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R18s番外編『現代監督・俳優回』 ライナーノーツ

こんにちは。Radio18sの角田です。今回の記事では、番外編第3回『現代監督・俳優回』で取り上げた(名前を出した)監督や俳優についてまとめます。洋楽のCDアルバムを買うと、音楽ライターがアーティストの作品について解説した「ライナーノーツ」と呼ばれる小冊子が付いてくることがあります。このnoteは、そういうライナーノーツみたいなのかっこよくねという気持ちで書き始めました。もちろん、今回のラジオとその記事は、映画をそんなに知らない人に向けた部分も多分にあります。とは言いつつ我々がラジオ内で好き勝手喋りすぎた(尺は約2時間)ために、人名をまとめていたらとんでもない文字数と情報量になってしまいました。時間がある時に少しずつ読んでいただければ幸いです。

メンバー推薦の映画監督・俳優

まずはラジオの終盤(1時間26分あたり)から話している、メンバーの一番好きな監督・俳優についてまとめます。というか、一番好きな監督や俳優について喋るのに1時間半もかけてたのかよ。福山は推しの監督・俳優をどうしても見つけることができなかったみたいです。

まずは映画監督から。

スタンリー・キューブリック:角田推薦。左右対称の画面を徹底的に構成し、数百回ものリテイクを俳優にやらせるなどまさに完璧主義者。映画で描かれるテーマの鋭さも含めて後世の映画達に多大な影響を与えた巨匠。代表作には『2001年宇宙の旅』(1968)、『時計じかけのオレンジ』(1971)、『シャイニング』(1980、角田の生涯ベスト映画でもある)。

↓『2001年宇宙の旅』(1968)

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デヴィッド・リンチ:山下推薦。夢と幻想と現実の区別が曖昧というシュールレアリスティックな作風が特徴。その独特な世界観ゆえに根強いファンが多く、カルト映画の帝王とも呼ばれている。映画だけでなくドラマシリーズ『ツイン・ピークス』(1990〜)も手がけ、こちらも伝説的な人気を博した。代表作には『イレイザー・ヘッド』(1979)、『ブルー・ベルベット』(1986)、『マルホランド・ドライブ』(2001)など。

↓『マルホランド・ドライブ』(2001)

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ポール・トーマス・アンダーソン:米山推薦。キューブリックと同じく偏執狂的に構図を作り込む作風だが、同時に50年代のオートクチュールの世界や、70年代のヒッピーカルチャーなど時代考証も綿密に行う。俳優の演技力を限界まで引き出す演出も特徴的。代表作には、『マグノリア』(1999)、『ザ・マスター』(2012)、『ファントム・スレッド』(2017)など。

↓『ファントム・スレッド』(2017)

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続いて俳優について。

ルーニー・マーラ:角田推薦。全身にピアスを開けたパンクなハッカーを演じた『ドラゴンタトゥーの女』(2011)で注目され、女性同士の恋愛をテーマにした『キャロル』(2015)ではカンヌ映画祭女優賞を受賞。体当たり的な演技を見せながら、常にどこか寂しげな表情を浮かべる。

↓『キャロル』(2015)

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シャーリーズ・セロン:山下推薦。映画史に残るカーアクションを見せた『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)、不死身の戦士を演じたNetfllixオリジナルの『オールド・ガード』(2020)など、体を張るアクションも辞さないバイタリティと演技力を併せ持つ女優。一時期「食物連鎖の頂点にいる女優」と称されるほど崇拝されていた。

↓『オールド・ガード』(2020)

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ホアキン・フェニックス:米山推薦。演技派として知られていたが、2008年に突然のラッパー転向を宣言し、しかもそれが世界を巻き込む「ドッキリ」だったという騒動以降、精神的に不安定な役柄をとてつもないリアリティで演じるようになる。2019年の『ジョーカー』ではアカデミー賞主演男優賞受賞。

↓『ジョーカー』(2019)

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以上がメンバー推薦の解説でした。ここで紹介した監督・俳優のことを、radio18sメンバーは偏愛しているため、今後のラジオでも頻繁に名前が出ることは間違いないと思います。作品は、配信サービスで見ることができるものが多いのでぜひチェックしてみてください。


付録①:その他にラジオで名前が出た映画監督・俳優

メンバーが一番好きな監督や俳優は上記の通りですが、今回のラジオでは2時間も監督や俳優についてグダグダ喋っているため、話にあがった人名はまだまだ沢山います。以下にできる限りまとめております。


監督編

ライアン・クーグラー

警察官による黒人青年射殺事件を題材にした『フルートベール駅で』でデビュー以降、ロッキーシリーズの『クリード』、マーベルシネマティックユニバースの『ブラックパンサー』などビックバジェット作品を次々に成功させた若き天才。


エドガー・ライト

イギリス出身。膨大な映画小ネタを引用しながらも、ポップでテンポの良い編集とセンスの良いサントラで、誰でも楽しめるエンタメ作品を作り上げる。ラジオで取り上げた監督の中で一番見やすい監督。代表作にはゾンビ映画のオマージュに溢れたコメディの『ショーン・オブ・ザ・デッド』や銀行強盗の「逃し屋」をする青年が主人公の『ベイビー・ドライバー』など。


グレタ・ガーウィグ

都会に生きる若者の生活を細やかに描いた多くの青春映画に女優・脚本家として参加。2018年には、田舎町サクラメントから都会に憧れる女子高生を描いた『レディ・バード』で監督デビュー。次作の『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』では、オルコットの古典『若草物語』のリメイクにチャレンジ。


ノア・バームバック

家族や恋人たちの関係性の変化を時にユーモラスに、時にシニカルに描く都会派コメディの名匠。前述のグレタ・ガーウィグと似た作風を持ち、2011年から二人は交際を公言。10年間連れ添った夫婦の離婚劇を描いたおかしくも切ない傑作『マリッジ・ストーリー』は、Netfllixで独占配信中。


ドゥニ・ヴィルヌーヴ

神経がヒリヒリと痛む壮絶な人間ドラマの名手でありながら、近年ではロジャー・ディーキンスという撮影監督とタッグを組み美しい映像世界も作り出す。かと思いきや『メッセージ』(2016)や『ブレードランナー2049』(2017)など今度はSF超大作も作り出してしまうという、よく考えると結構変な監督。次回作『DUNE』がコロナ禍のため公開延期に。


クリストファー・ノーラン

時系列が複雑に絡み合う物語とIMAXカメラによるスペクタクルを両立させ、名実ともに00年代以降最も世界で成功した映画監督といえる。彼の映画界における重要性の高さは、コロナ禍で収入が激減した映画館に客を呼び戻した『TENET』のヒットでも十分伺える。ヒーローコミック原作の『ダークナイト』(2008)は、ジョーカー役のヒース・レジャーの強烈な存在感も相まって映画史に残る傑作と絶賛された。


ジム・ジャームッシュ

何も起きない日常の裏にあるユーモアを静かなタッチで描く「オフビート」映画作家。詩人からラッパーまで言葉を生業とする人間への尊敬に溢れ、映画自体も意図的に韻を踏んだ構成をとることが多い(どういうことかはぜひ一度自分の目で確かめてください)。眠れない夜中に見始めると病みつきになること間違いなし。代表作には『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)、『パターソン』(2016)など。


三宅唱

ジャームッシュなどと同じく何の変哲もない日常や青春を切り取る映画監督。多分日本で俳優陣からベストアクトを引き出すのが一番上手いかもしれない。『きみの鳥はうたえる』(2018)では、当時はまだ新進気鋭だった石橋静河はもちろん、すでに人気俳優だった柄本佑や染谷将太からも見たことのない一面を引き出している。


アリ・アスター

作り込まれた構図や巧妙に仕込まれた宗教モチーフ、何より神経を疑うレベルで「嫌」な作品を毎回作る性格悪い監督(褒めてます)。『へレディタリー継承』で衝撃的なデビューを飾り、次作『ミッドサマー』はショッキングな物語ながら日本でも大ヒットを記録した。


ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス

映画監督夫婦。ミュージックビデオを多く手掛ける一方、『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)で映画製作も始めた。ポップで明るい画面とは裏腹に、ストーリーは意外とビターな味わいを残すことが多い。


マーティン・スコセッシ

抑えきれない暴力衝動と信仰心の間で分裂した主人公が多いが、なんと監督自身もそういう人物らしい。ロバート・デ・ニーロが都会の中で孤独に生きるタクシー運転手に扮した『タクシー・ドライバー』(1976)は後世の映画にも多大な影響を与えた。現代でも骨太なギャング映画を作り続けるまさに巨匠。


マイケル・マン

銃器描写のリアリティの高さは世界トップレベル。名前の通りとにかく男臭いアクション映画を撮る。『ヒート』(1995)の中盤における市街地での銃撃戦は今見ても大興奮する。初のドラマ作となる『TOKYO VICE』の製作のため来日しており、小池都知事と会談していた。


チャーリー・カウフマン

人間の精神世界の深淵に入り込んでいく奇妙な物語を紡ぐ脚本家。実在する俳優のジョン・マルコヴィッチの頭の中に入れる穴が突然出現するという『マルコヴィッチの穴』(1999)で世界を唖然とさせた。近年では自身で監督も務めるようになる。


俳優編

ドン・チードル

『オーシャンズ11』シリーズ(2001〜)やマーベルの『アイアンマン』シリーズ(2008)などで印象的なバイプレイヤーとして活躍している。


ポール・ラッド

マーベルの『アントマン』シリーズ(2015〜)で主演のアントマン役を務め、その愛嬌ある佇まいが人気に。実は90年代からラブコメ映画に多数出演している。


アダム・ドライバー

『スターウォーズ フォースの覚醒』(2015)でダースベイダーに代わる悪役カイロ・レンを演じて注目される。それ以降、スコセッシやバームバックなど巨匠の話題作に次々と出演。彼の出演作に大きな外れはない。


ティモシー・シャラメ

イタリアの田舎を舞台に男性同士の恋愛を描いた『君の名前で僕を呼んで』(2018)に主演し、その彫刻のような美貌で一世を風靡した。マジで惚れる。美しい。


ジョン・デヴィッド・ワシントン

黒人のFBI捜査官がKKK(白人至上主義集団)に潜入捜査するサスペンス『ブラック・クランズマン』(2018)で注目される。ノーランの『TENET』(2020)では、時間逆行アクションを見事に演じきった。


ロバート・パティンソン

ハリー・ポッターやトワイライトシリーズでアイドル俳優のイメージが否めなかったが、近年では挑戦的な役柄を次々に演じる。『TENET』(2020)では主人公の相棒ニールに抜擢された。


ヒース・レジャー

2000年代から卓越した演技力を評価され、カウボーイ同志の恋愛を描いた『ブロークバック・マウンテン』(2005)で大絶賛される。『ダークナイト』(2008)のジョーカー役で強烈な悪役を演じながらも、役作りの結果ドラッグ中毒で急逝してしまう。


カーラ・デルヴィーヌ

山下の推し一人目。女優の他にモデルや小説家としての一面も。『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(2017)で主演。


アニャ・テイラー・ジョイ

山下の推し二人目。角田も結構推してる。『スプリット』(2017)や『ウィッチ』(2015)などホラー映画によく出演する。チェスの天才を演じたNetflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』が大評判に。


フローレンス・ピュー

『ミッドサマー』(2019)や『ストーリー・オブ・マイライフ』(2019)などで、社会に生きる女性のあり方を問う作品に立て続けに出演。公開延期になった『ブラック・ウィドウ』では遂にマーベル映画に進出。


トム・ホランド

幾たびも映画化されたマーベルコミックの『スパイダーマン』の新シリーズ(2017〜)で主演を務め大ブレイク。その後もマーベルシリーズに起用されるが、シリーズの重大なネタバレをSNSでしがちなため度々叱られている模様。


ジム・キャリー

『マスク』(1994)などで日本でもよく知られたコメディ俳優。福山の数少ない好きな俳優の一人。別れた恋人の記憶を消そうともがく男を演じた『エターナル・サンシャイン』(2004)など、コメディ以外の演技も評価される。


スティーブ・カレル

プロデューサーのジャド・アパトー、俳優のウィル・フェレルなどと共に00年代後半からアメリカの超絶おバカコメディ映画を支えてきた俳優。『フォックス・キャッチャー』(2014)や『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017)など、コメディ以外の映画で人に言えない影を持ちながらひょうきんな道化を演じ続ける男を演じると抜群に良い。


ロバート・デ・ニーロ

『ゴッド・ファーザー PART2』(1974)や『グッドフェローズ』(1990)などのギャング映画で知られるが、コメディ、ラブロマンス、サスペンス映画などぶっちゃけこの人が出てれば安心というレベルの名優。Netflixオリジナルの一大ギャング大河ロマン『アイリッシュマン』(2020)で見せた老いた男の悲哀も素晴らしい。


付録②:Radio18sで頻繁に使われる用語


Radio18sメンバーは、映画監督や俳優の名前のみならず映画オタク内常識的な用語を平気で口にしてしまう病気を持っています。以下にあげる3つの用語は、それらの中でも特に頻発するものです。これら以外にもラジオを聞いていて意味がわからなかった言葉などがありましたら、遠慮なくお便りを送ってきてください。

①マーベル・シネマティック・ユニバース

略称としては頭文字の「MCU」、「マーベル」など。アイアンマン、キャプテン・アメリカなどのヒーローが登場するマーベルコミックの作品群を映画化した一連のシリーズのことを指す。2008年の『アイアンマン』からスタート。作品ごとに監督の色合いが異なりながらも、複数のヒーローが集結する『アベンジャーズ』シリーズも成功させる企画力の高さにより世界中で大ヒットを飛ばしてきた。ラジオでも触れた通り、人気俳優の登竜門的なシリーズでもある。

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②ジャスティス・リーグ

原作のコミックがDCコミックという違いだけで、マーベルシリーズとコンセプトはほぼ同じ。2013年の『マン・オブ・スティール』からスタート。『バットマン』や『スーパーマン』など超人気キャラクターが登場しながらも、マーベルに比べてシリアスなヒーローものが多かった。近年では、『アクアマン』や『ワンダーウーマン』など陽性な映画も製作されている。ジャスティスリーグのヒーローとマーベルのヒーローをごっちゃにされることが、めんどくさい映画オタクには大変気に触るらしい。

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③配信サービス

映画やドラマ、バラエティ番組などを扱う定額制配信サービス。特にNetflixは、オリジナルコンテンツを武器に他の配信サービスと差をつけている。劇場公開がなかなか難しいような作家性の強い巨匠監督に、好き勝手やらせる環境を整えることで、視聴者も映画製作者も無視できないコンテンツを配信し続けるのがNetflixだ。コロナ禍の自粛ムードも経て、遂に配信サービス主流の時代がやってきた。映画ファンにとって、どの配信サービスに入るのか(Netflix、アマゾンプライム、ディズニープラス、Hulu、U-NEXTなど)という問題が常に頭を悩ませる。

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以上がR18s番外編『現代監督・俳優回』 ライナーノーツでした。記事を書き始めた当初は、こんな期末レポート並みの文字数になるとは思っておらず、途中何度も挫折しかけました。読者の方もこんな長大な記事は一気に読まず、ぜひ適度に時間や日をおいて読んでみてください。それでもラジオでよく名前が出る人名を一通りまとめたこの記事を読めば、多少はラジオが聴きやすくなると思います。では、また!(角田)

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