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拝啓、ピーターパン様

拝啓、ピーターパン様。
夢追い人はそれだけで才能です。

✳︎

「良いよなー、仕事してない奴は…」
僕は大学を卒業してから、
特に目標が無かったため、
とある学校に入学した。

その学校もやりたいことがなく、
高校の同級生に誘われるがまま、
入学をしたのだけれども。
ただ結局その同級生は、
僕を裏切り入学しなかった。

その学校に入学してからの日々は、
「面白いな」と思うことも多かった。

「やりたいことかも」と思い始めていた。

ただ中学・高校・大学の同級生に会うたび、
「ボーナス少ないわー」とか、
「仕事してなくて良いよな」とか、
「遊んでる奴に仕事の苦労は分からん」とか、
自身の仕事の愚痴という名のマウントで、
散々に僕のことを咎めてきた。

世の中の人間は夢追い人に冷たい。
ましてや僕は人に流された夢追い人だ。

僕も段々と自信がなくなってくる。
このままで良いのかなと。

✳︎

学校ではそれなりに評価されていた。
学校を卒業後もとんとん拍子で、
オーディションに合格していた。

占いが得意な先輩にも、
「今のままなら成功する」と言われ、
何だかそれも嬉しかった。

ただ同級生は依然冷ややかな対応だ。
「子どもみたいに遊んでるだけ」
「永遠の学生さんやな」
「せっかく大学出たのに」
そんな同級生とは縁を切っていった。
すると、ドンドンと思い詰められる。
「成功してやる」
縁を切るたびに、その思いが強くなる。
縁を切るたびに、首が絞まるような感覚。

自分にも他人にも厳しくなった。
何日間も寝ずに台本を書いたり、
夜中だろうが何だろうが打ち合わせしたり、
何度も何度も台本をやり直したり、
成功が全てだと思い込むようになった。

オーディションに受かっても、
「まだ足りない」と強く思い、
鬼気迫る感情でノートに書き殴る。
ノートは1年間で何十冊にもなった。

映画も1週間で20本以上観た。
面白い設定が欲しかった。
面白いアイデアが欲しかった。

✳︎

やがて僕の周りには誰1人として、
寄り付こうとはしなくなった。
「ホンマに危ない奴」
「何を考えてるか分からん」
何とも思わなかった。
何にも感じなかった。

成功以外に何も見えなくなった僕。
ついに隣にいたパートナーさえ夜逃げした。
それでも1人黙々と台本を書く僕。
そして、ある日気付く。
「あれ?何がしたいんだっけ?」と。
僕は高校の同級生に誘われて、
風のように流されるがままに、
今の場所にいるだけではないのか。

なぜ成功したいのだろうか。
そもそも成功って何だろうか。

僕は世界にただ1人になり、
暗闇の中を潜っていってしまった。

復讐は時に良い行動材料になり得るが、
自分自身を苦しめる有毒にもなりかねない。
まるでタバコのような存在だ。
タバコも成功も吸っている時・順調な時は、
全てを真っ白にするほど心地良い。
だけども時間が経つにつれ、
身体を心を蝕んでしまう。

✳︎

今は1人じゃない、妻がいる。
妻がストップをかけてくれる。
僕は何かに夢中になれば、
今でも周りが見えなくなる。
たまにもどかしくも思うけれど、
また独りの世界に取り残されるより、
もどかしく思えるくらいがちょうど良い。

夢中になれる人はそれだけで才能だ。
僕は僕が崩壊してしまうから。

もしも身近に夢追い人がいた場合、
もちろん全力で応援はするつもり。
ただ僕のようにならないよう、
そっと近くで見守りたいなとも思う。

メガッパ

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