりがなくなる。▼懇親会には参加せず帰宅の途に。来るときも帰るときも電車の乗り換えをまちがえた。そう、乗り換えはミスっても手術はミスらない。それが無免許医。

▼これまでの無免許医


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