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目が光るときは静かにしています

シリーズ・現代川柳と短文NEO/043

 会長の一喝で会議室の面々は黙りこんだ。それに満足したのか、会長はそれ以上なにか付け加えることはなかった。長い静寂。文庫本でも持ってくればよかった、とわたしは思った。ちょうど鞄に読みかけの推理小説が入っているのだ。やがて日が落ち、外が暗くなり、会議室も真っ暗になって推理小説どころではなくなった。重い空気。明かりをつける者すらいない。暗いのをいいことにわたしは目をつぶっている。ぎゅっと力をこめて目をつぶっている。まぶたも筋肉なんだな。目を開けると、きっと光があふれ出る。

【きょうの現代川柳】
目が光るときは静かにしています
/今田健太郎


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