見出し画像

これも「読み」ですか? 12

ど~も~、ラジオポトフの今田です。
現代川柳の「読み」シリーズ第12回です。

今回取り上げるのも、現代川柳作家の海馬さんがこしらえた「アサッテの川柳」を利用して選んだ8句です。アサッテの川柳は、任意の文字列を入れると現代川柳1句をランダムに返してくれるおもしろ空間。みなさんも試してみましょう。

さて、今回入力した文字列は、最近読んだ、氷川竜介『日本アニメの革新』に取り上げられていた名作のタイトル8本です。

たとえばこんなかんじ。

では、やっていきます。一気に8句まいります。


【1】

ひきがえる石をのせると目をつむり
/井上剣花坊
■アクションAが結果Bを生む。因果である。逆はあるだろうか。この場合、ひきがえるが目をつむると石が載せられる因果だ。そぎ落とされた文字列は組み換え自由な積み木やブロックに似ている。

――入力タイトル『鉄腕アトム』


【2】

礼拝やザクロの種をプッと吐く
/松永千秋

■ザクロ。見るからに神秘的で、ホーリーな単語とも相性がいい。しかしここでは「プッ」を引き出すためのアイテムでもある。自分のくちびるをその形にして「参加」してしまう、参加型の1句。

――入力タイトル『宇宙戦艦ヤマト』


【3】

戦場が擬音が見えるほど近く
/川合大祐
■まずは戦争を描いたマンガを想起した。描き文字としての擬音。それが「見えるほど近」い。フィクションと現実の間に距離がない時代。おそらくそれゆえに、助詞「が」のたたみかけに切迫感がある。

――入力タイトル『機動戦士ガンダム』


【4】

神の火をもらってからのつまらなさ
/時実新子
■この句のサビは「もらって」だ。原子力を「神の火」とするなら、それを「つまらなさ」と表現するのはひとつのスタンスの表明と取れる。大いなる力をただもらったに過ぎない人類が図に乗っている?

――入力タイトル『AKIRA』


【5】

生醉をひよつとおさへてはなされず
/『誹風柳多留 一三篇』

■来た。自分の力不足・知識不足を実感する漢字5文字。「誹風柳多留」だ。ポエジーが分からないとかではなく、たんに書かれた言葉の意味が分からない。参考書がほしい。かんたんなやつが。

――入力タイトル『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』


【6】

筆順はまちがってるけど朝である
/樋口由紀子
■褒められるような過ごし方をしなかった夜の、その次にくる朝。きっと学生時代だ。正しい筆順でたどり着いた朝とは異なるが、それゆえ思い出には残る。あの朝だ。

――入力タイトル『新世紀エヴァンゲリオン』


【7】

居たというように黒曜石を置く
/広瀬ちえみ
■ほとばしるエレガント。金剛石を置くのではこうはいかない。「うわ~、居たんか~」と、エレガントぶりに振り回されるキャラクターをわざと演じたくなるほどエレガント。つまり言うことなし。

――入力タイトル『千と千尋の神隠し』


【8】

父はその母のくちびるから産まれ
/天根夢草
■みずからの母親がみずからの父親から産まれたというイマジネーションに心奪われ、「その」や「くちびる」まで考えきれない。イマジネーションをこのかたちに落とし込んだところがすごい。

――入力タイトル『君の名は。』


【おわり】

はいおわりで〜す。このくらいのサイズ感で、だいたい週1ペースでやっていきたいな〜と思っています。今田に鑑賞させたい句や、句を選ぶ切り口の提案があれば、コメントにて教えてください。

改めて、各句の作者のみなさん、海馬さん、そして氷川竜介さんにありがとうございましたの11文字をお送りします。そんな11文字を言われても氷川竜介さんは驚くでしょう。

ありがとうございました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?