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好意と悪意の狭間に
好意は悪意より長く、
悪意は好意より強い。
✳︎
人生にはモテ期が3回あるらしい。
僕は小・中・大学生の頃がそれに該当する。
小学生の時はラブレターを貰ったり、
バレンタインデーにチョコを貰ったりの程度。
中学生になると「付き合って欲しい」と、
告白をされることが増える。
付き合う?
僕は男女間で、ましてや子どもが
付き合う意味が分からなかった。
だから、ことごとく人の想いを踏みにじり、
「意味が分からん」とお断りしていた。
そんな中、忘れられない人に出逢う。
僕が中1の時の、中3の女バレの先輩。
その人も僕に告白をしてくれた。
一目惚れだったらしい。
(僕は決して男前ではない)
僕はやはり丁重にお断りした。
その先輩は「ありがとう」と返した。
僕は頭の中がハテナで埋め尽くされた。
その翌日からジワリジワリと、
氷が水に帰すように
「ありがとう」の意味を理解する。
✳︎
その先輩から告白された翌日の朝。
10時前に玄関を出た僕。
いつものように遅刻だ。
するとそこには先輩が居た。
「なんで?」と先輩に尋ねると、
先輩は「たまたま」と言っていた。
そんな訳がない。
「たまたま」遅刻している時間に、
僕の家の前にいるハズがない。
誰かから住所を聞いて待ち伏せたのだろう。
僕が「辞めてください」と言うと、
先輩は「なんでなん?」と返答する。
先輩は続けて「ずっと傍に居てあげるから」と、
昨日とは違う恐い表情で僕に言い放った。
表情だけではなく、人が変わったようだった。
恐くなった僕はそれ以上何も発さなかった。
いや、発することを許さない雰囲気だった。
先輩は登校中もずっと一人で話している。
僕は苦笑いで相槌のみをする。
僕の教室の前まで付いてきた先輩に、
同級生は「彼女出来た?」と嬉々として話す。
僕は否定した。強く強く否定した。
ただ経緯は話せなかった。
先輩の得体が知れず恐かったから。
その日からと言うもの、
先輩は何かしらのプレゼントを用意して、
僕を待ち伏せるようになる。
登校・下校・習い事帰りに、
いつものシルエットが見える。
いつものことなのに、
いつまで経っても慣れない、そのシルエット。
「女性が恐い」
心からそう思った。
✳︎
そんな日々が何ヶ月か続き、
一人の友人が僕の違和感に気付き始める。
友人は僕が頼んでもないのに
その先輩から僕を守ってくれた。
時には口論をしていた。
やはり恐かった。
でも少し嬉しかった。
僕には親友が居ない。
僕が親友という曖昧なモノを好まないから。
ただその友人は今でも繋がっていて、
人から見ればきっと親友なのだと思う。
その先輩が卒業するまで、
この歪な関係は続いたが、
卒業すると徐々に回数が減った。
僕が成人する頃まで年賀状は届いていたが…
✳︎
今でもたまにその先輩の夢を見る。
真っ暗な中、プレゼントを持って笑う先輩。
僕は手を震わせて受け取る。
好意は長いけれど、案外脆い。
ただ好意と悪意が混同した際、
それは強く恐ろしいモノとなる。
それらの経験を踏まえて、
脚本を書いたことがある。
その脚本は「背景が分からない」と言われたが、
人には説明がつかない好意が存在する。
そして、それらは側からみれば、
悪意として認知されかねないモノだ。
先輩を漠然と「恐い」と思うのではなく、
キチンと向き合っていれば良かった。
人との距離感は難しい。
だからこそ面白いのかもな?と、
ほんの少し大人になった僕は考える。
メガッパ
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