もうその話はしないで欲しい

「もうその話はしないで欲しい」と夫に言えた。
夫はいわゆる児童虐待を受けて育った人だ。結婚するとき、まさか温和(にみえる)義両親(おもに義父)がそういう人たちだったとはつゆ知らず、結婚後に聞かされて信じられなかった。
子どものころに義父から受けた仕打ちと、庇ってくれなかった義母への恨みを引きずっていた夫は、わたしという話し相手ができたことで、一気に話し始めたのだ。
それは結婚して間もなくしたころに始まり、すでに二十年以上。
さすがにわたしも疲れた。
それに、夫は昨年のお盆に義父へと思い切り罵詈雑言をあびせ実家に出禁となったこともあり、今現在義理の両親のことはわたしが見ている状態である。そのうえ、虐待されたことまで聞かされるの、どうなの?
義理の両親は、わたし対しては優しいが、わたしも昨年義母と義姉に切れて「いい嫁」は卒業したこともあり、昨晩また話し出した夫へと伝えた。

その話は結婚以来何度も聞いたから、もう聞きたくない。聞かされるわたしもとても気分が悪くなる。
わたしに話したところでなんの解決にもならない。
しかるべき専門機関へカウンセリングなり、心療内科へかかるなりしてほしい。
親への恨みはなくならないだろうが、気持ちの整理がつくのではないか。
その結果、別に親を許さなくてもいい。
許せないなら、許せないでいい。
なんなら、もう会わなくていいと思う。

そう告げた。
ずっと、そういいたかった。わたしに意気地がなくて言えなかったのだが、この先も一緒にいるのなら、二度と聞きたくない話なのだ。

こんなわたしを冷たいやつだと思うのなら、それでいい。
自分には無理だと思ったのだ。


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