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これも「読み」ですか? 14

どうも、ラジオポトフの今田です。
現代川柳の「読み」シリーズ第14回です。

これまでの記事は▼以下から。

今回も、現代川柳作家の海馬さんがこしらえた「アサッテの川柳」を駆使して句を選び、鑑賞していきます。アサッテの川柳は、任意の文字列を入れると現代川柳1句をランダムに返してくれるおもしろ空間です。みなさんも試してみましょう。

さて、今回入力した文字列は、ここ最近今田がやっていたゲーム『パラノマサイト』に登場する「本所七不思議」のトピック名です。実際にある都市伝説だそうです。「実際にある都市伝説」ってなんか変な言い方ですね。

まあともかく、こんなかんじです。

では、やっていきます。一気にまいります。


【1】

白いページがあるよき年のために
/遠藤泰江
■来年の手帳だろうか。よき年にするためには、白紙を「よきことが書ける」と前向きに捉えねばならない。似たようなこと言いたい。青空はきみの夢を描き込むためのキャンバスだよ(cv:石田彰)。

――入力文字列「置いてけ堀」


【2】

ロンドンのような霧だと遅刻する
/田中南都

■この句が回答となる大喜利のお題は「遅刻のいいわけをかっこよく言え」だ。ロンドンなみの霧が出た夜。切り裂きジャックのような殺人鬼がうろついていた。だから遅刻した。コートが濡れている。

――入力文字列「馬鹿囃子」


【3】

関係者以外のポニョに頭部なし
/川合大祐
■ここはシンプルに、関係者ではなくなったポニョの頭部を切断したと考えるべきだろう。よくよく考えると血なまぐさい。が、よくよく考えずに「頭部なし」と軽く言い切るのもそれはそれで怖い。

――入力文字列「送り提灯」


【4】

やがて風にやわらかい歯が生え揃う
/尾藤三柳
■やわらかい歯が生え揃う場所といえば風。もはやそうとしか思えない。こどもの歯ぐきと言う方も多いだろうが、こどもの歯ぐきは風が吹く場所だ。いまは吹いていなくとも、やがて吹く場所だ。

――入力文字列「送り拍子木」


【5】

けんかするしんさつしつがきえさって
/千春

■診察室がひらがなになったように見えるが、じつはすべての文字がひらがなになっている。深刻な話があったかもしれないワンシーンをクレヨンで描きなおしたような句だと思った。

――入力文字列「落葉なき椎」


【6】

夏空は躊躇の意味を教えない
/樋口由紀子
夏由来のイメージは無数にあるが、そのどれを採用しても意味が通るのではないかと思った。たとえば部活。たとえばお祭り。あるいは恋、友情、熱中症、畑仕事、OS-1、世田谷ベース……

――入力文字列「津軽の太鼓」


【7】

寒卵一つの視野を持ちはじめ
/猿田寒坊
■寒さのきびしい折に産み落とされた鶏卵は栄養が豊富らしい。その卵の視野なのか、またはそこから生まれたひよこが持ちはじめた視野なのか。あ、よこを「卵」呼ばわりするのっておもしろいな。

――入力文字列「皿浅い屋敷」


【8】

かくれんぼの鬼どの辻も知りつくし
/田頭良子
■かくれんぼ史上、最強の鬼。必死に隠れてもどこからか「そこだろ、知ってるぜ」という声が聞こえる。かくれんぼが終わってもまだ聞こえる。お風呂に入っていてもまだ、布団に入ってもまだ………

――入力文字列「皿浅い屋敷」


【9】

記録には飛べない鳥として残る
/なかはられいこ
■キーウィは飛べない鳥として有名だ。しかしキーウィからしたら「もっと言い方あるだろ」と思うかもしれない。そういえば「アリクイ」という名称ってどうなんだ。なら日本人は「メシクイ」なのか。

――入力文字列「消えずの行灯」


【おわり】

はいおわりで〜す。七不思議なのに九個あるのが怖いですね。様式美というやつですかね。このくらいのサイズ感で、だいたい週1ペースでやっていきたいな〜と思ってますが、もちろん思っているだけになる可能性が高いです。

改めまして、各句の作者のみなさん、海馬さん、そして『パラノマサイト』制作陣のみなさんにありがとうございましたの11文字をお送りします。制作陣のみなさんはそんな11文字を言われても困るでしょうが。

ありがとうございました

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